金亀苑 金治直美ブログ

児童書を追いかける日々

クリスマス&年末に読み返したくなって

  1. 2016/12/24(土) 17:29:07_
  2. あんな本、こんな本、どんな本?
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クリスマスで心ウキウキというタイプではありません(ハイ、ひねくれもんです)
でも,どことなく厳かな気分となり、
フォーレのレクイエムやグレゴリオ聖歌を聞きながら、
いい物語に浸りたくなります。

今年読んだ本のなかから、この時期にしっくりくるものを
選んでみました。内容はリスマスとは関係ないですがね。 

『4年2組がやってきた』2016年
 野村一秋・作 ささきみお・絵 くもん出版

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五年生のマーくんは、脳性まひ。
しゃべれず、歩けず、手もうまく動かせません。
学校では、ただ一人の「にじ組」です。
その「にじ組」に、4年2組が「交流」しにくることになり・・・。

物語は、マーくんの一人称の語りで進みます。
読むうちに、マーくんが見聞きし感じている世界が、
すごく広く深いことに驚かされます。
しゃべれないから、動けないから、なにもできず
なにも考えていない? いえいえ、とんでもない!
そう、彼の頭のなかはいつもいろいろな思いでいっぱい。
それを表現できないだけ。

だいぶ前のこと。知り合いの視覚障がい者の方が、
道ばたで立ち止まって、なにか困っているようすでした。
聞けば、本屋さんに行く途中なのですが、場所がわからなくなったとのこと。
「あ、通り過ぎています。引き返しましょう」
すぐ近くの本屋さんに案内して、わたしは大失態。
レジの人に「こちらの方をご案内しましたので、よろしくお願いします」と
声をかけてしまったのです。
そんな余計なこと、いわなくてよかったのです。
必要なことは、ご本人がちゃんとお店の方に伝えるでしょうから。
なんだか、「保護者」のような気になっていたのでしょうね。
その自分の浅はかさを、この本を読んで、ちくりと思い出しました。

『ナゲキバト』2006年
ラリー・バークダル・作 片岡しのぶ・訳 あすなろ書房

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この本は、すでに古典かもしれません。
9歳のとき両親を亡くし、祖父にひきとられたハニバル。
ある日、ナゲキバトを遊び心で撃ってしまい・・・。
祖父との生活により、ハニバルは静かに深く、
生きる意味を感じとっていきます。

背景と思っていた逸話が、
実は物語の背骨であったという構造に驚かされます。
善とは? 悪とは? 悪に染まってしまった人生を、
昇華させるには?
それらが、やさしくしみじみとした文章に、
美しい紋様のように織り込まれています。

『ひまなこなべ』2016年 萱野茂・文 どいかや・絵 あすなろ書房

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アイヌの昔話です。
アイヌには神さまが主人公の物語がたくさんありますが、
伝え方が難しいように思います。
神さまの一人称で語られているので、
初めてふれる人は、ちょっと入りづらいのです。
でもこの本ならだいじょうぶ! 
クマの神さまに導かれ、
万物に神が宿るというアイヌの世界に
無理なく入ることができます。
この不思議なタイトルも、最後に意味がわかるしくみです。
躍動感ある、愛らしくもりりしい絵が魅力的。何度見てもうっとりです。

今年も残すところあと一週間。
来年もどうぞよろしくお願いいたします。


編集者さんと書き手のビミョーな関係に捧げる映画と本

  1. 2016/11/13(日) 10:58:47_
  2. あんな本、こんな本、どんな本?
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時に師であり、時に生殺与奪の権を持ち、
けれどもかけがえのない同伴者である編集者さん。
どれだけ書き手がふりまわしても親身に支えてくださる、
ありがた~いお人、編集者さん。

作品について、ここをああして、こっちをこうして、
ここを刈り込んで、そこをふくらまして、と指示をいただき、
ひいひい泣きながら書き直しているときは、
「編集者さんてなんていい仕事!」とうらめしくなり、
でもこちらの作業が終わって作品をゆだねたあと、
編集者さんが画家さんやカメラマンさんや取材対象者さんや
印刷会社さんや営業部門さんと打ち合わせし折衝し、
本の体裁を整え発売にこぎつけてくださるわけで、
わたしは絶対こんな仕事はできんわーと拝んでしまいます。

いつも黒子、裏方に徹してくださる編集者さんですが、
主役を張っている映画があります。大都市ではまだ上映しているかな?

「ベストセラー 編集者パーキンズに捧ぐ」
1920年代に実在した編集者パーキンズと、
37歳で早逝した小説家トマス・ウルフとの曲折のある友情と人生を、
淡々と描いています。
パーキンズは、「老人と海」のヘミングウェイや
「グレートギャツビー」のフィッツジェラルドを見出して
世界的な作家に育てあげた名編集者。
ある日彼のもとに、無名の書き手、トマス・ウルフの
げっそりするほど長大な原稿が持ち込まれ・・・。
天才作家の苦しみと喜び、名編集者の迷いと悩み、
作品に対する二人の熱い思い。いろいろと感じることの多い映画でした。

さて、いっぷう変わった本をご紹介。
「まことに残念ですが・・・」アンドレ・バーナード編集、徳間書店

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編集者さんに教えてもらった本です。
持ち込み原稿へのお断り状を、160も集めたもの。
断られた作家さんと、蹴られた作品名が、すごい!
パール・バック(『大地』)やギュンダー・グラス(『ブリキの太鼓』)、
メルヴィル(『白鯨』)などなど。『アンネの日記』も、実は断られていたのだよ!
帯にあるとおり、「み~んな断られて大きくなった!」
H・G・ウエルズの『タイム・マシン』なんて、将来性がない、などと言われているぞ!

こんな世界的作家でもボツになったことがあるんだから・・・。
以下省略。

さて、編集者といえば、「バクマン。」(原作・大場つぐみ、作画・小畑健、集英社)や、
TVドラマで作家仲間の紅涙を誘った
「重版出来!」(作・松田 奈緒子 小学館)も面白かったですね~。

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無題


「おれがあいつで」の呪縛

  1. 2016/10/09(日) 17:33:23_
  2. あんな本、こんな本、どんな本?
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映画「君の名は。」が大ヒット。
ぜんぜん映画通ではないカナジですが、観ましたよ。
うん、ストーリーはおもしろかった! 映像も素晴らしかった。
でも、胸キュンというほどではなく、涙ポロリもナシ。
・・・やばい。枯れ果てているのか、カナジ?

それも、もちろんあるだろう(簡単にモチロンと言い切るな、自分!)
高校生男女の心が入れ替わり、
時空を超えてのすれ違い・・・という流れのなか、
恋愛モードに自分の意識が切り替わらなかったのは確かだ。

だって、男女の心が入れ替わるってことは、
自分の体を、10代のみずみずしい体を、
知らない異性が使っているということ。
すごくたいへんでめちゃくちゃ恥ずかしくないか?

そっちに意識がいってしまうのには、わけがある。
映画「転校生」の原作として知られる
「おれがあいつで あいつがおれで」(山中恒・著)を
中学生のころに、リアルタイムに雑誌連載で読んだからだ。
 
自分の体の変化や異性への意識、大人社会への欺瞞などなどが満杯で
バランスを失う危うい時期、この物語は強烈だった。
作者のペンは容赦なく、
男子にかくしておきたい女子の体の悩みなどを、
入れ替わった男子に経験させている。
知りたくもない小汚い?男子の体のことを、女子に体験させている。
それが、当時のわたしには生々しくエロすぎて、げっそりだった。
その後、映画「転校生」を観て、なんて清々しくユーモラスに切なく
映像化したのだろうと、びっくりした。

「君の名は。」は文句なしに美しい。
でも、やっぱり中学生だったあのころのわたしの
男女入れ替わりへのげっそり感と羞恥心を思い出してしまった。
山中恒先生、おそるべし。それだけの強さのある作品だったのだ。

こんな思いをした男女って、「同志」だろう。絆も生まれるだろう。
だからこそ恋心が芽生える、そう考えればいいのかな。
しかし、そうやって自分を納得させる時点で、
すでに物語の抒情性から閉め出されているなあ。
無念。

「おれがあいつで あいつがおれで」山中恒・作 杉基イクラ・絵 角川つばさ文庫 

   無題

ロングセラーとなっています。

入れ替わりといれば、こんな絵本も。こちらは、犬と男の子が・・・。
『ジローとぼく』大島妙子作・絵 偕成社

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  楽しく、ホロリときます。


拓け、道!

  1. 2016/02/14(日) 15:19:27_
  2. あんな本、こんな本、どんな本?
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NHKの朝ドラ「あさが来た」がおもしろい。
朝ドラは、毎朝ちゃんと見たり、見たり見なかったりなのだが、
ここ数年でいうと、「毎朝ちゃんと見る」は、「あさが来た」、「あまちゃん」、
「花子とアン」、「カーネーション」かな。
やはり、道を自らの手で拓いていく女性の物語に惹かれる。

「あさが来た」では、気になるセリフが出てくる。
あさの姉のはつがよく口にする、「お家を守る」「お家のため」だ。

実は、この「~のため」という言い回し、嫌いという以上のアレルギーがある。
「お家」だけではない、「会社のため」や「学校のため」、
はては「お国のため」、どれも心が拒否をする
特に「お国」は最悪だ。

けれども、「あさが来た」を見て、少々考えを変えた。
この時代の女性が「お家のため」にがんばるのは、
自己を犠牲にして家に尽くす、と単純には決めつけられない。
それは、自己実現の道でもあったのだ。
ほかに社会参加のすべのなかった女性たちが、
おのれの能力を発揮できる場は、「家を守る」ことだった。
そう考えると、長い封建時代を生き抜いてきた女性たちがきらきら輝いてみえる。
男尊女卑、身分制度、家制度。
がんじがらめのなかで、それでも女たちは、働く。
それは自分のアイデンティティのためでもあったのだな。
そして、なかなか気づいてもらえないほどの細さであっても、
道を切り開いていくこともあったろう。

道を拓く女性を描いた物語

「アサギをよぶ声」三部作 森川成美 著 スカイエマ 絵 偕成社

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 時代は古代。娘ながら、ひそかに戦士としての修行を積んだアサギ。
やがて、村にふりかかる運命を変えていく要となる――。
簡潔な文章、キレのいい展開。
ああ、男子から「女のくせに生意気だ」と
目の敵にされていた小学生のころに読みたかったよー。
どれだけ勇気づけられただろう。

「レベレーション(啓示)」山岸涼子 著 講談社

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 フランスの百年戦争を舞台に、祖国の英雄から一転、
異端者として火あぶりにされた「ジャンヌ・ダルク」の一生を描く。
まだ一巻目、物語はまだこれからだ。
この時代のフランスの片田舎の雰囲気が味わえる。



「はずれ雪」の日に

  1. 2016/01/24(日) 17:13:51_
  2. あんな本、こんな本、どんな本?
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「はずれ雪」。
今、言葉を創りました。
週末、首都圏でも雪になるかもといわれていたのに、はずれ。
晴天の日曜日です。あ~~~あ。残念。
わたしは雪が大好きなのです。
雪害に遭われる方や通勤する方には申し訳ないですが。
雪が降るたびに防寒ブーツで散歩に出て、
雪だまりにダイブする、ヘンなおばさんです。

わたしの住む埼玉県は、雪は一冬に多くて3回くらいまでしか降りません。
子どものころはいつも雪を待っていました。
冬の朝、ぐずぐず布団のなかにいると、
母の呼び声「雪降ってるよ!」
「わーい!」と跳ね起きて窓辺へいったところが、真っ赤な嘘。
いや、地面が茶色だから真っ茶色な嘘ですね。

雪が降ると、一日中心が躍りました。
別世界が現れた不思議に見惚れました。
ふと、大人は雪が降っても喜ばないことに気がつき、
心底、恐ろしくなりました。
「わたしも大人になったら、雪がうれしくなくなる日がくるのかな。
そんなのいやあっ」
心配は無用、今でもちゃんと雪が大好きです。

雪の気配を感じると、こんな本を開きたくなります。
「海のむこう」土山優 文 小泉るみ子 絵 新日本出版社


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 北国の自然と暮らしが、なつかしく美しく描かれています。
 雪のにおい。氷の花。冬空に光るいなずま。
 五感がすくすくと覚醒されます。
 主人公の少女の、はずむ息づかいが聞こえてくるようです。

「小さいきょうだい」リンドグレーン著 岩波書店『ちいさいきょうだい』収 

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  「むかしむかし、びんぼうがひどかったころ」で始まる四話のオムニバス、古典名作。
  表題作の「小さいきょうだい」は、孤児となり心の冷たいお百姓にひきとられ、
  働かされてばかりの兄妹の物語。
  飢えと寒さに倒れかけた兄妹は、雪の上に赤い小鳥がいるのを見つけます。
  あとをついていくと、常春のミナミノハラが現れ・・・。
  美しく叙情的な文章、北欧ファンタジーの源流をたどることができます。
  よけいなことかもしれませんが、スウエーデンが高福祉国家を選択した礎を感じます。

「吹雪の夜」 ロバート・ウェストール著 徳間書店『真夜中の電話』収

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  突然の吹雪に巻きこまれ、命の危険にさらされた若い恋人たちの物語。
  吹雪のようす、寒さの描写がものすごくリアルで、バーチャル凍死しそう。
  ラストの幸福感に芯からあったまります。
  冴えないと思っていた少女へ、少年が突然抱く恋心。
  その青春のモヤモヤ感、高揚感ホテリ感も素晴らしい。


雪降れ~~~!




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プロフィール

金G亀美

Author:金G亀美
かなじ・なおみ 児童書作家 埼玉県在住。
主な著書に『さらば、猫の手』(岩崎書店)『マタギに育てられたクマ』(佼成出版社)『ミクロ家出の夜に』(国土社)『花粉症のない未来のために』『子リスのカリンとキッコ』(佼成出版社)『知里幸恵物語』(PHP研究所)『私が今日も、泳ぐ理由 パラスイマー一ノ瀬メイ』(学研プラス)など。
日本児童文芸家協会会員 
童話サークル「かざぐるま」会員
よみうりカルチャー・大宮教室
「童話を書いて楽しもう」講師
イラスト:なかむらしんいちろう

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