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金亀苑 金治直美ブログ

児童書を追いかける日々

「来賓祝辞」

  1. 2020/03/23(月) 12:17:06_
  2. 金亀のひとりごと
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春というのに、新型コロナ禍の閉塞感がみっちり。
学校の卒業式も、卒業生と教職員のみで行っているところが多いのでしょうね。
ちょっと寂しいけれど、それはそれでこぢんまりとして、悪くないかも。
なんたって、「来賓祝辞」がないもの。

「来賓祝辞」、おおかたの場合、生徒はほとんどだれも聞いちゃいないでしょう。
わたしも、もちろんそうでした。生徒だったときも、保護者として出席していたときも。
でも、二回だけ、とても心に残る祝辞を聞いたことがあります。
それは、卒業式ではなく、PTA総会のとき。
わたしは、息子の中学校のPTA役員でした。

教育委員会の男性が、祝辞に立ちました。
教育委員会に出向中の教員の方で、
居並ぶPTA役員の母親たちと、同世代に見えました。
彼は、こう話し始めました。
「昨年、娘を失くしました・・・」
中学生だったお嬢さんが、急死されたというのです。
わたしは、耳をそばだてました。
「悲しみと、娘を救ってやれなかった無力感が強すぎて、
自分でもどうやって生きていったらいいのか、
まったくわからなくなりました。
でも、ある日、ふと思いました。
悲しんでいる自分、苦しんでいる自分、
それをかくさなくていいんだ・・・と」
教育の現場にいて、
亡くなった娘さんと同年代の元気な生徒さんたちを前に、
この方はどれだけ苦しんだことでしょう。
「娘になにもしてやれなかった無力な自分。
今の自分にできることは、それをさらけ出すことなんだ。
そう思うようになりました」
 ――そんな話だったと思います。
来賓祝辞で涙がわいたのは、生まれて初めてでした。

翌年のPTA総会にも、その方が祝辞に立ちました。
再び娘さんのことに触れました。
「娘のことを、わたしはよくわかっているつもりでした。
けれども、実はたいしてわかっていませんでした。
亡くしてから初めて知ったことも、たくさんありました。
だからみなさん、どうか、息子さん娘さんのことを、
よーく見てあげてください。話をきいてあげてください――」
来賓祝辞での、二度目の涙でした。
忘れずに、心に留めておこうと思いました。

だから、今、こうして書いています。
心の奥を明かしてくださったあのときの「来賓」の方へ、
今さらですが、感謝と娘さんへの祈りを込めて、書いています。
お話ししてくださって、ありがとうございました。

春は、いつでも美しく巡ってきます。
大好きな雪柳。

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こちらは、紫陽花の若葉。梅雨時には一番の楽しみとなります。

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プロフィール

金G亀美

Author:金G亀美
イラスト:大塩七華
かなじ・なおみ 児童書作家 埼玉県在住。
主な著書に『さらば、猫の手』(岩崎書店)『マタギに育てられたクマ』(佼成出版社)『ミクロ家出の夜に』(国土社)『花粉症のない未来のために』『子リスのカリンとキッコ』(佼成出版社)『知里幸恵物語』(PHP研究所)『私が今日も、泳ぐ理由 パラスイマー一ノ瀬メイ』(学研プラス)『となりの猫又ジュリ』(国土社)『クレオパトラ』『マイヤ・プリセツカヤ』(学研プラス)『読む喜びをすべての人に 日本点字図書館を創った本間一夫』(佼成出版社)など。
日本児童文芸家協会会員 
童話サークル「かざぐるま」会員
よみうりカルチャー・大宮教室
「童話を書いて楽しもう」講師

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