金亀苑 金治直美ブログ

児童書を追いかける日々

お雛さま、ごめんね

  1. 2017/02/26(日) 16:34:34_
  2. あんな本、こんな本、どんな本?
  3. _ tb:0
  4. _ comment:0
雛祭りが近い。
女の子のいない我が家でも、お雛さまを飾った。
亡き母から、贈られたものだ。
もう30年近く前だろうか、母は当時はやっていた木目込み人形製作を習い、
何体か作っていた。そのなかの一つだ。

DSC_0904.jpg
(写真、へたやなー。本物はもっとかわいいです)

わたしが子どものころ実家にあった雛人形は、
とてもとても、痛かった。
ガラスのケースに入った小さな小さな親王飾りと三人官女のみ、
いや、それはいいのだ。小さくても、ささやかでも(というか、小さいほうが好き)。
でも、このお雛さまたちは、子どもの目にも安物ということがバレバレだった。
顔も髪も衣裳までも、絵具をべったりと塗りこんだものだった。
おそらく、乏しい家計をやりくりして買ったものなのだろう。
母は、この小さなケースだけでは寂しいからと、
わたしたち姉妹のぬいぐるみも並べて飾った。
うす汚れたぬいぐるみに囲まれたお雛さまは、よけいに痛々しかった。

わたしたちが喜ばないのを、母は察したのか、
小学校3年生くらいのころには、もう飾られることはなかった。

そんなこともあって、母は木目込み人形製作を習ったのかもしれない。

実家はすでにない。
20年ほど前、家を売り渡すとき、引っ越しを手伝った。
あのお雛さまが出てきたら、どうしようかとどきどきしていた。
処分するしかないが、供養のためにお寺や神社に持っていく時間はない。
だが、わたしが目を泳がせているうちに、
当のお雛さまのガラスケースは不要品の山のどこかに紛れたらしい。
目にすることはなかった。

あの貧弱なお雛さまたちの末路が、今も心に淀んでいる。
ごめんね、愛してあげられなくて。

これはわたしが数年前に買ったお雛さま。ケースの大きさ2センチ。
手前は、ゼムクリップ。

         DSC_0896.jpg

お雛さまの本といえば、これ。
『もりのひなまつり』こいでやすこ 作 福音館書店 2000年
             51MDA0E1VKL__AC_US218_.jpg
 のねずみたちのひなまつりに招かれたおひなさまたちが、
森へでかけ、楽しいひとときを過ごしますが、帰り道で雪がふってきて――。
お雛さまたちの美しさに、ためいき。
読み語りのとき、騒いでいる男の子たちも、見とれるほどです。

『ひいな』いとうみく 作 小学館 2017年

          51FUwpb5E4L__AC_US218_.jpg

由良は祖父母の町で過ごすうちに、お雛さまの声が聞こえることに気づきます。
母と祖父の不仲の原因を知った由良は、
お雛さまを通じて家族の修復を願いますが――。
お雛さまたちのユーモラスな会話も魅力。
いつの時代も、お雛さまは女の子の味方です。

それにしても、いとうみくさんって、いったいどこまで進んでいかれるのでしょうね。
スポンサーサイト

いいぞ、毎小!

  1. 2017/01/29(日) 14:48:52_
  2. あんな本、こんな本、どんな本?
  3. _ tb:0
  4. _ comment:0
毎日小学生新聞がおもしろい。

一面には、政治の話もよく登場する。
例えば、1月26日の一面は、
「教えて!池上さん」という、長めの記事。
池上彰さんが、トランプ氏の大統領就任演説について、
鋭いメスを入れている。

1月28日では、
「世論調査って何だ 質問に隠されたわなを見逃すな」というタイトルで、
世論調査が必ずしも国民の意見を反映するものではない、と説いている。

DSC_0837 (2)
   
集団的自衛権が国会で論議されているときも、
鋭い批判記事を掲載していたな。
一般紙の毎日新聞よりもよっぽどキチンと書いてある、と感じたのはわたしだけ?
小学生諸君、しっかり読んでね。
権力に都合のいい方向に流される大人に、ならないために。

連載の物語もおもしろい。
現在は、いとうみくさんの「唐木田さんち物語」。
大家族の泣き笑いをさすがの筆致で暖かく描いている。
その前は、間部香代ちゃんの「よろしくパンダ!」
広告業界という、筆者ならではの世界を
からっとユーモラスに描いていた。
この連載紙面からは、
長井理佳ちゃんの『まよいねこポッカリをさがして』(アリス館)

       無題

光丘真理ちゃんの『ようこそ、ペンションアニモーへ』(汐文社)などなど、

        51U3NzdYxYL__SX342_BO1,204,203,200_


たくさんの物語が単行本化されている。
連載から単行本へという流れ、
雑誌などの媒体の少ない児童書界では、貴重なんですわ。

いいぞ、毎日小学生新聞!


クリスマス&年末に読み返したくなって

  1. 2016/12/24(土) 17:29:07_
  2. あんな本、こんな本、どんな本?
  3. _ tb:0
  4. _ comment:0
クリスマスで心ウキウキというタイプではありません(ハイ、ひねくれもんです)
でも,どことなく厳かな気分となり、
フォーレのレクイエムやグレゴリオ聖歌を聞きながら、
いい物語に浸りたくなります。

今年読んだ本のなかから、この時期にしっくりくるものを
選んでみました。内容はリスマスとは関係ないですがね。 

『4年2組がやってきた』2016年
 野村一秋・作 ささきみお・絵 くもん出版

512Xclm1TwL__SX344_BO1,204,203,200__convert_20161224172350
       
五年生のマーくんは、脳性まひ。
しゃべれず、歩けず、手もうまく動かせません。
学校では、ただ一人の「にじ組」です。
その「にじ組」に、4年2組が「交流」しにくることになり・・・。

物語は、マーくんの一人称の語りで進みます。
読むうちに、マーくんが見聞きし感じている世界が、
すごく広く深いことに驚かされます。
しゃべれないから、動けないから、なにもできず
なにも考えていない? いえいえ、とんでもない!
そう、彼の頭のなかはいつもいろいろな思いでいっぱい。
それを表現できないだけ。

だいぶ前のこと。知り合いの視覚障がい者の方が、
道ばたで立ち止まって、なにか困っているようすでした。
聞けば、本屋さんに行く途中なのですが、場所がわからなくなったとのこと。
「あ、通り過ぎています。引き返しましょう」
すぐ近くの本屋さんに案内して、わたしは大失態。
レジの人に「こちらの方をご案内しましたので、よろしくお願いします」と
声をかけてしまったのです。
そんな余計なこと、いわなくてよかったのです。
必要なことは、ご本人がちゃんとお店の方に伝えるでしょうから。
なんだか、「保護者」のような気になっていたのでしょうね。
その自分の浅はかさを、この本を読んで、ちくりと思い出しました。

『ナゲキバト』2006年
ラリー・バークダル・作 片岡しのぶ・訳 あすなろ書房

       無題

この本は、すでに古典かもしれません。
9歳のとき両親を亡くし、祖父にひきとられたハニバル。
ある日、ナゲキバトを遊び心で撃ってしまい・・・。
祖父との生活により、ハニバルは静かに深く、
生きる意味を感じとっていきます。

背景と思っていた逸話が、
実は物語の背骨であったという構造に驚かされます。
善とは? 悪とは? 悪に染まってしまった人生を、
昇華させるには?
それらが、やさしくしみじみとした文章に、
美しい紋様のように織り込まれています。

『ひまなこなべ』2016年 萱野茂・文 どいかや・絵 あすなろ書房

       無題1

アイヌの昔話です。
アイヌには神さまが主人公の物語がたくさんありますが、
伝え方が難しいように思います。
神さまの一人称で語られているので、
初めてふれる人は、ちょっと入りづらいのです。
でもこの本ならだいじょうぶ! 
クマの神さまに導かれ、
万物に神が宿るというアイヌの世界に
無理なく入ることができます。
この不思議なタイトルも、最後に意味がわかるしくみです。
躍動感ある、愛らしくもりりしい絵が魅力的。何度見てもうっとりです。

今年も残すところあと一週間。
来年もどうぞよろしくお願いいたします。


編集者さんと書き手のビミョーな関係に捧げる映画と本

  1. 2016/11/13(日) 10:58:47_
  2. あんな本、こんな本、どんな本?
  3. _ tb:0
  4. _ comment:0
時に師であり、時に生殺与奪の権を持ち、
けれどもかけがえのない同伴者である編集者さん。
どれだけ書き手がふりまわしても親身に支えてくださる、
ありがた~いお人、編集者さん。

作品について、ここをああして、こっちをこうして、
ここを刈り込んで、そこをふくらまして、と指示をいただき、
ひいひい泣きながら書き直しているときは、
「編集者さんてなんていい仕事!」とうらめしくなり、
でもこちらの作業が終わって作品をゆだねたあと、
編集者さんが画家さんやカメラマンさんや取材対象者さんや
印刷会社さんや営業部門さんと打ち合わせし折衝し、
本の体裁を整え発売にこぎつけてくださるわけで、
わたしは絶対こんな仕事はできんわーと拝んでしまいます。

いつも黒子、裏方に徹してくださる編集者さんですが、
主役を張っている映画があります。大都市ではまだ上映しているかな?

「ベストセラー 編集者パーキンズに捧ぐ」
1920年代に実在した編集者パーキンズと、
37歳で早逝した小説家トマス・ウルフとの曲折のある友情と人生を、
淡々と描いています。
パーキンズは、「老人と海」のヘミングウェイや
「グレートギャツビー」のフィッツジェラルドを見出して
世界的な作家に育てあげた名編集者。
ある日彼のもとに、無名の書き手、トマス・ウルフの
げっそりするほど長大な原稿が持ち込まれ・・・。
天才作家の苦しみと喜び、名編集者の迷いと悩み、
作品に対する二人の熱い思い。いろいろと感じることの多い映画でした。

さて、いっぷう変わった本をご紹介。
「まことに残念ですが・・・」アンドレ・バーナード編集、徳間書店

          41Y1TDEHJJL__SX353_BO1,204,203,200__convert_20161113105642


編集者さんに教えてもらった本です。
持ち込み原稿へのお断り状を、160も集めたもの。
断られた作家さんと、蹴られた作品名が、すごい!
パール・バック(『大地』)やギュンダー・グラス(『ブリキの太鼓』)、
メルヴィル(『白鯨』)などなど。『アンネの日記』も、実は断られていたのだよ!
帯にあるとおり、「み~んな断られて大きくなった!」
H・G・ウエルズの『タイム・マシン』なんて、将来性がない、などと言われているぞ!

こんな世界的作家でもボツになったことがあるんだから・・・。
以下省略。

さて、編集者といえば、「バクマン。」(原作・大場つぐみ、作画・小畑健、集英社)や、
TVドラマで作家仲間の紅涙を誘った
「重版出来!」(作・松田 奈緒子 小学館)も面白かったですね~。

510mjmUJzLL__SY346_.jpg

無題


「おれがあいつで」の呪縛

  1. 2016/10/09(日) 17:33:23_
  2. あんな本、こんな本、どんな本?
  3. _ tb:0
  4. _ comment:0
映画「君の名は。」が大ヒット。
ぜんぜん映画通ではないカナジですが、観ましたよ。
うん、ストーリーはおもしろかった! 映像も素晴らしかった。
でも、胸キュンというほどではなく、涙ポロリもナシ。
・・・やばい。枯れ果てているのか、カナジ?

それも、もちろんあるだろう(簡単にモチロンと言い切るな、自分!)
高校生男女の心が入れ替わり、
時空を超えてのすれ違い・・・という流れのなか、
恋愛モードに自分の意識が切り替わらなかったのは確かだ。

だって、男女の心が入れ替わるってことは、
自分の体を、10代のみずみずしい体を、
知らない異性が使っているということ。
すごくたいへんでめちゃくちゃ恥ずかしくないか?

そっちに意識がいってしまうのには、わけがある。
映画「転校生」の原作として知られる
「おれがあいつで あいつがおれで」(山中恒・著)を
中学生のころに、リアルタイムに雑誌連載で読んだからだ。
 
自分の体の変化や異性への意識、大人社会への欺瞞などなどが満杯で
バランスを失う危うい時期、この物語は強烈だった。
作者のペンは容赦なく、
男子にかくしておきたい女子の体の悩みなどを、
入れ替わった男子に経験させている。
知りたくもない小汚い?男子の体のことを、女子に体験させている。
それが、当時のわたしには生々しくエロすぎて、げっそりだった。
その後、映画「転校生」を観て、なんて清々しくユーモラスに切なく
映像化したのだろうと、びっくりした。

「君の名は。」は文句なしに美しい。
でも、やっぱり中学生だったあのころのわたしの
男女入れ替わりへのげっそり感と羞恥心を思い出してしまった。
山中恒先生、おそるべし。それだけの強さのある作品だったのだ。

こんな思いをした男女って、「同志」だろう。絆も生まれるだろう。
だからこそ恋心が芽生える、そう考えればいいのかな。
しかし、そうやって自分を納得させる時点で、
すでに物語の抒情性から閉め出されているなあ。
無念。

「おれがあいつで あいつがおれで」山中恒・作 杉基イクラ・絵 角川つばさ文庫 

   無題

ロングセラーとなっています。

入れ替わりといれば、こんな絵本も。こちらは、犬と男の子が・・・。
『ジローとぼく』大島妙子作・絵 偕成社

               51X26SPTRSL__SX258_BO1,204,203,200_

  楽しく、ホロリときます。



NEW ENTRY  | BLOG TOP |  OLD ENTRY>>


プロフィール

金G亀美

Author:金G亀美
かなじ・なおみ 児童書作家 埼玉県在住。
主な著書に『さらば、猫の手』(岩崎書店)『マタギに育てられたクマ』(佼成出版社)『ミクロ家出の夜に』(国土社)『花粉症のない未来のために』『子リスのカリンとキッコ』(佼成出版社)『知里幸恵物語』(PHP研究所)『私が今日も、泳ぐ理由 パラスイマー一ノ瀬メイ』(学研プラス)など。
日本児童文芸家協会会員 
童話サークル「かざぐるま」会員
よみうりカルチャー・大宮教室
「童話を書いて楽しもう」講師
イラスト:なかむらしんいちろう

« 2017 02  »
SUN MON TUE WED THU FRI SAT
- - - 1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 - - - -

検索フォーム

ブロとも申請フォーム

QRコード

QR