金亀苑 金治直美ブログ

児童書を追いかける日々

三十年の香り

  1. 2016/04/23(土) 18:24:56_
  2. 金亀のひとりごと
  3. _ tb:0
  4. _ comment:0
えっ、コレの匂いなの?
濃密な花の香りが、いつのまにか漂っている。
4月14日夜、「前震」の晩だ。
テレビでは地震速報。
切り替わるテレビ画面、刻々と被害が明らかになってくる。

夜が深まると、香りはますます濃くなっていく。
濃密な甘さとかすかな青くささが、狭い家に満ちる。

咲いていたのは、ドラセナマッサンギアナという観葉植物の花、
「幸福の木」という名前で知られている。

                 DSC_0298_convert_20160423180546.jpg

この鉢植えとは、もう三十年もいっしょに暮らしているのに、
花が咲いたのは始めて、というか花が咲くということすら、知らなかった!
三十年かけて咲いた花、三十年分の香りを放っているのか。

地震情報をはらはらしながら聞いているあいだじゅう、
花はだまって香りを放ってくれた。

幹はひょろひょろ。
 
               DSC_0299_convert_20160423180703.jpg


ほっぽらかしで、気がつくと、1か月水をやっていなかたりする。
肥料は、ようやくここ3年くらい、液肥を、夏場に1、2回与えるようになった。
きっと、 鉢のなかは根詰まりしているだろう。
それなのに、ああ、それなのに、よくぞ咲いてくれました。
しかも、こんな震災のときに。

夕方になると、白い小さな花が開き、

           螟彑convert_20160423181629

朝になると閉じる。

          譏シ髢点convert_20160423181708

原産地はアジアやアフリカの熱帯。
夜中に目をさますと、
気分は暗い密林のなかだ。

10日ほどたち、花は終わりに近づいた。
種が落ちている。

                 DSC_0306_convert_20160423181114.jpg

地震が収束するまで咲いていてくれよ、とは人間はまったく勝手なものだなあ。

スポンサーサイト

子どもの声は未来

  1. 2016/04/16(土) 17:26:17_
  2. 金亀のひとりごと
  3. _ tb:0
  4. _ comment:0
関東以北の方は五年前の「あの日」を。
関西の方は21年前の「あの日」を。
フラッシュバックされていることだろう。

刻々とむごい被害状況が伝わってくる。
じりじりするような不安や焦燥感で息苦しくなる。

思いついて、CDをかけた。
NHK東京児童合唱団が歌う合唱曲だ。
『明日へのうた ~心に届け! うたのチカラ~』

無題


「道」、「未来を旅するハーモニー」、嵐の「ふるさと」など、12曲。
東日本大震災の復興応援歌「花は咲く」も含まれている。

子どもたちの声のうつくしさ、けなげさに、
ていねいに声に乗せていることばの気高さに、
心が落ち着いてきた。

子どもたちの声は、強くやわらかな力を持っている。

東日本大震災のときの計画停電中に、
ラジオから「アンパンマン」の歌が流れてきたっけ。
被災地の避難所で、この曲にぱっと目を輝かせ
いっしょに歌いだしたであろう子どもたち、
その何日ぶりかの笑顔と歌声を想って、泣いたなあ。

子どもの声は、笑顔は、未来そのものだ。
けっして「騒音」なんかではない。

被災地のみなさまのご無事を祈る。




許せないもの?

  1. 2016/04/10(日) 16:43:16_
  2. 金亀のひとりごと
  3. _ tb:0
  4. _ comment:2
こ、これは日本の食文化の破壊だ。
わたしは、激しく憤った。
当時はまだ小学生、そんな語彙は持ち合わせていなかったと思うが、
そんなニュアンスで怒っていたのだ。
それは、味つけ海苔の存在について。

わたしは海苔が大好きだ。
小さいころ、焼き海苔が一般的になる前は、
干し海苔を火であぶってパリッとさせて食べるのが当たりまえだった。
磯の香が立つ海苔のはじっこに醤油をつけご飯をくるみ、
口へ運ぶと海苔と醤油とご飯の甘みが渾然一体、
ああ、なんて海苔っておいしいんだろう、と思ったものだ。
海苔をあぶる香は、昭和の香だなあ。

そこへやってきた黒船が味付け海苔だ。
べたべたと妙に甘くて、「なぜわざわざまずくするの?」
子ども心に、味のわからない大人が作ったシロモノだろうと思った。
今に至るまで、わたしは味付け海苔を買ったことがない。
海苔には醤油!

納豆にタレがつくようになったのは、いつごろからだろうか。
こ、これも日本の食文化の破壊だ!と憤った。
こちらもべたべたと妙に甘くて、「なぜわざわざまずくするの?」
今に至るまで、わたしは納豆のタレを使ったことがない。
納豆には醤油!

・・・もしかして、ただの醤油好き?  そうかも。
まあいいか。醤油は日本が誇る発酵調味料だもの。
カレーやビーフシチューやラタトュイユの仕上げにも、醤油。
ひとたらしで味が決まる。

たまっていく納豆のタレ、もちろん捨てませんよ~。

           DSC_0263_convert_20160410163835.jpg

厚焼き卵の味付けにぴったりなのさ。
一番小さい袋一つで、ちょうど卵一個分。
朝の忙しい時間に作るのに便利。
タレの小袋が4つたまると、卵4個で作ります。
  
        DSC_0262_convert_20160410163653.jpg
 ちょっとコゲてます。

作家さんてすごいなあ

  1. 2016/04/03(日) 15:18:22_
  2. 新しいインクの匂い
  3. _ tb:0
  4. _ comment:0
「書く」エネルギーについて、襟を正してくれた新刊書をご紹介する。

「ガラスの壁のむこうがわ」せいのあつこ著、北澤平祐絵、国土社

           9784337187597[1]
           
この本がデビュー第一作。
由香は友だちができず、休み時間には一人で本を読む。
先生や母親が発する「友だちをつくろうね」ということばが、
ガラスの豆となって、ぱしぱしとぶつかってきて、痛い。
「普通の子になりたい」と悩む由香。

この本を読んだたくさんの女の子が、
「わたしのことだ」と思ったことだろう。
「暗くて何考えているのかわからない」といわれている子だけじゃなくて、
「明るくて活発」と思われている子も。
そういう子って、そのイメージをキープするのに、
実はものすごくエネルギーを使い、疲れ果てているのかもしれないもの。

こういう物語を書くには、パワーがいるのだろうな、と思う。
やっぱり、明るくて楽しい話は、書いていても楽しい。
反対に、心の底に深く深く降りていくような物語は、
ひたひた深い湖のような静かな精神力が必要だろう。
ガラスの壁やガラスの豆、その透明で繊細な感覚を保つのに、
作者はどれだけのパワーを維持したことか。
「自分はどうよ? こんな精神力を持っているかい?」
自分につきつけてみた。

「天国にとどけ! ホームラン」
3・11を乗りこえて、バッティングセンターを作った父子の物語」
漆原智良・作 羽尻利門・絵 小学館

                09289747[1]

大ベテラン、大先輩作家の先生が描くノンフィクション。
震災で家族を失い、二人だけ残された父子の実話だ。
野球少年の息子と元高校球児の父が、悲しみと喪失感から立ち直り、
バッティングセンター設立のために動き出す。

まず、父親が体験した津波のシーンがすごい。
読むうちにこっちの足が冷たくなってしまった。
この父子の失くしたものの大きさに、愕然となる。
妻(母)、二人の娘(妹)、妻の両親(祖父母)や親戚など、
なんと一度に7人もの大切な人を失くされているのだ。
前を向いて歩き出すまでに、
どれだけの涙があったことだろう。

辛い話を取材するのは、辛い。
漆原先生は、どれほど心を痛めながら取材されたことだろう。
けれども作品は、その辛さに埋没することはない。
前面に描かれているのは、希望の光と人間の力強さだ。

新人さんと大ベテラン先生、その精神力と筆力に、
「作家さんてすごいなあ」と、
同業者のはしくれであることを忘れ、つぶやいた春。




NEW ENTRY  | BLOG TOP |  OLD ENTRY


プロフィール

金G亀美

Author:金G亀美
かなじ・なおみ 児童書作家 埼玉県在住。
主な著書に『さらば、猫の手』(岩崎書店)『マタギに育てられたクマ』(佼成出版社)『ミクロ家出の夜に』(国土社)『花粉症のない未来のために』『子リスのカリンとキッコ』(佼成出版社)『知里幸恵物語』(PHP研究所)『私が今日も、泳ぐ理由 パラスイマー一ノ瀬メイ』(学研プラス)など。
日本児童文芸家協会会員 
童話サークル「かざぐるま」会員
よみうりカルチャー・大宮教室
「童話を書いて楽しもう」講師
イラスト:なかむらしんいちろう

« 2016 04  »
SUN MON TUE WED THU FRI SAT
- - - - - 1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30

検索フォーム

ブロとも申請フォーム

QRコード

QR