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金亀苑 金治直美ブログ

児童書を追いかける日々

小さな肝試し

  1. 2020/10/18(日) 16:42:02_
  2. 金亀のひとりごと
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幼いころ、エスカレーターは「都会」の象徴だった。
母に連れられてのデパートでしかお目にかかれない、
特別な乗り物だった。
美しくスマートで、乗るたびにわくわくした。
今でも、乗り換え駅でながーいエスカレーターに乗り合わせると、むふふ、と楽しくなる。

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だから、右側をエンヤコラと昇ることは、しない。
歩行者のために右側(関西は左ですな)を開けておく習慣は、いつごろからだろう。
乗っかっているだけで上へ下へと連れて行ってくれるありがたいモノなのに、
なぜわざわざ、せかせか足を動かす?
しかも、隣にちゃんと階段があるのに?
駅のアナウンスでも、「エスカレーター内の歩行は思わぬ事故につながりますので・・・」と繰り返しているじゃないか。

というわけで、ときどき「肝試し」をする。
でんと右側に立ったまま、歩かずじっとしているのだ。
それだけだが、けっこう度胸がいるんですよ。
当然、後ろがつかえてくるわけで、背中が緊張してしまう。
「なにあの人、知らないの? それともぼけてんの?」
なんてささやかれているんじゃないか。
「ババア、どけ!」という声が飛んでくるんじゃないか。

だから、なにか言われたときのために、
セリフを用意している。
肘からさっと右手をあげて、できるだけ「駅の人」っぽく、
「お急ぎの方は、そちらの階段をご利用くださーい」。
家で練習することもある。
まだ、本番の経験はないが。

先日、久しぶりの駅で、「肝試し」をやった。
エスカレーターの左側はぎっしりで、順番を待つ人がホームにあふれているのに、
右側はがらがら。チャンスだ。

その右側に乗り込んでしばらく昇ったとき、背中をそっとつつかれた。
左側の一段下に立つ、若い会社員ふうの男性だ。
わたしの列の後ろを、小さく手で示す。
何人もの人が、わたしのすぐ後ろに並んでいる。
その男性は、親切心から、「つかえてますよ」と教えてくれたのだろう。
威圧的ではなく、バカにしている感じもなかった。
わたしは、「いいんですよ~」と小声で応じた。
「エスカレーターは歩かないで、立ったまま乗ったほうがいいと思いますので」
男性は、うんうん、と小さくうなずいてくれた。

いいことをしたのか、じゃまくさいことをしたのかはわからない。
でも、もしかしたら、わたしの後ろの列のなかに、
「おっ、ここ、立ったままでいいんだな」と、
ほっとして乗り込んできた人がいるかもしれないぞ。

そう思うと、ちらっと勇気が出る。
へへ、またやるぞ。
やってやるぞ。

最寄り駅にも、ハロウィンの飾りが。駅員さんがこんな仕事もする時代ですね。

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プロフィール

金G亀美

Author:金G亀美
イラスト:大塩七華
かなじ・なおみ 児童書作家 埼玉県在住。
主な著書に『さらば、猫の手』(岩崎書店)
『マタギに育てられたクマ』(佼成出版社)
『ミクロ家出の夜に』(国土社)
『花粉症のない未来のために』
『子リスのカリンとキッコ』(佼成出版社)
『知里幸恵物語』(PHP研究所)
『私が今日も、泳ぐ理由 パラスイマー一ノ瀬メイ』
(学研プラス)
『となりの猫又ジュリ』(国土社)
『クレオパトラ』『マイヤ・プリセツカヤ』(学研プラス)
『読む喜びをすべての人に 
日本点字図書館を創った本間一夫』
(佼成出版社)など。
日本児童文芸家協会会員 
童話サークル「かざぐるま」会員

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