金亀苑 金治直美ブログ

児童書を追いかける日々

「また聞き」のリアル

  1. 2014/06/26(木) 22:48:46_
  2. 金亀のひとりごと
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 映画「グランド・ブダペスト・ホテル」を観た。
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映画通とはほど遠いわたしだが、友人がブログで「かっこいい映画!」と激賞していたのに心ひかれたのだ。
グランド・ブダペスト・ホテルの名物コンシェルジュが、
上客であった公爵夫人の遺産の一部を贈与されることになったことから、
殺人犯に仕立て上げられ……というストーリー。
ほら、こうやってストーリーだけ追うと、ちっともおもしろそうに感じない。でしょ? 

  けれども、映画はびっくりするくらいにおもしろかった。
 内容もさることながら、おもしろさの伝わり方が、おもしろいのだ。
 こんなふうに表現できるのか!という驚き。
 なにしろ、ベタな遺産相続がらみの殺人事件を扱っていても、
 ミステリーではなくて、ドラマチックなコメディとなっている(ドラメディというらしい)。
 その笑わせ方はきわめて生真面目、クソ真面目だ。そこがまずおもしろい。
 
 しかも、フィクションだから作り物なのは当たり前だが、随所でこれは作り物だよ、作り物だよ、と
 さりげなく強調している感がある。
 それは、冒頭で描かれる、物語の構造からして感じとれる。
 学生らしき若い女性が開く小説。その中で語られるのは、
 その作家がいかにして小説を書いてきたかということ。
 例として語られるのが、ホテル・グランド・ブダペストに滞在したときに出会ったという、
 ホテルのオーナーの話。そのオーナーから聞いたのが、彼が少年のころに出会った名物コンシェルジュ……
 という、三重構造になっているのだ。
 
 これはほんとうにあった話です、といわれるとかえってウソ臭くなる。
 それと真逆で、「また聞き」っぽく造りこんでいく過程を見せて、
 あえて作り物のなかにリアルさを感じさせるような仕掛けなのも? 
「昔々あるところに」と語られる物語が、真実を感じさせるのと同じように。

 さて、作り物だよと喧伝しながら真実を語る物語といえば、ファンタジーだ。
 どうりで、この映画には、上質のファンタジーの匂いがあった。

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熱いよ! 第四回「童話塾in関西」

  1. 2014/06/23(月) 21:30:56_
  2. 児童書のぐるり
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 児童文芸家協会主催の、第4回「童話塾in関西」が、11月に開催されます。

 みっちり児童文学を学び、がっつりヤル気を盛り上げて、たっぷり仲間と語らいましょう。
 11月1日(土)13;00~17;00、会場は京都の天性寺、ここは、ほんまのお寺さんです。
 畳の上にお座りしての、まさに寺子屋。
 第四回目の今年は、編集者さんのお話、
 そして風野潮さん、宮下恵茉さんというビッグな作家さんと書店員さんとのトークという、お
 もしろい切り口の会となります。

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 毎度思うのですが、なんで関西の作家さんたちって、こんなに熱いのでしょ? 
 熱くて、篤くて、厚いのです。
 実行委員の作家さんたちの団結力と企画力を芯に、
 参加者の「どんどん吸収せなソンやわー」「じゃかじゃか書かなあかんわー」という
 200%の意欲が雪だるま式にふくらむこと必至。
 その日、天性寺さんの墓所にお休になっておられる方々が、目をさますんやないでしょか?

 申し込みは7月31日までですが、先着50名ですからお早めに。
 児童文芸家協会のHPはこちら↓
  http://www.jidoubungei.jp/index.html

新刊出ました! 「子リスのカリンとキッコ」

  1. 2014/06/20(金) 12:12:45_
  2. 金亀からのお知らせ
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    6月21日発売です。
    「子リスのカリンとキッコ」佼成出版社刊。
    はやしますみさんに楽しい絵をつけていただき、リスたちがいよいよ街に出ます。
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     動物園育ちの四匹のニホンリスの子どもたちが、
     自分たちでも、あれれ?というまに始めてしまった冒険の旅。
     めざすは「世界一おいしい木の実のあるところ」。
     もちろん、街なかには危険がいっぱいです……。 

       
     この物語を執筆するにあたって、動物園育ちのリスたちにとっての幸せってなんだろう? と考えました。
     単純に、野生が幸せで、人間の飼育下が不幸とは決められない、と思ったのです。
     というのは、現代日本の動物園は、わたしもケージに入りたいくらい、行き届いた環境にあるからです。
     「行動展示」という動物たちの新しい見せ方が広まったこともあり、
     狭いところにしょんぼりと閉じ込めておくことは激減しています。
     反面、自然環境は悪化の一途をたどっています。
     したがって、動物園の使命として、希少動物などの「種の保存」と「環境教育」があるといいます。
     動物を見せるだけの施設ではないのですね。

    なにがほんとうの幸いか、それは動物たちの生態によることでしょう。
    そして、その動物個々の性格というものも、関係しているのでは? 
    それを知るには、ソロモンの指輪か聞き耳頭巾が必要でしょうけれど。

    そんなことを胸に置きながら書いた物語です。
    自前の「なんちゃって聞き耳頭巾」を装着して、リスたちのことばを聞き書きしてみました(笑) 


江戸時代はやっぱりおもしろい

  1. 2014/06/17(火) 14:38:26_
  2. 金亀のひとりごと
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  上野の科学博物館へ、特別展「医は仁術」を見にいきました。
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 会期終了間際でしたが、館内はわりとすいていて、ゆっくり観ることができました。
 展示内容は、江戸時代の医学と、現代の最先端医学が主でしたが、わたしの狙い目は江戸。

 江戸時代は、当時の世界の科学の最先端を進んでいた分野もあり、医学もそうとうなものだったはず。
なんといっても、世界初の全身麻酔による外科手術を成功させた医学者、華岡青洲を生んだ国ですからね。
 鎖国下の日本にあって、西洋からの希少な資料に学び蘭方医学を開いた先駆者の情熱には、心奪われます。
 古文書のような文献がたくさんあり、ものすごく熱心に読んでらっしゃる方もいました。

 江戸時代の珍しい展示物もたくさん。写真OKだったので、こんなの撮ってきました。
 木製の骨格標本。
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 こちらは、子宮外妊娠のモデル。精密です。
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 五臓六腑生き人形。江戸時代の人体模型ですね。
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ところがこれは医学用ではなくて、説明パネルによると、薬屋の看板や見世物に使ったといいます。
江戸の庶民が、「わーっ」「きゃーっ」「すげえ!」といいながらながめていたことでしょう。

 科学者たちの崇高な研鑽と、庶民の好奇心いっぱい、遊び心いっぱいのたくましさ。
その両方があるから、江戸時代はおもしろうございます!  

 さて、博物館見学の楽しみのひとつが、ミュージアムショップ。今回のおみやげはこれ。
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 コップのフチ子さんの骨格標本、「コップのフチボーン」。
同じポーズのフチ子さんを所有していなくて残念!

お尻のかわいそうな扱われ方

  1. 2014/06/13(金) 11:56:52_
  2. あんな本、こんな本、どんな本?
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先日、俳優の林隆三さんが亡くなりました。大好きな俳優さんでした。
一番わくわくしながら観ていたのは、NHK大河ドラマの「国盗り物語」中の、雑賀孫市役。番組が終わってさびしくて、原作の司馬遼太郎の「国盗り物語」、そして「尻啖え孫市」と、続けざまに読んだっけ。
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 当時高校生、歴女のハシリかハシクレかもしれません。どっちも孫市がすごく魅力的に描かれて、脳内はいっとき孫市姿の林隆三祭り状態。
 この「尻啖え」とは、敵方に向けてお尻を向けて、「やーいやーい、この尻でもくらっとけ」、みたいな罵り言葉のようです。
 お尻を見せるということで思い出したのは、古事記のなかに出てくる、「後手に賜え」という一節。これは、火遠理命(ほおりのみこと・山幸彦)が、火照理命(ほでりのみこと・海幸彦)に、借りていた釣り針を返すときに、お尻を見せて後ろ手に渡した、ということだそうです(芝田勝茂さんの「古事記講座」での受け売りです)51aCXMgPO0L__SL500_AA300_.jpg

 この後ろ手、という行為は実は呪いなんですって。海神に入れ知恵されて、イジワルな海幸彦へ復讐したのですね。その結果、海幸彦は凋落の一途をたどってしまった。
 お尻っていうのはこんな古代から、どうも分が悪いですね。せめてウオッシュレットで大事にしてあげましょうか。
(画像はアマゾンさんからお借りしました)

犬たちが育む心

  1. 2014/06/08(日) 21:02:46_
  2. 新しいインクの匂い
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「犬たちからのプレゼント ショコラがくれた“はじめの一歩"」

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 ノンフィクション物語作家として、もう何冊も出版されている高橋うららさんの新刊(集英社みらい文庫)です。
 今回は、「犬を飼う」ことにまつわる創作物語。6話の短編連作です。

 主人公たちは四年生。犬との関わりによって、勇気をもらったり、
命と愛情をはぐくむことの重さと素晴らしさを感じ取ったり、チームワークを学んだりしていきます。
 
 それぞれのお話がとても自然で、リアル。
 それもそのはず、高橋さんは犬の保護団体を扱ったノンフィクションを書かれています。
 今回も綿密な取材に裏づけされているのでしょう。

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 作者の、犬たちへの暖かな目線はもちろんのこと、少女・少年たちの生の思いが胸を打ちます。
彼女たちは決して「いい子」たちばかりではありません。友達を傷つけたり、犬にひどい仕打ちをしてしまうことも。
けれども、それらを悔やんで、その傷を糧として育っていく心の軌跡のすがすがしいこと。
 犬の写真も愛らしく、抱きしめたくなるような本です。
 シリーズ化になるといいですね!
 


渋谷の狸に負けずに、童話展を楽しみました

  1. 2014/06/07(土) 22:42:57_
  2. 児童書のぐるり
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土砂降りのなか、渋谷のギャラリーに、「書きおろし童話展」を見にいきました。
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出品された作品から、熱意がきゅんきゅん伝わってきます。
みなさん、自分の作品を大切に完成させ、画家さんとともに作り上げ、
晴れのこの日を迎えたのですね。
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「わたしを見て! わたしを読んで!」「わたしと遊んで!」
童話たちの心の声が、雨音よりも強く都心のギャラリーに満ちていました。

 いい出会いがありますように! 
 ……な~んて、おまえさんもがんばらないとだめじゃん!(と自分にダメ出し)

それにしても、方向音痴度MAXの埼玉おばさんにとって、渋谷駅は難関中の難関。
行きはJRで、まだなんとか迷わず行けたのですが(でも駅のインフォメーションのお姉さんに道順聞いた)、
帰りに地下鉄副都心線に乗ろうとしたら、同じような都会の景色、同じような人波のなかを
何度もぐるぐるさまよっていたような……。狸のしわざか? 
そういえば数十年昔の「渋谷村」の時代には、狐狸もたくさんおったよのう。



かいぞくゴックン  日本語ゴックン

  1. 2014/06/05(木) 16:42:50_
  2. あんな本、こんな本、どんな本?
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「かいぞくゴックン」
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 ジョニー・ダドル作・絵の絵本です。 訳はおなじみのアーサー・ビナードさん。
 絵がすごい! 迫力バシバシ。なのに軽妙。新しいタッチの絵なのにどこかなつかしい空気。デカイ話なのに、細かい仕掛けが! いろいろな楽しみ方のできる絵本です。
 ある夜、海賊たちに届いた手紙。「いまのせいかつに まんぞくしていますか?」その手紙に導かれ、宝探しへ海に乗り出した海賊たち。その運命は?(あらら、ゴックン――?)
 読み語りをするなら、ある程度大きい子、中学年くらいからのほうが、おもしろさが伝わるでしょう。けれども、細かなトラップを楽しむなら、自分で広げてじっくりと。
 
 この絵本については、アーサー・ビナードさんご自身の講演会で触れられていました。「かいぞくゴックン」になぞらえて、「児童文学ゴックン!」というタイトルの講演です。つい先日の、「国際子ども図書館を考える全国連絡会」の総会後の記念講演会でした。
 軽妙で楽しい講演ですが、実は非常にこわーいお話。まさに、この絵本のように……。
 
 ビナードさんは語ります。
 かつて日本語は、田畑や里山で、海辺で、暮らしのなかから生まれてきたものでした。今はどうだろう? 日本語は劣化しているのではないか? 権力者が造った都合のいい「広告」となっているのではないか? とんでもない狙いを、きれいな箱に入れさらにきれいなラッピングをして、正体がよくわからないようにして、とってもイイモノですよ、と広告している……。
 このまま行くところまで行ったら、もっと大きな何かに飲み込まれ、「日本語ゴックン!」「文学ゴックン!」かもしれません。ですから今、「日本語を存続させること」、これが文学者の最大の使命なんじゃないですか――?

 ビナードさんは、宮沢賢治の「雨ニモ負ケズ」の英訳絵本も出版してらして、それについてこう語りました。
「雨ニモ負ケズ」は、学校の先生などは、「質素な暮らしをして、自分を捨てて人の役に立て」という解釈をしがち。子どもたちに聞くと、「ソウイウモノニ ワタシハナリタクナイ」。
違うんです! 「一日に玄米四合と味噌と少しの野菜を食べ」、実はこの食事は、すごい量。四合の米を、しかも玄米を現代人、食べられません! 有機米だし、有機丸大豆の手作り味噌だし、「少しの野菜」といっても、おそらく今のわれわれがサラダで食べる野菜の何倍もあるでしょう。「萱葺きの小屋」? 茅葺というのはそんなに小さい家ではありません。けっこう大きな家。決して貧乏ではないんです。しかも、茅を葺くにしても田んぼ作業にしても、一人でやることではない。村のなかで共同でやることです。

 なるほど! 目からウロコでした。自然の恵みをたっぷり享受した豊かな生活をして、村の共同体のなかで調和のある人間関係を築いたうえでの、「ほめられもせず苦にもされず」だったのですね。
特別な「聖人」ではなく、わたしの父母の村にもいたかもしれない日本人の姿が浮かび上がってきます。これなら「ソウイウモノニ ワタシハナリタイ」、わかります! 
 表面をなぞっただけでは伝わらない真実。五感を覚醒させなくちゃ。ゴックンされないようにね。


ハラハラ にっこりの絵本です

  1. 2014/06/02(月) 15:45:11_
  2. 新しいインクの匂い
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埼玉が亜熱帯になる季節到来。
ここ数日の暑さといったら、雪女に会いたいくらい……と思っていたら、
ほんとうにやってきました、おばけたち。
「カババスえん おばけとえんそく」

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「カババスえん」は、幼稚園バスではなくて、バスが幼稚園。だから、毎日が遠足みたい。
今日は、とんでもやまのてっぺんへ。すると、あたりが急に暗くなり、おばけたちがあらわれて――。
 絵本からヤングアダルト作品まで、幅広く活躍中の光丘真理さんの新しい絵本です。
絵は、これまた絵本からノンフィクションまで、お話も絵も手がける山本省三さん。
 

 お二人にかかると、こんな楽しい幼稚園の、こんな楽しいおばけそうどうとなりました。
 ああ~~、カババスに乗ってみたいなあ。




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プロフィール

金G亀美

Author:金G亀美
かなじ・なおみ 児童書作家 埼玉県在住。
主な著書に『さらば、猫の手』(岩崎書店)『マタギに育てられたクマ』(佼成出版社)『ミクロ家出の夜に』(国土社)『花粉症のない未来のために』『子リスのカリンとキッコ』(佼成出版社)『知里幸恵物語』(PHP研究所)『私が今日も、泳ぐ理由 パラスイマー一ノ瀬メイ』(学研プラス)など。
日本児童文芸家協会会員 
童話サークル「かざぐるま」会員
よみうりカルチャー・大宮教室
「童話を書いて楽しもう」講師
イラスト:なかむらしんいちろう

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