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金亀苑 金治直美ブログ

児童書を追いかける日々

年末の終い詣はオオカミさま

  1. 2019/12/29(日) 16:40:14_
  2. あんな本、こんな本、どんな本?
  3. _ tb:0
  4. _ comment:2
厳寒の秩父・三峯神社へ行ってきました。
ここは、奥秩父の一番奥、峠の向こうは山梨県です。

この神社は、パワースポットとして有名なところ。
「白い氣守」というお守り求めて、渋滞が起きるので、現在は発売休止しているほど。
ヤマトタケルが東征の途中にこの地にわけ入り、
イザナミとイザナギをお祀りしたのが始まりという、
めっちゃ由緒正しく格の高い神社です。
山の空気がおいしい! いっぱい深呼吸をしてきました。

わたしの目当ては「大神さま」――狼さま。
かの昔、この地で、ヤマトタケルの道案内をしたのが、オオカミ。
秩父には昔はオオカミがたくさんいたのでしょうね。
オオカミはヤマトタケルの元で、勇敢で忠実な働きをしたそうで、
それ以来この神社のお使い神さまに定められたとか。
というわけで、ここは狛犬ではなく、オオカミさまが門を守っておられます。

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「ご眷属拝借」といって、オオカミさまのチカラを一年間「借りる」こともできるそうです。
オオカミさまが、一年の間、厄災から家を守ってくれるんですって。

ニホンオオカミは今もどこかで生息している、目撃情報もあるぞ、などと
ときおり話題になるように、絶滅を惜しむ声は多いようです。
ふーむ、絶滅? 家畜伝染病や狩猟などが原因だそうなので、
つまり人間によって「絶滅させられた」のでしょう。
オオカミが人里を襲うこともあったでしょうが、
それよりも、日本においては猪や鹿に山村の農作物を荒らされることを防いでくれる、
まさに神さまだったはず。
そこが、欧米流の「悪いオオカミ」と一線を画すところ。
こうして「大神さま」として祀られていることが、せめてもの救いなのか、
はたまた人間の身勝手さのあらわれか・・・。
オオカミさまは、人間を恨むでもなく、守ってくださっているようですが。

荘厳な神社です。

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これ、本殿でも拝殿でもなく、手水舎の屋根なんです!
こんな美しい手水舎って、初めて見ました。

こちらが拝殿。

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こちらは、『オオカミのお札』三部作 おおぎやなぎちか 作 中川学 絵 くもん出版
2018年度の「児童文芸家協会賞」受賞作品です。

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 江戸時代、「疱瘡」が流行した村の少女、太平洋戦争時下を生きる少年、
そして、現代・東日本大震災に遭った少女。
それぞれの時代の少年少女が、「大神」に願ったこととは・・・?
土地に根差した作者の思いが三作を貫いて、
ずっしりと伝わってきます。

 作品の舞台は秩父ではなく、多摩地方。
 「大神」さまは、現代のわたしたちが想像する以上に、
山の守り神として、日本中に根を下ろしていたのでしょうね。

今年も「金亀苑」をのぞいてくださったみなさま、
ありがとうございました。
お守りのおすそ分けに(そんなの、アリか?)、
オオカミの絵馬の画像をどうぞ

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2020年も、どうぞよろしくお付き合いくださいませ。

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『アコㇿコタン』出版お祝い会 

  1. 2019/12/08(日) 17:06:12_
  2. あんな本、こんな本、どんな本?
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昨日は、楽しい日でした。
成田英敏先生の『アコㇿコタン』(双葉社)出版のお祝い会です。

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編集長さんはじめ、成田先生のマンガのお仲間による会なのですが、
共通の知人に無理をいって参加させていただきました。
成田先生のアイヌ語講座のお弟子さん、Hさんもいっしょ。
会場は、これ以上にふさわしい場所はない!という、
新大久保のアイヌ料理店「ハルコロ」。
ハルコロは、「食べものの困らない」という意味のアイヌ語です。
語感、かわいいでしょ。

このお店では、アイヌの伝統料理とともに、北海道料理も食べられます。
    鮭のルイベ
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 鮭の白子の揚げ物 
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鹿肉100%ハンバーグ 
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アイヌの伝統食材のキトピロ(行者ニンニク)の醤油漬けやお浸し、
すごくおいしかった! でも写真を撮るの忘れた・・・。

この本を改めて読み返すと、構成もすごく巧みであることに気づかされます。
プロローグは現代の子どもたち。
アイヌ文化に触れたことのない読者でも、
すんなりと物語に入っていけるように、とのことでしょう。
第1話から第16話で、アイヌの小さな集落の日々の暮らしを描いています。
登場人物のなかには、アイヌの村で育った和人の女性もいるんですよ。
そう、和人が何らかの事情で育てられなくなった子どもを、
アイヌの村が引き受けて我が子として育てるということは、
珍しいことではなかったようです。
そして、エピローグでは再び現代の若者たちを主人公として
いまだ続く差別問題を描き、「アイヌの今」に無理なく思いを重ねることができます。

ラストシーン、アイヌの血を引く大学生シノちゃんの、
「イタカンロー」(アイヌ語での弁論大会)の一節です。

はるかな昔から―― 
敬愛すべき 私たちの祖先が ここで生まれ 
ここで亡くなり・・・
(中略)
豊かに 暮らしていた
私たちの里に 私たちの大地に 
今 わたしたちもまた 
ここにいます

そう、「ここにいます」。
この素敵な文化の継承者が、ここにいます。

わたしは、あまりに力不足で継承者にはなりえませんが――
この『アコㇿコタン』が、たくさんのたくさんの人に届くことを、
願い、祈っています。


サイン、いただいちゃった! わーい。

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持ち味、空気感というもの

  1. 2019/11/17(日) 16:10:42_
  2. あんな本、こんな本、どんな本?
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まったくちがうテイストの物語なのに、
共通の感想というか感慨を持って読み終えた本、二冊。

『よろしくパンダ広告社』間部香代・作 三木謙次・絵 学研プラス

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パンダの本田パンダは、広告会社のコピーライター。
商品やイベントのキャッチコピーを、悩んで悩みぬいて考え、編み出し、
仲間たちと泣いて笑う日々。
言葉の力、そしてクリエイターたちの思いが、
パンダの本田クンを通して、びしびしと心地よく伝わってくる一冊です。

『蝶の羽ばたき、その先へ』森埜こみち 著 小峰書店

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中学二年生の結は、突発性難聴により片耳の聴力を失う。
しかしそれをなかなか受け入れられず、親友にも打ち明けられず、
とまどい、不安につぶされそうになるが――。
からみあう思いを、繊細な文章に載せ、実にリアルに描き出しています。
決して暗くはなく、肩に力が入るでもなく、読後感はすっきりとさわやか。

この二冊、ジャンルも内容もキャラも文章も、まったく違います。
対極といえるほど。
でも、共通したものを感じました。
それは、一言でいったら持ち味を強く感じたということ。
といっても、持ち味が似ているのではありません。こちらも、むしろ対極です。
 
間部香代さんの、スコーンと突き抜けたような明るさ、
スポーツにも似た、胸のすくような爽快さ。
そして、森埜こみちさんの、やわらかな陽の光りを
窓辺でひっそりと浴びているような透明感と静けさ。

これが、それぞれの作家さんの持ち味なのでしょう。
個性ともいえるでしょうが、それよりむしろ空気感という感じ。
出そうとしても、計算ずくでは出せないにちがいない、味わいというもの。
個性を醸成する粒子のようなもの。

分不相応に、いくつかの童話コンクールの選考をさせていただいていますが、
賞を勝ち取っていくには、
この持ち味、空気感のあるなしが大きいような気がします。

さて、わたしにも持ち味ってあるのかな?
優れた作品を読むたびに感動しつつ、
「では自分は?」とへちゃげる、ヘタレカナジです。


記憶にございませんが、再スタート

  1. 2019/10/06(日) 15:13:10_
  2. あんな本、こんな本、どんな本?
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三谷幸喜監督の映画『記憶にございません!』を観てきた。

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投げつけられた石が額に当たり倒れた内閣総理大臣。
目覚めると記憶を失っていて――。
彼はこの難局をどう乗り切るのか。

実はこの男、歴代内閣最低の支持率を叩きだした、
カネと欲と不倫まみれの嫌われ者。
おのれの姿を、「新しい」彼は徐々に知っていき・・・。

随所にちりばめられた政治家のおちょくりに、にやにやゲラゲラ。
森〇学園の園長に似た男や既視感のある女性党首なんかも出てくる。

この総理がどう変わって、さらに周囲をどう変えていくのかが見どころではあるが、
あまり難しく考えず、思い切り笑えばいいのだろう。
わたしとしては、もうちょっと現政権への風刺があればもっとよかったな~。

偶然だが、『リスタート』」という物語を、
映画に行く前日まで読んでいた。

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『リスタート』 ゴードン・コーマン 作 あすなろ書房
主人公は、自宅の屋根から落ちて記憶喪失となる13歳の少年、チェース。
彼はアメフトのスター選手であり、またとんでもない悪ガキでもあった。
アメフトの仲間とイジメを始めとする問題行動をくり返し、
いじめた相手が泣く泣く転校していっても
笑いのネタにするようなヤツだ。

大人と少年、総理と学生のちがいはあれど、
よく似た物語だ。

チェースは、記憶を失ったあとは、まっとうで善良な感受性を素直に発揮し、
彼を恐れ憎んでいた同級生たちも、徐々に「新しいチェース」を受け入れていく。

こんなにうまくいくか?
記憶がなくなっても、元の性格や気質は、そうそう変わらないんじゃないのか?
そんなことをつらつら感じながらも、ページはどんどん進む。
それは、彼をめぐる少年少女たちの語りがとてもおもしろく現代的で、
リアルな10代の感覚が生きているから。
ラストはまさかの涙腺決壊! 
笑えて泣ける青春ストーリーだった。

そういえば、わたしも中学生のころ自分がイヤで、イヤでイヤで、
13年の人生をまっさらにリセットしたかったな。

再スタートって、もしかしたら、多くの人に共通の願望なのかもしれない。
だから、笑いながらも胸の深い部分を突かれるのかもしれない。

「記憶喪失」は、昔からドラマやラノベ、コミック、映画などでも何度も使われ、
ある意味、時代がかっているかもしれない。
でも、「再出発」には、やはり感動がある。
この「装置」を巧みに使った二つの作品、どちらもお勧めです。


目眩くファンタジーとしっとり和のファンタジー

  1. 2019/09/29(日) 15:50:38_
  2. あんな本、こんな本、どんな本?
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最近出会ったファンタジーから2冊、ご紹介。
『月の光を飲んだ少女』 ケリー・バーンヒル作 表紙画 玉垣美幸  評論社

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中世ヨーロッパと思わせる小さなある町には、毎年赤ん坊をいけにえとして
魔女に差し出さなければならない決まりがあった。
村は閉塞感と悲しみでいっぱい。と、設定はよくある話。
ところが、その魔女は、村人がなんのために毎年森に赤ん坊を捨てているのかを知らず、
ひそかに赤ん坊を助け、かわいがって育てていたのだ。
ある年に助けた女の子に、魔女はうっかり魔力を持つ月の光の飲ませてしまう。
女の子は不思議な力をもつようになり・・・。
恐怖とあきらめが支配するこの町を救うのはだれ? 
そもそも、敵はだれ? 真に邪悪な者は意外にも・・・。

月の光を飲んだルナ。心正しくやさしい魔女、ザン。
思慮深い若者アンテイン、勇気と行動力あるその妻エイサン。
これらの人々が織りなすストーリーは、まさに目眩くファンタジー。

魔女の物語は山ほどありますが、
これはよくある魔女モノの顔をした、新しい物語でした。
「持病」のファンタジー欠乏症が、いっぺんに解消できました。

こちらは「和」のファンタジー。
『かなと花ちゃん』富安陽子 作 平澤朋子 絵 アリス館

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どういうわけか人形が主役のファンタジーに弱くて、
ルーマー・ゴッテンの『クリスマスの女の子』や『人形の家』、
シルヴィア・ウォーの『メニム一家の物語』シリーズも、梨木香歩さんの『りかさん』などなど大好き。
この作品も人形ファンタジーです。

野原に置き忘れられていたお人形の花ちゃんを抱き上げてくれたのは、かな。
花ちゃんは、かなに話しかけてみます。
かなは花ちゃんを家に連れ帰り、毎日いっしょに過ごすうちに、ふしぎなできごとに出会うように・・・。
かなの家である八百屋さん、お縁日、お寺の四天王、人形師のおじいさんなど、
どこか漂う懐かしい香りは、「昭和の女の子」も楽しめるでしょう。

富安さんは、『シノダ!』『妖怪一家九十九さん』シリーズなどの、
妖怪や神さまの楽しいファンタジーで知られる、大人気作家さん。
『かなと花ちゃん』は高名なシリーズ作品の陰でひっそりとたたずんでいるような、
ほどよく肩の力の抜けた極上和風人形ファンタジーでした。これはもう名人芸ですね。

やっぱりファンタジーはええなあ。



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プロフィール

金G亀美

Author:金G亀美
イラスト:大塩七華
かなじ・なおみ 児童書作家 埼玉県在住。
主な著書に『さらば、猫の手』(岩崎書店)『マタギに育てられたクマ』(佼成出版社)『ミクロ家出の夜に』(国土社)『花粉症のない未来のために』『子リスのカリンとキッコ』(佼成出版社)『知里幸恵物語』(PHP研究所)『私が今日も、泳ぐ理由 パラスイマー一ノ瀬メイ』(学研プラス)『となりの猫又ジュリ』(国土社)『クレオパトラ』『マイヤ・プリセツカヤ』(学研プラス)『読む喜びをすべての人に 日本点字図書館を創った本間一夫』(佼成出版社)など。
日本児童文芸家協会会員 
童話サークル「かざぐるま」会員
よみうりカルチャー・大宮教室
「童話を書いて楽しもう」講師

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