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金亀苑 金治直美ブログ

児童書を追いかける日々

障がいを克服するって? 

  1. 2018/05/27(日) 17:44:38_
  2. あんな本、こんな本、どんな本?
  3. _ tb:0
  4. _ comment:0
5月24日(木)は、一年で一番忙しい日。
日本児童文芸家協会の総会、協会賞・新人賞・功労賞の贈呈式・懇親会が
都内で開かれた。
今年の新人賞は、「僕は上手にしゃべれない」椎野直弥・著 ポプラ社。

ぼくは

吃音に悩む中一の悠太、その葛藤と成長を描く物語だ。
悠太が吃音を克服すべく選んだ部活は、なんと放送部。
そこで出会う新入女子部員や先輩、姉たちに助けられ・・・。
悠太の、うまくしゃべれないもどかしさと悔しさ、嘆きが
ぐいぐい胸のうちに迫ってくる。
それでいて、リズム感のある文章のおかげか、決して暗くはない。

ただ、腹が立ってくるのだ、この物語は。
悠太クンは、周囲の無理解やら嘲笑やらという、
出口のない闇を歩いている、いや歩かされている。
それってもちろん、本人が悪いわけではない、100%周囲の問題。
ならば、「成長」すべきは、本人ではなく、学校であり、社会じゃん?
なのに、なんでこんな苦労を、彼自身が背負わなくてはならないの?
ただでさえ、うまく回らない口と舌をどう動かすかに疲労困憊しているのに?
と、ムカついてしまう。
そう思わせることが、作者の狙いなのかな?

わたしは、「障がいを乗り越えて」という表現が嫌いだ。
(吃音は障がいと認められていないそうだが)
乗り越えて成長すべきは、本人ではないもの。
わたし自身、パラアスリートの物語を二冊、オムニバスでも一作書かせてもらったが、
そういう視点では描かなかった。

『ワンダー』R.J.パラシオ・著 ほるぷ出版

ワンダー


この物語は、全世界で300万部売れたという感動作だ。
映画化されて、まもなく封切りになる。
オーガストは生まれつき顔に障がいがあり、10歳ではじめて学校に通うことに。
生徒たちはオーガストの顔に驚き、悲鳴をあげるが・・・。
しかし、オーガストをめぐる男子たちのなかで起こったあるいじめをきっかけに、
生徒たちは変わっていく。
そう、これは「障がいを克服する」物語ではなく、
回りが偏見を克服する物語だ。

方向は違うけれど、どちらも素晴らしい物語。
「僕は・・・」も、あっというまに版を重ね、すでに6刷りだそうだ。
これらの物語が多くの人に受け入れられているって、素敵だね。



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プロフィール

金G亀美

Author:金G亀美
かなじ・なおみ 児童書作家 埼玉県在住。
主な著書に『さらば、猫の手』(岩崎書店)『マタギに育てられたクマ』(佼成出版社)『ミクロ家出の夜に』(国土社)『花粉症のない未来のために』『子リスのカリンとキッコ』(佼成出版社)『知里幸恵物語』(PHP研究所)『私が今日も、泳ぐ理由 パラスイマー一ノ瀬メイ』(学研プラス)『となりの猫又ジュリ』(国土社)『クレオパトラ』(学研プラス)など。
日本児童文芸家協会会員 
童話サークル「かざぐるま」会員
よみうりカルチャー・大宮教室
「童話を書いて楽しもう」講師
イラスト:大塩七華

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