金亀苑 金治直美ブログ

児童書を追いかける日々

編集者さんと書き手のビミョーな関係に捧げる映画と本

  1. 2016/11/13(日) 10:58:47_
  2. あんな本、こんな本、どんな本?
  3. _ tb:0
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時に師であり、時に生殺与奪の権を持ち、
けれどもかけがえのない同伴者である編集者さん。
どれだけ書き手がふりまわしても親身に支えてくださる、
ありがた~いお人、編集者さん。

作品について、ここをああして、こっちをこうして、
ここを刈り込んで、そこをふくらまして、と指示をいただき、
ひいひい泣きながら書き直しているときは、
「編集者さんてなんていい仕事!」とうらめしくなり、
でもこちらの作業が終わって作品をゆだねたあと、
編集者さんが画家さんやカメラマンさんや取材対象者さんや
印刷会社さんや営業部門さんと打ち合わせし折衝し、
本の体裁を整え発売にこぎつけてくださるわけで、
わたしは絶対こんな仕事はできんわーと拝んでしまいます。

いつも黒子、裏方に徹してくださる編集者さんですが、
主役を張っている映画があります。大都市ではまだ上映しているかな?

「ベストセラー 編集者パーキンズに捧ぐ」
1920年代に実在した編集者パーキンズと、
37歳で早逝した小説家トマス・ウルフとの曲折のある友情と人生を、
淡々と描いています。
パーキンズは、「老人と海」のヘミングウェイや
「グレートギャツビー」のフィッツジェラルドを見出して
世界的な作家に育てあげた名編集者。
ある日彼のもとに、無名の書き手、トマス・ウルフの
げっそりするほど長大な原稿が持ち込まれ・・・。
天才作家の苦しみと喜び、名編集者の迷いと悩み、
作品に対する二人の熱い思い。いろいろと感じることの多い映画でした。

さて、いっぷう変わった本をご紹介。
「まことに残念ですが・・・」アンドレ・バーナード編集、徳間書店

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編集者さんに教えてもらった本です。
持ち込み原稿へのお断り状を、160も集めたもの。
断られた作家さんと、蹴られた作品名が、すごい!
パール・バック(『大地』)やギュンダー・グラス(『ブリキの太鼓』)、
メルヴィル(『白鯨』)などなど。『アンネの日記』も、実は断られていたのだよ!
帯にあるとおり、「み~んな断られて大きくなった!」
H・G・ウエルズの『タイム・マシン』なんて、将来性がない、などと言われているぞ!

こんな世界的作家でもボツになったことがあるんだから・・・。
以下省略。

さて、編集者といえば、「バクマン。」(原作・大場つぐみ、作画・小畑健、集英社)や、
TVドラマで作家仲間の紅涙を誘った
「重版出来!」(作・松田 奈緒子 小学館)も面白かったですね~。

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「おれがあいつで」の呪縛

  1. 2016/10/09(日) 17:33:23_
  2. あんな本、こんな本、どんな本?
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映画「君の名は。」が大ヒット。
ぜんぜん映画通ではないカナジですが、観ましたよ。
うん、ストーリーはおもしろかった! 映像も素晴らしかった。
でも、胸キュンというほどではなく、涙ポロリもナシ。
・・・やばい。枯れ果てているのか、カナジ?

それも、もちろんあるだろう(簡単にモチロンと言い切るな、自分!)
高校生男女の心が入れ替わり、
時空を超えてのすれ違い・・・という流れのなか、
恋愛モードに自分の意識が切り替わらなかったのは確かだ。

だって、男女の心が入れ替わるってことは、
自分の体を、10代のみずみずしい体を、
知らない異性が使っているということ。
すごくたいへんでめちゃくちゃ恥ずかしくないか?

そっちに意識がいってしまうのには、わけがある。
映画「転校生」の原作として知られる
「おれがあいつで あいつがおれで」(山中恒・著)を
中学生のころに、リアルタイムに雑誌連載で読んだからだ。
 
自分の体の変化や異性への意識、大人社会への欺瞞などなどが満杯で
バランスを失う危うい時期、この物語は強烈だった。
作者のペンは容赦なく、
男子にかくしておきたい女子の体の悩みなどを、
入れ替わった男子に経験させている。
知りたくもない小汚い?男子の体のことを、女子に体験させている。
それが、当時のわたしには生々しくエロすぎて、げっそりだった。
その後、映画「転校生」を観て、なんて清々しくユーモラスに切なく
映像化したのだろうと、びっくりした。

「君の名は。」は文句なしに美しい。
でも、やっぱり中学生だったあのころのわたしの
男女入れ替わりへのげっそり感と羞恥心を思い出してしまった。
山中恒先生、おそるべし。それだけの強さのある作品だったのだ。

こんな思いをした男女って、「同志」だろう。絆も生まれるだろう。
だからこそ恋心が芽生える、そう考えればいいのかな。
しかし、そうやって自分を納得させる時点で、
すでに物語の抒情性から閉め出されているなあ。
無念。

「おれがあいつで あいつがおれで」山中恒・作 杉基イクラ・絵 角川つばさ文庫 

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ロングセラーとなっています。

入れ替わりといれば、こんな絵本も。こちらは、犬と男の子が・・・。
『ジローとぼく』大島妙子作・絵 偕成社

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  楽しく、ホロリときます。


拓け、道!

  1. 2016/02/14(日) 15:19:27_
  2. あんな本、こんな本、どんな本?
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  4. _ comment:2
NHKの朝ドラ「あさが来た」がおもしろい。
朝ドラは、毎朝ちゃんと見たり、見たり見なかったりなのだが、
ここ数年でいうと、「毎朝ちゃんと見る」は、「あさが来た」、「あまちゃん」、
「花子とアン」、「カーネーション」かな。
やはり、道を自らの手で拓いていく女性の物語に惹かれる。

「あさが来た」では、気になるセリフが出てくる。
あさの姉のはつがよく口にする、「お家を守る」「お家のため」だ。

実は、この「~のため」という言い回し、嫌いという以上のアレルギーがある。
「お家」だけではない、「会社のため」や「学校のため」、
はては「お国のため」、どれも心が拒否をする
特に「お国」は最悪だ。

けれども、「あさが来た」を見て、少々考えを変えた。
この時代の女性が「お家のため」にがんばるのは、
自己を犠牲にして家に尽くす、と単純には決めつけられない。
それは、自己実現の道でもあったのだ。
ほかに社会参加のすべのなかった女性たちが、
おのれの能力を発揮できる場は、「家を守る」ことだった。
そう考えると、長い封建時代を生き抜いてきた女性たちがきらきら輝いてみえる。
男尊女卑、身分制度、家制度。
がんじがらめのなかで、それでも女たちは、働く。
それは自分のアイデンティティのためでもあったのだな。
そして、なかなか気づいてもらえないほどの細さであっても、
道を切り開いていくこともあったろう。

道を拓く女性を描いた物語

「アサギをよぶ声」三部作 森川成美 著 スカイエマ 絵 偕成社

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 時代は古代。娘ながら、ひそかに戦士としての修行を積んだアサギ。
やがて、村にふりかかる運命を変えていく要となる――。
簡潔な文章、キレのいい展開。
ああ、男子から「女のくせに生意気だ」と
目の敵にされていた小学生のころに読みたかったよー。
どれだけ勇気づけられただろう。

「レベレーション(啓示)」山岸涼子 著 講談社

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 フランスの百年戦争を舞台に、祖国の英雄から一転、
異端者として火あぶりにされた「ジャンヌ・ダルク」の一生を描く。
まだ一巻目、物語はまだこれからだ。
この時代のフランスの片田舎の雰囲気が味わえる。



「はずれ雪」の日に

  1. 2016/01/24(日) 17:13:51_
  2. あんな本、こんな本、どんな本?
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「はずれ雪」。
今、言葉を創りました。
週末、首都圏でも雪になるかもといわれていたのに、はずれ。
晴天の日曜日です。あ~~~あ。残念。
わたしは雪が大好きなのです。
雪害に遭われる方や通勤する方には申し訳ないですが。
雪が降るたびに防寒ブーツで散歩に出て、
雪だまりにダイブする、ヘンなおばさんです。

わたしの住む埼玉県は、雪は一冬に多くて3回くらいまでしか降りません。
子どものころはいつも雪を待っていました。
冬の朝、ぐずぐず布団のなかにいると、
母の呼び声「雪降ってるよ!」
「わーい!」と跳ね起きて窓辺へいったところが、真っ赤な嘘。
いや、地面が茶色だから真っ茶色な嘘ですね。

雪が降ると、一日中心が躍りました。
別世界が現れた不思議に見惚れました。
ふと、大人は雪が降っても喜ばないことに気がつき、
心底、恐ろしくなりました。
「わたしも大人になったら、雪がうれしくなくなる日がくるのかな。
そんなのいやあっ」
心配は無用、今でもちゃんと雪が大好きです。

雪の気配を感じると、こんな本を開きたくなります。
「海のむこう」土山優 文 小泉るみ子 絵 新日本出版社


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 北国の自然と暮らしが、なつかしく美しく描かれています。
 雪のにおい。氷の花。冬空に光るいなずま。
 五感がすくすくと覚醒されます。
 主人公の少女の、はずむ息づかいが聞こえてくるようです。

「小さいきょうだい」リンドグレーン著 岩波書店『ちいさいきょうだい』収 

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  「むかしむかし、びんぼうがひどかったころ」で始まる四話のオムニバス、古典名作。
  表題作の「小さいきょうだい」は、孤児となり心の冷たいお百姓にひきとられ、
  働かされてばかりの兄妹の物語。
  飢えと寒さに倒れかけた兄妹は、雪の上に赤い小鳥がいるのを見つけます。
  あとをついていくと、常春のミナミノハラが現れ・・・。
  美しく叙情的な文章、北欧ファンタジーの源流をたどることができます。
  よけいなことかもしれませんが、スウエーデンが高福祉国家を選択した礎を感じます。

「吹雪の夜」 ロバート・ウェストール著 徳間書店『真夜中の電話』収

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  突然の吹雪に巻きこまれ、命の危険にさらされた若い恋人たちの物語。
  吹雪のようす、寒さの描写がものすごくリアルで、バーチャル凍死しそう。
  ラストの幸福感に芯からあったまります。
  冴えないと思っていた少女へ、少年が突然抱く恋心。
  その青春のモヤモヤ感、高揚感ホテリ感も素晴らしい。


雪降れ~~~!



ドールハウスあれこれ

  1. 2015/11/08(日) 20:55:39_
  2. あんな本、こんな本、どんな本?
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タイトルにひかれて、ちょっと変った物語を読んだ。
「ミニチュア作家」ジェシー バートン著 早川書房

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1600年代アムステルダム。貿易により栄えていたこの大都市が舞台だ。
裕福な商人の妻としてこの地にやってきた18歳のネラは、
不在がちの夫や、居丈高な年上の義妹にとまどうことばかり。
ある日、夫から精密で高価なドールハウスが贈られる。
(この本の表紙イラストが、ドールハウスになっている。
この時代、実際に贅沢なフィギュアが作られ、
それを富にあかせて買いそろえた大金持ちがいたのだろう)
ネラは、その中の人形が夫や義妹にそっくりであることに気づく。
その人形たちは、やがて新しい家族の悲劇的な行く末を暗示し……。
繁栄の時代のオランダの光と影が、こってりと語られている。
 
フィギュア大好きのわたしは(オタク度高し)、
わくわくしながらページをめくっていったが、別のイミでどきどき。
夫や義妹、使用人がかかえる秘密、港や街のにおいや、
屋敷のむっとするような暗い空気などが、なんてリアル! 
実際には「ミニチュア作家」のからみは少ないし、
(というか、実はドールハウスなしでも物語は成り立ってしまう)、
構成上???という部分もあったか、
濃厚でどすんとした物語を堪能した。

フィギュアといえば、切ない記憶がある。 小学校低学年だったと思う。
出かけた先で、母とともにおもちゃ屋に入った。
なにか買ってもらえる、というシチュエーションだ。
おままごとセットに目が留まった。たちまち心をうばわれた。
なんせ、そのころわたしが持っていたのは、
お祭の夜店で買ってもらった、プラスチックの安っぽいお皿やちゃわん、果物くらい。 
ま、当時はそんなもんだろう。
そのとき見たのは、今思うとフィギュアの領域だった。
精密度が違う。果物の缶詰などのラベルもホンモノそっくりだ。

ほしいよほしいよ、と鐘がリンリン鳴りひびく。
けれども、「これは高い」という、子どもらしからぬ気づかいと、
「小さくてすぐ失くしちゃいそうだ」という不安が、ほしいよの鐘を打ち消した。
「もう失くしたの!」「だからやめとけばよかったのに!」という
親の声が聞こえてきそうだ。
けっきょく、ほしいとは言い出せず、
別の何かもっと安いものを買ってもらった。

大人になった今、お気に入りのフィギュアを並べてにやにやしているのは、
あのときのガマンの反動なのかもしれないぞ。
ガマンって、良くない。 

このあいだ、浅草の江戸小玩具店でゲットした、纏と御用提灯。

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あ~、オトナっていいなあ。10分迷っただけで買える。       

今までに見たなかで、一番身もだえしたフィギュアがこれ。
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金沢兼六園成巽閣に展示されている、前田家のお姫様のお嫁入り道具のなかの雛人形セット。
「梨子地梅鉢紋唐草蒔絵雛道具 三棚」百五十年以上前のものだそう。
金蒔絵に螺鈿がちりばめられた精密な芸術品。紅筆なんて、5ミリくらいでした。
画像は、成巽閣HPからお借りしました。

「人形の家」古典名作。ゴッテン・著 岩波書店

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 人形たちのそれぞれの「人生」の重みと、運命に立ち向かう姿に胸を打たれます。

「引き出しの中の家」朽木祥・著 ポプラ社

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 引き出しの中につくった、ウサギの人形のための家。
女の子も「女子」も胸キュンしながら、時を旅できます。




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プロフィール

金G亀美

Author:金G亀美
かなじ・なおみ 児童書作家 埼玉県在住。
主な著書に『さらば、猫の手』(岩崎書店)『マタギに育てられたクマ』(佼成出版社)『ミクロ家出の夜に』(国土社)『花粉症のない未来のために』『子リスのカリンとキッコ』(佼成出版社)『知里幸恵物語』(PHP研究所)『私が今日も、泳ぐ理由 パラスイマー一ノ瀬メイ』(学研プラス)など。
日本児童文芸家協会会員 
童話サークル「かざぐるま」会員
よみうりカルチャー・大宮教室
「童話を書いて楽しもう」講師
イラスト:なかむらしんいちろう

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