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金亀苑 金治直美ブログ

児童書を追いかける日々

中学生の「居場所」

  1. 2020/10/04(日) 14:32:32_
  2. 新しいインクの匂い
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  4. _ comment:0
中学生のころ、世界は学校と家、この二箇所しか存在していなかった。
そこしか居場所がなかった。
しかしそこも、けっして居心地のいいものではなく、
わたしはいつもトゲトゲギスギスしていたっけ。
それでも、「居場所」と思えるだけいいのかもしれない。
今、どこにも居場所がないように感じる子たちも多いだろう。
思春期という嵐だけでも持て余すのに、同調圧力というでかい魔物が巣食うこの国で、
中学生は満身創痍の日々を送っているのだろうか。

そんな中学生に、ストレートに響く物語、二つ。
『保健室経由かねやま本館。』松素めぐり 著 おとないちあき 画 講談社


 転校生のサーマは、これまでどおり人気者として、
うまくクラスになじめ、仲良しグループの一員になれた、と思っていた。
なのに、ある日そのグループからハブられ、
保健室に逃げ込むと、隣の【第二保健室】を案内される。
そこは中学生専門の湯治場への入り口だったーー。

そう、もっとも温泉が必要なのは、中学生かもしれない。
温まって心と体をほぐし、出会った人たちと語う、そんな居場所。
自分自身を見つめ直し、再び嵐のなかへ歩み出す勇気を取り戻せる場所。

作者は、この作品で第60回 講談社児童文学新人賞を受賞し、デビューした方。
なんと、この作品は三部作として、一年間に三冊とも出版になるという、
ミラクルな大型新人だ。
設定のおもしろさもさることながら、ぐいぐいするすると先へ読ませる文章、
キャラクターたちのくっきりした存在感も光る。

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二巻目もまたいい。一巻目とまるで違うキャラクター、ストーリーで、「おおっ!」
三巻目は、この秋に出版になるそうだ。
ひゃーっ、ほんとうに新人さんなの? 

「居場所」をめぐる物語、こちらはリアリズムの一冊。そのリアルさがすごい。
『サード・プレイス』ささきあり著  酒井 以 画  フレーベル館

無題

 四編の連作だ。それぞれの主人公である中学生が、
それぞれの重たさを抱え、「第三の居場所」として訪れたのは、
「サプリガーデン」。        」。
ここは公共の施設であり、中高生ならだれでも立ち寄っていい場所。
やってきた中学生たちは、それぞれの自由に時間の過ごし方を見つけ、
楽しめることを探し、それを共にできる仲間やスタッフと出会い、
心をほぐし広げ、立て直していく。

登場人物はどこにでもいそうな中学生。
深刻ないじめや毒親が出てくるわけではない。
だからこそ、リアル。
読み手の心にすんなり入ってくる、
頑なでありながら揺れ動く中学生の思いが、切なくいとおしい。

自分が嫌でたまらなかったくせに、へんなプライドにしばられていた「あの頃」。
こんな物語に出会いたかったなあ。

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プロフィール

金G亀美

Author:金G亀美
イラスト:大塩七華
かなじ・なおみ 児童書作家 埼玉県在住。
主な著書に『さらば、猫の手』(岩崎書店)
『マタギに育てられたクマ』(佼成出版社)
『ミクロ家出の夜に』(国土社)
『花粉症のない未来のために』
『子リスのカリンとキッコ』(佼成出版社)
『知里幸恵物語』(PHP研究所)
『私が今日も、泳ぐ理由 パラスイマー一ノ瀬メイ』
(学研プラス)
『となりの猫又ジュリ』(国土社)
『クレオパトラ』『マイヤ・プリセツカヤ』(学研プラス)
『読む喜びをすべての人に 
日本点字図書館を創った本間一夫』
(佼成出版社)など。
日本児童文芸家協会会員 
童話サークル「かざぐるま」会員

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