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金亀苑 金治直美ブログ

児童書を追いかける日々

シベリア紀行 その2  シベリア鉄道 ごっとんごっとん

  1. 2018/09/16(日) 11:59:38_
  2. 金亀のひとりごと
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あわわ、前回の更新から、なんと三週間も過ぎていた! 
けっしてサボっていたわけではなく、なにかとハードだったのですわ。

さて、シベリア旅行記②、いよいよシベリア鉄道だ。
長くなってしまったので、興味のある方だけ、どうぞ。

シベリア鉄道は、モスクワ と日本海岸のウラジオストク間9,289kmを、
約7日間をかけて走破する。
かつて、パリに遊学した与謝野鉄幹に会いに、晶子もこの鉄道で旅したそうだ。
宮本百合子、林芙美子も、走破した。
こんな本もあるよ。

 『女三人のシベリア鉄道』森まゆみ・著 集英社文庫
 
     シベ

われわれのツアーは、日中の8時間、
ウラン・ウデからバイカル湖近くのイルクーツクまで走るだけ。ま、ちょうどいいか。
朝7時にホテル出発、ウラン・ウデ駅へ。
駅舎は新しくきれいだが、お弁当やさんだのおみやげ屋さんだのは、見当たらない。
この国って、商売っ気が薄い。いやいや、日本がありすぎなんだろうな。

   ③ウラン・ウデ駅

この町は、ロシアのド真ん中からやや東寄りの町で、
南下すると、モンゴルの首都、ウランバートルに着く。
何年か前にモンゴルに行ったときに、ウランバートル郊外を、
ウラン・ウデからやってきたシベリア鉄道の支線が走っていたっけ。
うれしくて、夢中で手をふったなあ。

  ウラン・ウデ駅ホームにてウラン・ウデ駅 ホーム側

ホームで待っていると、列車がごっとんごっとん、やってきた。
30両編成、長い! そこに、われわれ日本人ツアー客用に二両接続され、32両編成だ。
二等車で、四人用のコンパートメントだった。

      ③シベリア鉄道

ウラン・ウデ駅を定刻の8時に出発。

 コンパートメント入口と通路
 ③二等車のコンパートメント入口

コンパートメントには、二段ベッドが二つあり、
下段の二つに四人で座って過ごす。

   ③コンパートメント内

眠かったら上段のベッドに上がることもできるが、まあ、昼間だし、やめといた。
  
 ③二段ベッド

それに、上段にあがるはしごがちっちゃくて、昇り降りはかなりコワそう。
荷物はすべて、コンパートメント内に運び込んだけれど、
小さめのスーツケースにしたおかげで、
日中の数時間過ごすには問題のない広さだった。

列車はごっとんごっとん、走る。
山を遠景に、うねうねとした緑あふれる丘が広がる景色だ。

   2012 094

      ③車窓から
                    

美しいんだけどね・・・。実をいえば、この景色、わたしが望んでいたのと、ちょっと違う。
わたしゃ、真っ平らな地平線が見たかったのよ~~。
同室のお仲間が、「あっ、あっちのほうが真っ平よ!」と
通路側の窓を教えてくれる。
通路に出てみると、ほんとだ! 
こっちの窓の外は山や丘がなく、ときどき森林がとぎれて平らな地平線が見える。
やったー!
でもねー、電線・電柱はずっと線路といっしょにのびている。
うっとうしいなあ・・・。あほか、電車やから当たり前やん。

    ③地平線

現れては消える地平線ウオッチングをしながら、
あらかじめ決めていた歌を、小声で熱唱する。走行音で周りには聞こえないはず。
「みーどり もーえる 草原をこえーてーーー」
「ああかいサーラあファン、ぬううてみーてーもー」
ロシアの歌、「ポールシカ・ポーレ」と「赤いサラファン」だ。
えへ、満足。

同室の三人は中高年女性で、気持ちのいい人ばかり。
オバチャン同士の会話は、否が応でもはずみまくる。いやー、楽しかったわ。
でもねー。ツアーだから、ロジア人と同室になる期待はしていなかったが、
無愛想な日本人男性一人旅や、
イヤな感じの夫婦づれといっしょになっても、よかったかも。
そしたら、じっと黙って延々と続く丘陵地帯をあきるほどながめ、
本を読んだり居眠りしたり妄想したり、一人旅のように過ごせたろうな。
・・・と贅沢なことを考えてしまった。

昼食は、ホテルで渡されたお弁当。
トーストサンド(ハムやローストビーフ)、
ワッフル、ベリーのジャム、バナナ。インスタントコーヒーもあったかな。
サンドイッチは、見た目よりおいしい。

サントドイッチ、一切れ食べちゃってから撮影。
  ③お弁当

添乗員さんからは、ウオッカ少々と、インスタント味噌汁、
日本茶のティパック、紙コップなどの差し入れがあり、ありがたい。
ウオッカは、同室の人に飲んでもらったけどね。
え? お湯はどうするの? と思われた方、安心してください。
サモワールという給湯器があり、
熱ーいお湯はいつでも自由にもらえる。
カップ麺など持ち込んだら、おいしかったろうな。
給湯器は、蛇口を回せばいいだけなのだが、実はちょっと怖かった。
持参の携帯ポットにお湯を入れたのだが、
携帯ポットの細い口では、列車が揺れたときに手にお湯がかかりそうなのだ。
取っ手付きのもののほうが安全だ。
そういえば、でっかい取っ手のついた頑丈な耐熱グラスが借りられるようだったが、
頼めばよかったわ。

列車は、ごっとんごっとん、走る。
四人用のコンパートメントは、なかなか快適。
さて、ほかの車両はどんなのだろう? 一等は、三等は、食堂車は?
食堂車は、営業していないことが多いそうだけど。
よし、探検しにいこう。
デッキに出て隣の車両に行ってみた。
おお、コンパートメントではなくて、まるで病院の大部屋のように、
長いすというか、幅の狭いベッドがずらりと並んでいる。三等車両らしい。
二段ベッドの三等車両もあるらしいが、
この車両には二段はないようだ。
それにしても、生活感がハンパない。
カーテンも見当たらなく、プライバシーの6文字は無いに等しい。
ランニングシャツ一枚に半パンのおじさん、
タンクトップに半パンのおばちゃんやお姉さんがベッドでゴロゴロしている。
シベリアといえども、窓が開かないので車内はけっこう暑い。
日本人車両とはちがう匂いがする。

そのゴロ寝の人々の間をすり抜けて、アジアのおばちゃん、さらに隣の車両へ。
ここもほぼ同じだ。
引き返すことにする。
あまりの生活感に、これ以上通り抜けていくのが申し訳ない気がしてさ。
一等車両と食堂車を見られないのは残念だけどね。
このロシアの人たち、どこから乗って、
どこまで行くのかな。車中で何泊するのだろう。
その間の食事はどうなっているのかな。
パンやハムやチーズ、缶詰めなんかを持参しているのかな。
シャワーもないから、サモワールのお湯を使って体をふくのかな。
ちょっとでいいから、話をしてみたかったな。ロシア語は何一つわからないけど~。

集落というほどではないが家々は、出発してからずっと、ちらほらと見かける。

    ③家 (2)

想像よりも「原野度」は低い。
ウラン・ウデでも感じたが、たいていの家は小さくてかわいい。
極寒を過ごせるような壁には見えないが、今もペチカがあるのかな?
店は一軒も見あたらない。どうやって生活しているのかなあ。

発車二時間ぴったりで、バイカル湖が見えてきた。
さすが透明度世界一、碧い湖面が美しい。
 
       ③バイカル湖

列車は、いつくかの駅に停車しながら、ごっとんごっとん、走る。
日本と違って、駅名のアナウンスなどは、一切ない。静かなものだ。
発車するときも、ピーッと笛がなるだけ。自己責任が徹底している。
どのホームも、乗り降りする人はほとんどいない。

途中、停車した駅で、ガタイのいい女性車掌さんが
「テン・ミニッツ!」と叫ぶ。10分間の停車かな。
みんな、ぞろぞろとホームに降りて深呼吸をする。
長ーいホーム、屋根も売店もなく、とっても広々している。

 ③ホーム

大きなカゴを手にした、おばさんが歩いている。
かごには、バイカル湖名物のオームリという魚の燻製や、赤や紫のベリー類。
乗客に売りに来た、地元の人らしい。
買ってみたいけれど、ガイドブックでは「鮮度が心配なので、避けたほうがいい」そうだ。

バイカル湖をながめながら、ごっとんごっとん、走る。
イルクーツクに近づくにつれて、家が増えてきた。
でも高いビルは一つもなく、空が広いこと。

    ③イルクーツク駅ホーム

 定刻ぴったりの4時10分に、イルクーツク着。
 おみそれしやした!

駅正面玄関  ③イルクーツク駅正面
  
  
 ③イルクーツク駅舎

 りっぱできれいな駅舎、おお、ロシア!  大きな街で、人通りも多い。 
道行く人は、ウランウデとは違って、ロシア系が圧倒的に多いようです。

 次回は、「シベリアあれこれ」

シベリア紀行 その1 ロシアは広い!

  1. 2018/08/26(日) 20:36:26_
  2. 金亀のひとりごと
  3. _ tb:0
  4. _ comment:0
地平線が見たい。
それが、中学生のころからの夢だった。
だから、行ってきました。シベリアへ。
「バイカル湖とシベリア鉄道五日間」のツアーに参加してきました。

往復ともチャーター機で、ロシアの「アンガラ航空」、
七五人乗りのちっちゃい飛行機だ。
座席は、二席と三席で、バスみたいな感じ。

3アンガラ航空の飛行機

実はわたし、ちょうど旧ソ連時代を生きた人の自伝などをこってりと読んでしまったので、時代が違うってわかっていても、
えっ、ロシア機? 整備はだいじょうぶ? 
ホテルは、お湯がちゃんと出るか?など心配だらけ。

初日は、ロシアのなかのブリヤート共和国の首都、
ウラン・ウデに、現地時間11時に到着。
時差はマイナス一時間だから、とても楽。
ホテルは、大きくてりっぱ、設備もちゃんとしていた。
タオルと石鹸以外のアメニティはないと聞かされていたが、
シャンプーや歯ブラシ、スリッパ、
お水のボトルや紅茶ティバッグやインスタントコーヒーもある。
ぜったい無いと思っていたドライヤーや湯沸かしポットもある。
おみそれしやした。
ドライヤー、持参するのが面倒なので、
髪の毛ちょん切ってきたんだけどね。

翌朝、ホテルの窓から見たウラン・ウデ市内。う~~ん、美的ではないな。
DSC_0254.jpg


朝食の、コケモモなどのべリーのミックスジュース(左)と、
ライ麦パンを発酵させて作るクヴァスというドリンク(右)。
これ、ちょっと香ばしくておもしろい。
パンを発酵させたドリンク? びっくりだけど、甘酒だってゴハンを発酵させるもんねえ。

 DSC_0257.jpg

さて、二日目はウラン・ウデからバスで一時間ほどの、
セメイスキーの人々が住むタルバカタイ村へ。
セメイスキーというのは、ロシア正教の一派ではあるけれど、
「古儀式文化」というものを受け継ぐ人々で、
世界無形文化遺産に登録されているそうだ。
セメイスキーの家は、窓や壁を色鮮やかに塗っていて、おしゃれ!

                  村のなかの家
家2
 

セメイスキー民族博物館で、
 民俗資料館入口

昔からの農機具や生活用具の見学。
どこの民族も、人間の営みというのは、大きくは変わらないなあ。
でも、バターを作るための桶などは、もちろん日本にはないね。

 バター桶

めずらしいのは、棺桶。
          かんおけ

セメイスキーの人々は、大人になるとそれぞれ木を切り倒し丸太にして、
それをくりぬいて何年もかけて自分用の棺桶を用意するという。
「終活」を、10代の終わりくらいから始めるわけだ。いいかも!

資料館の壁も、かわいくペイントしてあった。どこの家もこうして、家の中を飾るらしい。
長い暗い冬を、少しでも華やかに過ごす工夫だそうだ。

         壁画


村の民家で、セメイスキーの民族音楽を鑑賞。
みんな年配の歌い手さんばかりだけど、
すごい声量、みごとに重厚なハーモニーで、すごくよかった。

 音楽
             
圧巻は結婚式の再現。
日本人のご夫妻が花嫁と花婿の衣装を着せてもらったのだ。
社会人のお子さんのおられる中年ご夫妻だが、
きらびやかな衣装を一枚ずつ重ねアクセサリーを付けていくと、
どんどん若やいで、娘さんと若者の姿に見えてくる。
ツアーのみんなから、「おめでとう!」の声がかかる。
いやー、ほんま素敵でしたよー。

   結婚式

昼食は、セメイスキーの伝統的な家庭料理。
ゆでじゃが添えの牛肉の塩味煮込み、
赤いベリーのジャムをぬったパンや、ブッラクベリージャムを入れて焼いたパン、
塩味のねじりドーナツ、ピロシキ。
サーラとよばれる、豚バラ肉の塩漬けや、サラダ。
黒くてねっとりしたデザート、ひまわりの種で作るっていってたかな?
きなことチョコを混ぜたようなおもしろい味。
どれも、素材の味がわかる素朴なおいしさで、大満足だった。
   
料理3
                 料理1
                                        料理2

特に、パン類が異様にウマイ! 
わたしは小麦粉に軽いアレルギーがあるので、
日ごろあまりパンや麺類は食べないようにしていて、
パン、麺合わせて10日に一度くらい。
だから、たまにパン類を食べるときに、まずかったりすると腹が立つ。
この日のパン類は、持ってかえりたいくらいだった。

その日の夕食は、ウラン・ウデのレストランで、ブリヤート料理。
ボーズとかブーズとよばれる、でっかい小籠包のようなものが出てきて、
ナイフとフォークが添えられている。
切ると、肉汁がダバダバ・・・。ああ、もったいない!
皿をもちあげてすするか?と恨めしくにらんでいたら、
現地ガイドさんが、「これは本来は手づかみで食べるもの。
まず、てっぺんの穴から、肉汁を吸ってください」とおっしゃる。
うっしゃー! その通りにかぶりつくと、5割増しでおいしい。

   ボーズ

手も顔もベトベトで、なんか幸せ。

ああ、昔ながらの食べものはいいなあ。

民族音楽団がやってきて、演奏とダンスを披露してくれたが、
モンゴルの音楽やダンスとそっくり!

  踊り、モンゴル風

それもそのはず、ブリヤートの全人口の約4分の1は、モンゴル系の民族だそうだ。
そこここで、日本人そっくりの人をいっぱい見かけたよ。
セメイスキーの歌を歌ってくれたおばちゃんなんて、わたしの伯母にそっくりだ。
しかもここウラン・ウデは、モンゴルの首都ウランバートルと近い。
(といっても400キロ以上はあるけどね)
午後に見学した、ロシアチベット仏教の総本山、イヴォルギンスキー・ダツァンも、
モンゴルで見た寺院とよく似ていた。 
  イヴォルギンスキー・ダツアン


ロシアは広い。
四日目の夕食で入ったイツクーツクのレストランは、
ウスベキスタン料理店だったが、かの地も独立前は旧ソ連の構成国だった。
カスピ海に近いのに、ここもソ連だったのか!
ウズベキスタン料理の牛肉の岩塩焼きを食べながら(ウマイ)、
露出度の高い、くねくねしたベリーダンスを見たあと、
次にロシア民族舞踊ショーがあって、その対比がおもしろい。

                                DSCF8776.jpg


   ロシア民謡

ロシアの広大さに、ちっこい島国のおばさんは、
頭がクラクラしたのでした。

次回は、シベリア鉄道記です。


「73年目」に寄せて

  1. 2018/08/12(日) 14:21:08_
  2. あんな本、こんな本、どんな本?
  3. _ tb:0
  4. _ comment:1
今年も、終戦の日が近づいてきた。
何度でも書くが、わたしが一番怖いもの、それは戦争だ。

『火のカッパ』うるしばらともよし・作 やまなかももこ・絵 国土社 2018

   カッパ

戦時下の東京下町。
「東京大空襲」で火に追われにげまどうゲンタは、
炎のなかで、「むこうににげろ!」という声を聞く。
その声の持ち主は、もしや・・・
著者は、子ども時代に「悪さをするとカッパが来て隅田川に連れていかれるぞ!」
と祖母からおどかされ、カッパの存在を信じていたそうだ。
そう、カッパはほんとうにいる。この絵本を読むと、信じられる。
そして、カッパも平和を願っている。間違いなく。

その東京大空襲とは? 事実を丁寧に掘り起こし、
戦争を知らない世代にわかるように書き記したノンフィクションが、
『東京大空襲を忘れない 』瀧井 宏臣 ・著 講談社 2015

     空襲

空襲の体験者の証言は、あまりに悲惨で胸がつまる。
けれども、筆者の文章は暖かく、平和への祈りにあふれている。
数字の力がすごい。米軍により落とされた焼夷弾は32万発、
なくなった人はおよそ10万人。
「ヒロシマ」の死亡者数が12万人、「ナガサキ」が7万人だから、
その被害の大きさがわかる。
その焼夷弾とは? 「木と紙でできている日本の家屋」を効率的に燃やすために、
特別に開発されたものだそうだ。
だからこの空襲は「無差別攻撃」ではなかった。
禁止されているはずの民間人虐殺であり、「住民標的爆撃」だった、という。
これは、「無差別」よりも、数段ひどいんじゃないか?

そもそも、太平洋戦争て、どんなの?
そんな小中学生の疑問に答えてくれる物語が、
『ガラスの梨 ちいやんの戦争』
越水 利江子・著 牧野 千穂 ・イラスト ポプラ社 2018

        梨
 
戦時下、大阪の小学生だった「ちいやん」が体験した戦争。
かけがえのない日常が、少しずつ戦争という巨大な狂気、狂鬼にむしばまれていく。
兄の出征。動物園の動物たちの末路。愛犬にも恐ろしい運命が待ち受ける。
疎開、大阪大空襲。飢え。
どんなむごい環境でも、人は優しさを忘れない。希望を捨てない。
一日一日を、せいいっぱい生き延びる。
筆者のお母様の体験をもとに描かれた、渾身の物語だ。
「ちいやん」の辛さ、恐ろしさ、兄への思慕、「キラ」を守り抜いた思いが、
すんすん胸に迫ってくる。
戦争児童文学の決定版となるだろう。
それにしても、澄恵美姉やん、かっこええ!

「ちいやん」のおかあさんは、泣きじゃくる娘に語る。

「泣きな。泣いても怒っても、もうあてらには、どうしようもない。
これが戦争なんや・・・!」

ああ。
こんなことばを、
世界中の人が二度と口にしなくてすむ未来になるといいなあ。


ちぢむのは悲しいけれど・・・

  1. 2018/08/05(日) 17:38:41_
  2. あんな本、こんな本、どんな本?
  3. _ tb:0
  4. _ comment:0
10年前の服が着られない。サイズが合わないのだ。
・・・というと服がちぢんで入らない(太ったともいう)と思われるでしょうが、
逆だ。ぶかぶかなの。
といっても、やせたわけではない。体重計が示すとおりだ。
服全体が大きくなった、つまり、体がちぢんだ。
健康診断では、身長は確実に低くなっている。
ショックでガーンと頭に音が響くほど。
ま、老化なんやけど~。

ここは楽しい空想して、心をなぐさめよう。
なに、ちぢんでもいいことあるさ! 

体がちぢむといえば、ご存知、『不思議の国のアリス』。

アリス
作・ルイス・キャロル  絵・テニエル  ほか  角川書店 ほか 

薬を飲んで小さくなったり、ケーキを食べて大きくなったり。
ちなみに、「ちぢみ薬」は「ピッシュサルヴァー」、「
体が大きくなるケーキ」は「アッペルスヘンケーキ」というそうです。
チェシャ猫に会えるなら、この国に迷い込んでみたいなあ。

古典名作『小さなスプーンおばさん』もあったな。

  スプーン
作・アルフ・プリョイセン 絵・ビョールン・ベルイ 学研プラス

いたってふつうのおばさんが、
何の前触れもなく急に体がティスプーンくらいに小さくなってしまいます。
それでも、おばさんはへっちゃら。
持ち前の元気と機転でなんでもこなし、冒険を楽しんできます。
小さいって、楽しいわー。

最近読み返して、ううう、とうなったのは、『ちいさなちいさな王様』。

   王様
作・アクセル・ハッケ 絵・ミヒャエル・ゾーヴァ 講談社 

小さな小さな王様は、生まれたとたんに大人になっていて、
年をとるにつれて小さくなり、ある日だれにも見えないくらいになるんだって。
心身ともに子どもに帰っていくので、
人生の晩年に楽しい楽しい子ども時代が待っているそう。
この物語を最初に読んだ20年ほど前は、
その「小さくなって楽しんでおしまい」という部分に、
あまり「へー」と思わなかったのに、
今読むとすごくうらやましい。
むじゃきに遊んで笑って、そしてふっと世の中から消えられるって、いいなー。

これは、ちぢむといってもちょっと悲しい物語。
『千年万年りんごの木』(1~3)

 りんご
 作・田中相 講談社

雪深い昭和のりんごの郷で、ある新婚夫婦が村の禁忌をうっかり破ったため、
妻の「朝日」は小さく小さくちぢんでいき、
この世の者から遠い存在になって――。
朝日が愛らしく、また凛と美しく描かれています。
う~ん、淋しく切ないけれど、こんな「ちぢみ方」もいいかも。

な~んて、うらやましがるのもいいけれど、
現し身のワタシはこれ以上ちぢまないように、
たんぱく質にカルシウム、ビタミンDをいっぱいとらなくちゃ!



物語の吸引力って

  1. 2018/07/29(日) 17:01:17_
  2. あんな本、こんな本、どんな本?
  3. _ tb:0
  4. _ comment:0
埼玉県立近代美術館で、「浦沢直樹展」見てきました。

浦沢

わたしは、めちゃコアなファンというほどではありませんが、
この作家さんの画力と物語の大きさ、濃さには、リスペクトするしかない。

わたしが初めて読んだ浦沢作品は、『MASTERキートン』(長崎 尚志・原作 小学館)で、
その内容の広がりと密度、絵の魅力に圧倒されました。

       キートン

絵については、この方の描く人物は、どれも魅力的ですが、
注目しちゃうのは、主役でもわき役でもない「その他大勢」。
たとえ一回きりの登場でも、なんだか背負っている人生が感じられるの。
ああ、この作家さんは自分が生み出すキャラを愛していて、
そしてご本人は間違いなくマンガの神様から愛されているんだなあ。

展覧会は、原画やスケッチ、少年時代のマンガノートなどがいっぱい、宝の山。

 浦

                浦2
 (画像は、『20世紀少年』(小学館)のパネルと立体像。撮影可)

原画を見ていると、あっという間に作品世界に引きずり込まれます。
この吸引力がすごい!
作家という 「創造主」のエネルギーですね。
           

さて、児童書界で吸引力ハンパないな~と感じたのは、
戸森しるこさん。
デビュー作の『ぼくたちのリアル』(絵・佐藤真紀子 講談社)が
昨年の児童文芸新人賞はじめ、読書感想文全国コンクールの課題図書になったり、
またたくまに大活躍。

      リアル

ひらたくいえば、三人の少年の友情物語で、
とくにぶっといストーリーがあるわけではないのに、
主人公の思いに引っ張られ、あっというまに物語の世界へ。

海外の作品では、『スピニー通りの秘密の絵』 ( ローラ・マークス フィッツジェラルド・著 千葉 茂樹・訳 あるなろ書房)
引っぱられましたあ!

 スピニー

ニューヨークを舞台にした、美術ミステリーというのかな。
主人公の女の子が、経済的な事情から、ある美術上の謎を解くことになり、
たまたま出会ったセレブ女子と協力して・・・。
ミステリーだから、吸引力強くて当たり前っちゃ当たり前なんだけど、
謎解きしていく過程で出会う人たちがユニークだったり、
セレブ女子との会話がおかしかったり、辛く重たい時代を旅させてくれたり、
極上の読書タイムをもたらしてくれました。

ああ、吸引力。どうやって身に着けるのかなあ。
いや、天性のものなんやろうね。
な~んて、ひとごとのように書くなって! 




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プロフィール

金G亀美

Author:金G亀美
かなじ・なおみ 児童書作家 埼玉県在住。
主な著書に『さらば、猫の手』(岩崎書店)『マタギに育てられたクマ』(佼成出版社)『ミクロ家出の夜に』(国土社)『花粉症のない未来のために』『子リスのカリンとキッコ』(佼成出版社)『知里幸恵物語』(PHP研究所)『私が今日も、泳ぐ理由 パラスイマー一ノ瀬メイ』(学研プラス)『となりの猫又ジュリ』(国土社)『クレオパトラ』(学研プラス)など。
日本児童文芸家協会会員 
童話サークル「かざぐるま」会員
よみうりカルチャー・大宮教室
「童話を書いて楽しもう」講師
イラスト:大塩七華

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