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金亀苑 金治直美ブログ

児童書を追いかける日々

昭和の「クリスマスの思い出」

  1. 2018/12/23(日) 17:35:08_
  2. あんな本、こんな本、どんな本?
  3. _ tb:0
  4. _ comment:0
昨日は、今年最後の読書会だった。
テキストは、『クリスマスの思い出』トルーマン・カポーティ。
 (村上春樹訳、山本容子銅版画、文藝春秋)

   クリスマス

7歳の少年と60代の従妹、そして犬のクィニーが、「友だち」として一緒に暮らし、
クリスマスを迎える。
なけなしのお金をはたいてフルーツケーキを焼き、
秘密の森からモミノキを伐り出し、プレゼントは手作りの凧。
少年は、子どものままの年をとったような従妹と、
かけがえのないクリスマスを過ごす。
暖炉の薪の香りや、冬の草はらの匂い。
読み返すたびに、しんと胸に染み渡る物語だ。

子どものころ、ケーキを食べると気持ちが悪くなった。
うなずく人も多いだろう。
昭和30年代から40年代に売られていた、
安物のマーガリンを使ったバタークリームのケーキだ。
だからだろうか、ある年のクリスマスに、
小さなデコレーションケーキ型のアイスクリームを買ってもらえた。
小学校一年生のときだ。

父は、クリスマスシーズンからお正月にかけて、毎年帰宅が遅かった。
なんのことはない、郵便局勤務だったから。
父のいないクリスマスイブに、母と姉と三人で、アイスクリームをどっさり食べた。
寒い季節だし、残念ながらたいしておいしくはなかった。
ド庶民であったので、クリスマスプレゼントも、わーい、と喜ぶようなものではなかったと思う。
なんとなく盛り下がっている姉とわたしを見かねてか、
母がその年に流行った「幸せなら手をたたこう」を歌おうといいだし、
わたしたちは、ちょっと照れながら、ぼそぼそと歌った。
三人だけで、しかも伴奏もなしに歌う歌は、かえって物寂しさを連れてきた。
――おとうさんがいたらよかったなあ。
わたしは実のところ、生まれて初めて、そう思った。
無口で愛情を表すことがなく、遊んでくれたこともない父は、
気ぶっせいな存在であり、いつもはいなくてもまるでへっちゃらだったのだ。
でも、このときのクリスマスは、
やっぱり家族そろっていたほうが楽しいかも・・・と思わせるものだった。
――そうか、おとうさんがいないのは、働いているからだった。今、この時間も。

「おとうさんありがとう」とまでは、考えはしなかった。
けれども、そのときに胸にひとすじ、ほんのひとすじ差し込んだのは、
たしかに敬虔ともいえる思いだった。
そう、クリスマスにふさわしいような。

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プロフィール

金G亀美

Author:金G亀美
イラスト:大塩七華
かなじ・なおみ 児童書作家 埼玉県在住。
主な著書に『さらば、猫の手』(岩崎書店)『マタギに育てられたクマ』(佼成出版社)『ミクロ家出の夜に』(国土社)『花粉症のない未来のために』『子リスのカリンとキッコ』(佼成出版社)『知里幸恵物語』(PHP研究所)『私が今日も、泳ぐ理由 パラスイマー一ノ瀬メイ』(学研プラス)『となりの猫又ジュリ』(国土社)『クレオパトラ』『マイヤ・プリセツカヤ』(学研プラス)など。
日本児童文芸家協会会員 
童話サークル「かざぐるま」会員
よみうりカルチャー・大宮教室
「童話を書いて楽しもう」講師

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