金亀苑 金治直美ブログ

児童書を追いかける日々

かいぞくゴックン  日本語ゴックン

  1. 2014/06/05(木) 16:42:50_
  2. あんな本、こんな本、どんな本?
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「かいぞくゴックン」
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 ジョニー・ダドル作・絵の絵本です。 訳はおなじみのアーサー・ビナードさん。
 絵がすごい! 迫力バシバシ。なのに軽妙。新しいタッチの絵なのにどこかなつかしい空気。デカイ話なのに、細かい仕掛けが! いろいろな楽しみ方のできる絵本です。
 ある夜、海賊たちに届いた手紙。「いまのせいかつに まんぞくしていますか?」その手紙に導かれ、宝探しへ海に乗り出した海賊たち。その運命は?(あらら、ゴックン――?)
 読み語りをするなら、ある程度大きい子、中学年くらいからのほうが、おもしろさが伝わるでしょう。けれども、細かなトラップを楽しむなら、自分で広げてじっくりと。
 
 この絵本については、アーサー・ビナードさんご自身の講演会で触れられていました。「かいぞくゴックン」になぞらえて、「児童文学ゴックン!」というタイトルの講演です。つい先日の、「国際子ども図書館を考える全国連絡会」の総会後の記念講演会でした。
 軽妙で楽しい講演ですが、実は非常にこわーいお話。まさに、この絵本のように……。
 
 ビナードさんは語ります。
 かつて日本語は、田畑や里山で、海辺で、暮らしのなかから生まれてきたものでした。今はどうだろう? 日本語は劣化しているのではないか? 権力者が造った都合のいい「広告」となっているのではないか? とんでもない狙いを、きれいな箱に入れさらにきれいなラッピングをして、正体がよくわからないようにして、とってもイイモノですよ、と広告している……。
 このまま行くところまで行ったら、もっと大きな何かに飲み込まれ、「日本語ゴックン!」「文学ゴックン!」かもしれません。ですから今、「日本語を存続させること」、これが文学者の最大の使命なんじゃないですか――?

 ビナードさんは、宮沢賢治の「雨ニモ負ケズ」の英訳絵本も出版してらして、それについてこう語りました。
「雨ニモ負ケズ」は、学校の先生などは、「質素な暮らしをして、自分を捨てて人の役に立て」という解釈をしがち。子どもたちに聞くと、「ソウイウモノニ ワタシハナリタクナイ」。
違うんです! 「一日に玄米四合と味噌と少しの野菜を食べ」、実はこの食事は、すごい量。四合の米を、しかも玄米を現代人、食べられません! 有機米だし、有機丸大豆の手作り味噌だし、「少しの野菜」といっても、おそらく今のわれわれがサラダで食べる野菜の何倍もあるでしょう。「萱葺きの小屋」? 茅葺というのはそんなに小さい家ではありません。けっこう大きな家。決して貧乏ではないんです。しかも、茅を葺くにしても田んぼ作業にしても、一人でやることではない。村のなかで共同でやることです。

 なるほど! 目からウロコでした。自然の恵みをたっぷり享受した豊かな生活をして、村の共同体のなかで調和のある人間関係を築いたうえでの、「ほめられもせず苦にもされず」だったのですね。
特別な「聖人」ではなく、わたしの父母の村にもいたかもしれない日本人の姿が浮かび上がってきます。これなら「ソウイウモノニ ワタシハナリタイ」、わかります! 
 表面をなぞっただけでは伝わらない真実。五感を覚醒させなくちゃ。ゴックンされないようにね。
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プロフィール

金G亀美

Author:金G亀美
かなじ・なおみ 児童書作家 埼玉県在住。
主な著書に『さらば、猫の手』(岩崎書店)『マタギに育てられたクマ』(佼成出版社)『ミクロ家出の夜に』(国土社)『花粉症のない未来のために』『子リスのカリンとキッコ』(佼成出版社)『知里幸恵物語』(PHP研究所)『私が今日も、泳ぐ理由 パラスイマー一ノ瀬メイ』(学研プラス)など。
日本児童文芸家協会会員 
童話サークル「かざぐるま」会員
よみうりカルチャー・大宮教室
「童話を書いて楽しもう」講師
イラスト:なかむらしんいちろう

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