FC2ブログ

金亀苑 金治直美ブログ

児童書を追いかける日々

ファンタジー欠乏症につける薬

  1. 2021/05/09(日) 15:55:39_
  2. あんな本、こんな本、どんな本?
  3. _ tb:0
  4. _ comment:0
「ファンタジー欠乏症」にみまわれた。
年に数回出てくる症状で、
とにかく不思議に満ちた物語が読みたくて、
うずうずしてくるというやっかいな病だ。
いそいで図書館で本を見つくろった。

『わたしといろんなねこ』
  おくはらゆめ 作・絵 あかね書房

  わたしといろんなねこ (1)

あやは、ねこ好きの小学3年生。
仲よしのアッキーとはケンカをし、
知りあったばかりのさくらちゃんとは
なかなか仲良くなれません。
そんなある日、家へ帰ると
巨大なねこや小さな小さなねこが現れ……。

おくはらゆめさんは絵本作家さん、
はじめての書き下ろし童話だそう。
なんといっても、あやのキャラがいい。
よけなことをしゃべって友だちを怒らせたㇼ、
うれしいときに「ゲッ」という声を出すくせのせいで
友だちにドン引きされたり・・・。
こんな子、いるよねえ。
 
『リンドキストの箱舟』
  アン・ハラム 作 丹治陽子 絵 文藝春秋 

わたしといろんなねこ (2)

舞台は、異常気象で
氷点下の凍土となった近未来の地球。
動物のほとんどが乱獲により
絶滅させられている。
その極寒の荒野を、
少女スローはたった一人で旅をする。
科学者であった母から引き継いだ、
野生動物の命の素「リンドキスト」をふところに。
スローの危機を幾度となく救ってくれるのは、
成長したリンドキストたちだった。

まあ、なんという強いファンタジーだろう。
とにかく、全編寒くて空腹で、一人ぼっち。
そして、主人公は誇り高く、
悪事にも手をそめ、うそもつき、したたかだ。
その存在感は圧倒的で、最後まで目が離せない。

ほんわかしながらも勇気の出る幼年童話と、
息はつけず全然ほんわかしない
ヤングアダルト物語。
どちらの主人公もかわいくて元気いぱいで、
という「いい子」像からは、少し離れている。
そこがいい。わたしは子どものころから、
「いい子物語」が大の苦手だったから!

コロナ禍中にあって、
物語で上質のトリップができ、
今回のファンタジー欠乏症は
すっかりおさまったのでありました。
 

スポンサーサイト




文章から響く音楽

  1. 2020/12/20(日) 16:13:08_
  2. あんな本、こんな本、どんな本?
  3. _ tb:0
  4. _ comment:0
クリスマスが近づくと、キリスト教信者ではないけれど、
レクイエムやグレゴリオ聖歌が聞きたくなる。
レクイエムの中で一番好きなのはフォーレ作曲のもの。
荒地に迷い込んで、神の国をすぐそばに感じるような、
ふしぎな世界に連れて行ってくれる。
「キリエ」や「ピエ・イエス」いいなあ!

音楽を、文章で表現するのは、当然ながら難しい。
楽器の音色や、アンサンブルやオーケストラの和音を、文
章ではどう表すかは、作者の腕のみせどころ。
マンガだったら、楽器や演奏者の姿をうまく描けば、
音色となって聞こえてくることもあるのだけど。
(やっぱり『のだめカンタービレ』の画力はすごい。
交響曲が誌面から立ち上がってくる。
いや、画力の問題だけではなく、音楽への理解力かな)

今年読んだ、音楽が聞こえてきた物語をご紹介。
『その声は、長い旅をした』中澤晶子・著
 ささめやゆき・絵 国土社

          51UxMA0Z2tL__SX339_BO1,204,203,200_

少年合唱団のメンバーである開、
衝撃的な声の持ち主、新入団員・翔平。
この二人の耳に、謎の美声が聞こえてくる。
その声の持ち主は、1500年代後半に、「天正少年使節」として
命がけで海を渡ったコタロウという少年だった。
音楽の力は時代を越える。そのことを、
美しく強く、あこがれをいざなって感じさせてくれる物語。
読んでいる間、わたしはたしかに天正時代を生きることができた。


『アドリブ』佐藤まどか・著 

 51kD7D7ke_L__SX336_BO1,204,203,200_

イタリアの小さな町に暮らす少年、ユージは
フルートと出会い、音楽院に入学。
しかし、 当然ながらクラシック音楽界はきびしく、
プロになれるのはひと握り。
音楽とどうむきあったらいいのか、見失いそうになるユージだったが・・・。
著者はイタリア在住の作家さん。そのせいか、フルートの音色はもちろん、
トスカーナの街並みやざわめきまで感じ取れる一冊。

やっぱり音楽はいいなあ! 
クラシックファンのわたしは、どっぷり浸ることができた。
気持ちよく「誌上音楽」に酔ったあとは、さあ、お掃除だ、年賀状書きだ。
こういうときのBGMは、へへ、「ジュリー」です。




75年前を振り返る10日間

  1. 2020/08/09(日) 12:58:49_
  2. あんな本、こんな本、どんな本?
  3. _ tb:0
  4. _ comment:0
ここで何度も書いているが、わたしがこの世で一番怖いのは、戦争だ。
戦争には、人間が考えつくすべての悪が詰まっている。

今年も、「ヒロシマ」・「ナガサキ」の日がやってきた。
週末は終戦記念日がやってくる。
今の日本、コロナ禍に水害、そして猛暑と、ヒトは痛めつけられっぱなしだけれど、
75年前を振り返ることは必要だろう。

このツイートがものすごくリアル。見た方も多いだろう。
1945「ひろしまタイムライン」https://www.nhk.or.jp/hiroshima/hibaku75/timeline/index.html
もし75年前にSNSがあったら? ということで、
中学一年生のシュン、26歳の主婦で妊娠中のヤスコ、新聞記者のイチローが、
それぞれの言葉で戦争のこと暮らしのこと、
そして「ヒロシマ」の惨状をTwitterで発信していく、という企画だ。
原爆投下直後の広島のようすなど、現代の日付と時刻に合わせてツイートされるので、
その臨場感に、過呼吸を起こしそうなほど。
やはり、13歳のシュンくんのツイートに一番、生の声を感じたなあ。
この企画を思いつき始められたNHK広島放送局さん、
ありがとうございます! 

こちらは、コミック。
『ペリリュー ─楽園のゲルニカ─』武田一義・平塚柾緒(太平洋戦争研究会) 著 白泉社

A1QjVkOieoL__AC_UL320_ 小

昭和19年、夏。太平洋の楽園、パラオのペリリュー島は、
日米合わせて5万人の兵士が殺し合う戦場と化していた。
漫画家志望の兵士、田丸が見た戦争の狂気とは――。
リアルな戦場の光景と一兵士の心情が丁寧に綴られ、
いわゆる性の処理なども隠すことなく描かれ、むしろ涙をさそう。
人物がギャグタッチなのが救いだ。写実的な絵柄だったら、読み続けるのが辛くなってしまうかも。

こちらは、絵本。
『キンコンカンせんそう』ジャンニ・ロダーリ 著 ペフ 絵 アーサー・ビナード 訳 講談社 

91DD3J5tmqL__AC_UL320_小

小学校高学年のクラスで読み語りをするときに、何回か使わせていただいた。
二つの国の間で長く続く戦争。どちらの国の将軍も、
教会の鐘まで取り上げて、兵器にしてしまう。
戦場に運び込まれた大砲は、驚いたことに・・・。

日本でも、太平洋戦争で金属の「供出」があったなあ。
鐘は戦争には似合わない。鐘自身も苦しかっただろうね。

だれでも、戦争はNOだと思っているのに、
なのになのに、自衛隊の敵基地攻撃能力について取沙汰されているなんて。
戦争の導火線に火をつける役目を、日本が負うべきというのか。

がんばれ、醤油やさん!

  1. 2020/08/02(日) 14:58:19_
  2. あんな本、こんな本、どんな本?
  3. _ tb:0
  4. _ comment:0
コロナ禍が再び迫ってきました。
もう五か月も籠っているのに、まだまだお籠り生活が続くのかな。
せめて、近場の人があんまりいないところで、
ちょっとおもしろそうなところに行ってみよう、ということで出かけたのは、
車で15分くらいの「金笛しょうゆパーク」。
「笛木醤油」という寛政元年創業の醤油蔵さんです。

DSC_1473 小
 
なんと創業230年! 
江戸から離れたこの地で、舟で江戸へ出荷していたのでしょうね。

レストランや売店があり、醤油工場の見学もできます。
始めて見る仕込み蔵、超でっかい木桶がずらり。といっても、
木桶を床に置くのではなく、木桶の上部に床を張っています。

DSC_1481 小

昔は木桶の間に板を渡して歩いたそうですが、転落事故があるので、
この形にしたそうです。
こちらは、ミニチュアの仕込み蔵。へー、こんなふうになっているのね。

 DSC_1485小

木桶の中には、ドブドブの濃―い液体。ほとんど沼です。
このなかに、麹金、酵母菌、乳酸菌など、
何億という菌ちゃんたちが生きて呼吸をしています。
職人さんたちは、定期的にこの桶の中を長い竿でかきまぜ、
菌ちゃんたちに空気を送っているそう。
つまり、現在でも伝統的な手作業ということ。

左右の桶で、発酵の度合いが違うのがわかります。

DSC_1483 小

左のほうがどろっとしている、
つまり発酵が進んで濃い「もろみ」となっているのでしょう。
こうして一年から二年かけて発酵・熟成させ、
「絞り」の行程に入ります。
繊維質などの固形成分を絞って、醤油の原液を集めるのです。
それもゆっくりゆっくり、三日かかりだそう。
大手の醤油メーカーの製造法だと、3か月くらいで製品になるとのこと。
味に差が出て当たりまえですなあ。

蔵の外に、発酵臭のある物体が積まれていました。

DSC_1479.jpg

これ、醤油の搾りかすをさらに圧縮したものですって。
大豆と小麦が主成分なので、家畜のエサ用にとってあるのですが、
塩分が強く残っているため、エサに混ぜるのはほんのちょっとだけですって。

そして、伝統的な醤油作りを支えているのは、杉材の木桶。

 DSC_1478.jpg

今や、杉があっても桶職人が全国にほんの数人しかいないという時代。
なんとか、木桶作りの匠、醤油作りの匠が途絶えませんように!

レストランでは、うどんや天丼などの醤油を生かした料理がありました。
うどん、うまい! 
なぜか、バウムクーヘンを製造していて、
醤油入りの「醤油バウム」なんていうのがありました。うまい!

DSC_1492 小
 
醤油ソフトもありますよ。うまい!

ほぼ毎日お世話になる醤油だもの、
製造しているところを見ておくのって、いいよね。

わたしは発酵食品が好きなもんで、
たくさんの麹菌に囲まれると、コロナに勝てそうな気がしちゃいます。
それってあながち間違いではないかも。
有用な菌を取り込んで腸内の菌のバランスを保てば、
免疫力もアップしそう!

こちらは、ご存知『もやしもん』石川雅之・著 講談社

小

発酵の世界を描いたコミックです。
こちらは、『もやしもん』のわたしのコレクションの菌たち。
キャラのデザイン力、すごい!

DSC_1500.jpg
 
まんなかの黄色いのが、A・オリゼー(麹菌)。

こちらは一般書、
『奇跡の醤(きせきのひしお)  
   陸前高田の老舗醤油蔵 八木澤商店再生の物語』 竹内早希子・著 祥伝社

 小

東日本大震災の津波で、一八〇七年から続く老舗醤油蔵八木澤商店は、
土蔵や杉桶、そして醤油屋の命ともいえる「もろみ」を津波で失いますが……。
再生に欠ける思いに胸が熱くなります。
この作品、取材がほんとうに緻密で、何度も何度も現地に通い、
この会社の方々と心を通わせていったことが、よーく伝わってきます。
醤油と同じで、地味ながら滋味あふれるノンフィクションです。



コロナ禍の日々に  おはなし会は三密だけど・・・

  1. 2020/06/02(火) 16:54:51_
  2. あんな本、こんな本、どんな本?
  3. _ tb:0
  4. _ comment:0
昨日から各地で学校が再開された。
長い長いお休みだった子どもたちは、
どんな思いで学校に向ったのだろう。
再開といっても、時間差登校だったり
休み時間でも友だちとおしゃべりしちゃいけなかったり、
う~~ん、楽しくなさそう。
学校というところは、勉強よりも
友だち付き合いを、人間関係のややこしさとおもしろさを、
学ぶ場と思うのだけど。
友情も、初恋も、お預けになってしまうのかな。

そんな心配と比べると、ささやかすぎて申し訳ないのだが。
おはなし会のこと。
わたしが30年ほど細々と続けている絵本の読み語りボランティアも、
もう三か月も中止となったままだ。
この先、おはなし会が復活する日か来るのかなあ。

わたしが通っているのは、主に市内小学校の放課後児童クラブと、図書館だ。
仲間たちは、保育園や小学校の朝の読書タイム、
保健センターの乳幼児健診での絵本タイムなどにも出向いている。
ちっちゃな子たちが何人も、体をくっつけあうようにして座り、
その前でわたしたちが語り、読む。
声が散らないように、窓はしめておくことが多い。
・・・三密になってしまうんだよねえ。

慎重に選んだ絵本が、子どもたちにジャストフィットすると、
彼らの瞳が輝き、満足そうな声がもれる。
それだけをご褒美にがんばってきたのだけどな。

★冬から春にかけて、読みたかった絵本

『いってかえって星から星へ』佐藤さとる・作 田中清代・絵 ビリケン出版

2 (1)

宇宙船での地球への旅。
見開きが最後に来ると、絵本を上下反対に持ち変える、
するとページをもどって《帰りの旅》になるという、おもしろい企画の絵本。
とにかく宇宙船や地球の絵が美しくてわくわく!  

『なわとびしましょ!』長谷川義史・作 復刊ドットコム

 3.jpg

 大縄跳びをしている気分そのままにリズミカルに読むと、
子どもたちと一つになれる感がたまらない!

『月へミルクをとりにいったねこ』
アルフレッド・スメ−ドベルイ・作 たるいしまこ・絵 福音館書店

 2 (2)

 ネコのかあさんの一所懸命ぶりにホロリ、でも笑っちゃう。

★春から初夏に読みたかった絵本

『ルラルさんのにわ』いとうひろし・作 ポプラ社

   6.jpg

 最後の見開きで、子どもたちみんなオーッという声。
晴れた五月に読むと最高にキモチいい。
『ニニロのおとしもの』いとうひろし・作 教育画劇

 5 (1)

 マヌケなトカゲのニニロに、子どもたちは爆笑しながらユルーい気分に。

『ぎょうれつのできるケーキやさん』ふくざわゆみこ・作 教育画劇

    5 (2)

 おいしそうなスイーツが画面いっぱいに。庭でケーキを食べると、いいことあるよ!

これらは自宅の、そして図書館の書架におしこめられたまま、季節が変っていく。
絵本たちもさびしがっていることだろう。

どうか、幼い子たちが絵本を読んでもらう楽しみを忘れませんように。

そして、子どもたちが「よその人は汚い」と完全にすり込まれる前に、
このコロナ禍が収束してくれますように。




NEW ENTRY  | BLOG TOP |  OLD ENTRY>>


プロフィール

金G亀美

Author:金G亀美
イラスト:大塩七華
かなじ・なおみ 児童書作家 埼玉県在住。
主な著書に『さらば、猫の手』(岩崎書店)
『マタギに育てられたクマ』(佼成出版社)
『ミクロ家出の夜に』(国土社)
『花粉症のない未来のために』
『子リスのカリンとキッコ』(佼成出版社)
『知里幸恵物語』(PHP研究所)
『私が今日も、泳ぐ理由 パラスイマー一ノ瀬メイ』
(学研プラス)
『となりの猫又ジュリ』(国土社)
『クレオパトラ』『マイヤ・プリセツカヤ』(学研プラス)
『読む喜びをすべての人に 
日本点字図書館を創った本間一夫』
(佼成出版社)など。
日本児童文芸家協会会員 
童話サークル「かざぐるま」会員

« 2021 06  »
SUN MON TUE WED THU FRI SAT
- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 - - -

検索フォーム

ブロとも申請フォーム

QRコード

QR