金亀苑 金治直美ブログ

児童書を追いかける日々

ある日の読書会

  1. 2017/06/18(日) 16:06:22_
  2. 金亀のひとりごと
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その日は、月に一度の読書会だった。
メンバーは5人。ささやかな人数だけれど、すでに30年近くの歴史がある。
会場である図書館の読書会室の空気が、
ほどよくひきしまるのが心地よい。
脳細胞がくすぐられ、うふふうふふと声をあげる。

その日の読書会のテーマブックは、『ぼくたちもそこにいた』。
ハンス・ペーター・リヒター作 上田真而子訳 岩波少年文庫

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名作『あのころはフリードリヒがいた』の続編だ。
ドイツの人々、少年少女までもが、ヒトラー体制に組み込まれ、
加害者となり戦争に加担してさまを、淡々と克明に描いている。

「今の日本、恐い。○×首相の顔が、ヒトラーに見えてきた」
「あの大きな戦争であれだけの被害を受け、また加害者にもなったというのに、
日本は歴史からなにも学んでないのかね」
「後の世に『なんであの流れを止められなかったの? 
だれも反対しなかったの?』と責められそう。孫、ひ孫に顔向けできないわ」
「共謀罪、あれによっていろんな自由がせばめられてしまって」
「まっとうな市民運動であっても、もう壊滅状態だな」
「署名運動もほとんどなくなってしまった」
「となり近所の目が恐いからなあ」
しかし、と最長老の元図書館長が、静かにいった。
「ありがたいことに、図書館ではまだ自由が守られている」
 そのとき、読書会室のドアが、遠慮がちにノックされた。
「あのう、みなさん、もう少しお静かに話したほうが・・・」
 顔なじみの司書さんが顔を出した。
「え? 大きな声なんて、出していませんよ?」
 わたしたちは首をかしげた。
司書さんは、両手をもみしぼりながら小声で告げた。
「それに、そのう、本の内容よりも、文体とか、そういうお話に限ったほうが・・・
というより、その本をテーマにしないほうが・・・」
わたしたちは、はっと顔を見合わせた。
「盗聴器・・・?」
 司書さんの背後から、黒い影。
「どきなさい。よけいなことをいわないように」
 司書さんを押しのけて姿を現したのは、5人の男女。
「暮らしの安全守り隊」。
のどかなネーミングとはうらはらの、目深に被った制帽、
かっちりと肩の張ったカーキ色のロングコート姿だ。
なかの一人は、知人だった。
かつていっしょに、集団的自衛権反対のデモで街を歩いたっけ。
あの人がいつのまにこんな・・・。
「全員、外に出なさい」
隊員が、わたしたち一人ずつにぴったりと張り付く。
 図書館にいた人たちが、目をそらしながら書架の陰に隠れる。
 司書さんたちの目は真っ赤だ。
 図書館の裏口には、カーキ色の小型の車が5台。
わたしたちは一人ずつ乗せられた。
車がすべり出す。
永田町へと。

こんな時代がやってくる・・・? 

ミニプラカード。
お友だちの作家さんが作ってくれました。
いつも使っているリュックにつけています。

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猫ちゃんの画像のものは、
「肉球新党」
「猫が幸せに暮らせる社会は、人にも優しい。
だから、戦争に反対、原発にも反対。
そして、動物と人が共生できる社会を」を掲げる市民団体です。
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プロフィール

金G亀美

Author:金G亀美
かなじ・なおみ 児童書作家 埼玉県在住。
主な著書に『さらば、猫の手』(岩崎書店)『マタギに育てられたクマ』(佼成出版社)『ミクロ家出の夜に』(国土社)『花粉症のない未来のために』『子リスのカリンとキッコ』(佼成出版社)『知里幸恵物語』(PHP研究所)『私が今日も、泳ぐ理由 パラスイマー一ノ瀬メイ』(学研プラス)など。
日本児童文芸家協会会員 
童話サークル「かざぐるま」会員
よみうりカルチャー・大宮教室
「童話を書いて楽しもう」講師
イラスト:なかむらしんいちろう

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