金亀苑 金治直美ブログ

児童書を追いかける日々

世界で一番好きな画家さん

  1. 2017/03/19(日) 15:53:51_
  2. あんな本、こんな本、どんな本?
  3. _ tb:0
  4. _ comment:0
すみだ北斎美術館に行ってきた。
葛飾北斎さんは、わたしが世界一好きな画家さん(ただし、わしゃ美術オンチ)。

日本文化の華であり江戸の町人文化の豊かさの象徴、
世界に誇れる芸術、浮世絵。
東海道五拾三次の歌川広重にもうっとりするし、
鬼気迫る幽霊画の河鍋暁斎も好きやけど、
頂点はやはり北斎と思います。

今回観た、ため息モノの展示品のなかで、わたしが何度も戻ってはながめたのが、
『百人一首うはかゑとき』のなかの、
「奥山に紅葉踏みわけ鳴く鹿の声きく時ぞ秋は悲しき」を題材に描いたもの。
一日山里で野良仕事をして、帰宅する村人たち。
指さす山のてっぺんに小さく二頭の鹿。
和歌では淋しさを強調しているが、この絵には満ち足りた安らぎを感じる。

あれだけの天才画家なれど、生涯貧乏で長屋住まい。

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画室を再現したもの(写真可でした)
ほぼ一年中、こたつに半身をつっこんで、
こんなカッコで描いていたそう。筆が時々動くのでドキッ!
いっしょにいるのは、娘の絵師・お栄(葛飾応為)。

90歳で亡くなるまで生涯現役、武士が嫌いで権威も嫌い、
一筋縄ではいかないじいちゃんだったようで。
絶筆といわれる「富士越龍図」(龍が富士山から空へ向けて飛び立つ絵)を
小布施の「北斎館」で初めて見たときは、
ビビビと震えが来た。

ミュージアムショップには、たくさんの北斎の研究本や画集。
そして、児童向け伝記の決定版がありました。
『葛飾北斎 世界を驚かせた浮世絵師』芝田勝茂・文 あかね書房

        無題

北斎の生涯がばっちりわかるのはもちろんですが、
日本絵画史上の謎の絵師・東洲斎写楽と北斎の深~~~~~い関係や、
「富嶽三十六景」には武士の姿は一人も出てこない、などの
‟へえ~~~”もたっぷり。

娘のお栄も好き。
お栄を主人公にした小説『眩 くらら』朝井まかて・著 新潮社

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絵師に嫁ぎ、離縁してからの半生を描いています。
彼女(葛飾応為)の代表作、「吉原格子先之図」(本の表紙になっているもの)は、
光と影の効果を追求した画期的な絵。
それを描くときの思いを、本文ではこう語っています。
 
――実(じつ)が過ぎては絵が賤(いや)しくなりはすまいかと、
今のお栄はおもうのだ。そう、目の前にある景色、
その表面(おもてづら)に囚われたら絵の真情を損なってしまう。
 (中略)
西画じゃなくて、かといって昔ながらの吉原図にもしたくないんだ、あたしは。

西画はヨーロッパ絵画のこと。
遠近法と明暗を重んじて見たままを写実的に描く技法を、わかってはいるけれど、
それをそのまま受け入れたくはない、けれども従来の浮世絵の画風を踏襲したくもない。
新しい絵の境地を拓こうとする彼女の意気地と熱がぷんぷんと。
かっこいいね!

お栄を主人公にしたコミックもあります。わたしにとって、もはやバイブル。
アニメ映画にもなりました。
『百日紅』杉浦日向子・作

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こちらは娘時代のお栄を描いています。
杉浦さんは江戸からタイムスリップしてきたかのような、
昭和・平成の江戸人でしたなあ・・・。
もっともっと生きて描いてほしかった。

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児童書専門店「ピッピ」から生まれた本

  1. 2017/03/05(日) 18:17:24_
  2. あんな本、こんな本、どんな本?
  3. _ tb:0
  4. _ comment:0
「世にも不思議なお話」(PHP研究所刊 絵・Simano)発売中だ。

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わたしは、「夜中先生」という物語を書かせていただいた。
このシリーズは、ほんとうにあった不思議なことを核にしている。
「夜中先生」のモデルとなった方も、実在の人物だ。

さて、わたしには、出身地や卒業した学校とは別に、
誇れる「出身」がある。「ピッピ」という児童書専門店だ。
学生時代の終わりころから、店主さんの勇退による閉店までの二十数年、
客として、またアルバイト店員として楽しい時を過ごさせてもらった。
「夜中先生」のモデルの方は、この店の常連さんで、
小学校の夜間警備員さんをされていた。

「ピッピ」はほんの小さな店だったけれど、カフェが併設されていて、
わたしは、有機野菜を使ったランチの調理係だった。
「夜中先生」は、このカフェのカウンターで聞いた話が元になっている。
そういえば、わたしの単行本「ミクロ家出の夜に」(国土社・刊)も、
別の常連さんから聞いた話がヒントとなって生まれた。
「めだかの学校」のように、「だれがお客か店員か~」という、
暖かな、でも個性あふれる顔ぶれが集う店だった。

カフェの白い壁は貸しギャラリーとなっていた。
ギャラリーに展示を申し込むのは、絵本作家の卵さんや画家の卵さん、
アマチュア写真家さんたち。
そのなかから、早川純子さん、田中清代さん、なかむらしんいちろうさん、
鶴田陽子さんなどの絵本作家さんが巣立った。ピッピの「同窓生」だ。

お店はちっとももうかっていなかったが、
常連さんたちが「わたしのお店」として、いろいろなことに参加してくれた。
ケーキを焼いてくる人、カレーを仕込む人、お店のミニコミ誌を作る人。
絵本の読み語りの会や読書会、哲学を語る会なども毎週のように開かれていた。
みーんな、この空間を愛していたなあ。

閉店から17年。今でも、年に一度同窓会が開かれている。
店主のTさんと、元バイト、元常連さんが十数人、ひとときの宴に酔う。

いい時間と、中身の濃―い人たちに恵まれていた、あの頃。
その記憶の一端を「夜中先生」という物語にできたことがうれしい。

「夜中先生」の夜間警備員さんについては、単行本にもなっています。
ピッピ「同窓生」鶴田陽子さん作・絵による
『夜の校長センセイ』(ぱる出版、2004年)

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こちらは不思議な話ではなく、
小学生のボクとの心温まるやりとりを描いています。

常連さんが作ってくれた、カフェ用のティポットカバーとナプキン。
店終いのときにもらってきて、今も大切にしています。

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お雛さま、ごめんね

  1. 2017/02/26(日) 16:34:34_
  2. あんな本、こんな本、どんな本?
  3. _ tb:0
  4. _ comment:0
雛祭りが近い。
女の子のいない我が家でも、お雛さまを飾った。
亡き母から、贈られたものだ。
もう30年近く前だろうか、母は当時はやっていた木目込み人形製作を習い、
何体か作っていた。そのなかの一つだ。

DSC_0904.jpg
(写真、へたやなー。本物はもっとかわいいです)

わたしが子どものころ実家にあった雛人形は、
とてもとても、痛かった。
ガラスのケースに入った小さな小さな親王飾りと三人官女のみ、
いや、それはいいのだ。小さくても、ささやかでも(というか、小さいほうが好き)。
でも、このお雛さまたちは、子どもの目にも安物ということがバレバレだった。
顔も髪も衣裳までも、絵具をべったりと塗りこんだものだった。
おそらく、乏しい家計をやりくりして買ったものなのだろう。
母は、この小さなケースだけでは寂しいからと、
わたしたち姉妹のぬいぐるみも並べて飾った。
うす汚れたぬいぐるみに囲まれたお雛さまは、よけいに痛々しかった。

わたしたちが喜ばないのを、母は察したのか、
小学校3年生くらいのころには、もう飾られることはなかった。

そんなこともあって、母は木目込み人形製作を習ったのかもしれない。

実家はすでにない。
20年ほど前、家を売り渡すとき、引っ越しを手伝った。
あのお雛さまが出てきたら、どうしようかとどきどきしていた。
処分するしかないが、供養のためにお寺や神社に持っていく時間はない。
だが、わたしが目を泳がせているうちに、
当のお雛さまのガラスケースは不要品の山のどこかに紛れたらしい。
目にすることはなかった。

あの貧弱なお雛さまたちの末路が、今も心に淀んでいる。
ごめんね、愛してあげられなくて。

これはわたしが数年前に買ったお雛さま。ケースの大きさ2センチ。
手前は、ゼムクリップ。

         DSC_0896.jpg

お雛さまの本といえば、これ。
『もりのひなまつり』こいでやすこ 作 福音館書店 2000年
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 のねずみたちのひなまつりに招かれたおひなさまたちが、
森へでかけ、楽しいひとときを過ごしますが、帰り道で雪がふってきて――。
お雛さまたちの美しさに、ためいき。
読み語りのとき、騒いでいる男の子たちも、見とれるほどです。

『ひいな』いとうみく 作 小学館 2017年

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由良は祖父母の町で過ごすうちに、お雛さまの声が聞こえることに気づきます。
母と祖父の不仲の原因を知った由良は、
お雛さまを通じて家族の修復を願いますが――。
お雛さまたちのユーモラスな会話も魅力。
いつの時代も、お雛さまは女の子の味方です。

それにしても、いとうみくさんって、いったいどこまで進んでいかれるのでしょうね。

いいぞ、毎小!

  1. 2017/01/29(日) 14:48:52_
  2. あんな本、こんな本、どんな本?
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毎日小学生新聞がおもしろい。

一面には、政治の話もよく登場する。
例えば、1月26日の一面は、
「教えて!池上さん」という、長めの記事。
池上彰さんが、トランプ氏の大統領就任演説について、
鋭いメスを入れている。

1月28日では、
「世論調査って何だ 質問に隠されたわなを見逃すな」というタイトルで、
世論調査が必ずしも国民の意見を反映するものではない、と説いている。

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集団的自衛権が国会で論議されているときも、
鋭い批判記事を掲載していたな。
一般紙の毎日新聞よりもよっぽどキチンと書いてある、と感じたのはわたしだけ?
小学生諸君、しっかり読んでね。
権力に都合のいい方向に流される大人に、ならないために。

連載の物語もおもしろい。
現在は、いとうみくさんの「唐木田さんち物語」。
大家族の泣き笑いをさすがの筆致で暖かく描いている。
その前は、間部香代ちゃんの「よろしくパンダ!」
広告業界という、筆者ならではの世界を
からっとユーモラスに描いていた。
この連載紙面からは、
長井理佳ちゃんの『まよいねこポッカリをさがして』(アリス館)

       無題

光丘真理ちゃんの『ようこそ、ペンションアニモーへ』(汐文社)などなど、

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たくさんの物語が単行本化されている。
連載から単行本へという流れ、
雑誌などの媒体の少ない児童書界では、貴重なんですわ。

いいぞ、毎日小学生新聞!


クリスマス&年末に読み返したくなって

  1. 2016/12/24(土) 17:29:07_
  2. あんな本、こんな本、どんな本?
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クリスマスで心ウキウキというタイプではありません(ハイ、ひねくれもんです)
でも,どことなく厳かな気分となり、
フォーレのレクイエムやグレゴリオ聖歌を聞きながら、
いい物語に浸りたくなります。

今年読んだ本のなかから、この時期にしっくりくるものを
選んでみました。内容はリスマスとは関係ないですがね。 

『4年2組がやってきた』2016年
 野村一秋・作 ささきみお・絵 くもん出版

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五年生のマーくんは、脳性まひ。
しゃべれず、歩けず、手もうまく動かせません。
学校では、ただ一人の「にじ組」です。
その「にじ組」に、4年2組が「交流」しにくることになり・・・。

物語は、マーくんの一人称の語りで進みます。
読むうちに、マーくんが見聞きし感じている世界が、
すごく広く深いことに驚かされます。
しゃべれないから、動けないから、なにもできず
なにも考えていない? いえいえ、とんでもない!
そう、彼の頭のなかはいつもいろいろな思いでいっぱい。
それを表現できないだけ。

だいぶ前のこと。知り合いの視覚障がい者の方が、
道ばたで立ち止まって、なにか困っているようすでした。
聞けば、本屋さんに行く途中なのですが、場所がわからなくなったとのこと。
「あ、通り過ぎています。引き返しましょう」
すぐ近くの本屋さんに案内して、わたしは大失態。
レジの人に「こちらの方をご案内しましたので、よろしくお願いします」と
声をかけてしまったのです。
そんな余計なこと、いわなくてよかったのです。
必要なことは、ご本人がちゃんとお店の方に伝えるでしょうから。
なんだか、「保護者」のような気になっていたのでしょうね。
その自分の浅はかさを、この本を読んで、ちくりと思い出しました。

『ナゲキバト』2006年
ラリー・バークダル・作 片岡しのぶ・訳 あすなろ書房

       無題

この本は、すでに古典かもしれません。
9歳のとき両親を亡くし、祖父にひきとられたハニバル。
ある日、ナゲキバトを遊び心で撃ってしまい・・・。
祖父との生活により、ハニバルは静かに深く、
生きる意味を感じとっていきます。

背景と思っていた逸話が、
実は物語の背骨であったという構造に驚かされます。
善とは? 悪とは? 悪に染まってしまった人生を、
昇華させるには?
それらが、やさしくしみじみとした文章に、
美しい紋様のように織り込まれています。

『ひまなこなべ』2016年 萱野茂・文 どいかや・絵 あすなろ書房

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アイヌの昔話です。
アイヌには神さまが主人公の物語がたくさんありますが、
伝え方が難しいように思います。
神さまの一人称で語られているので、
初めてふれる人は、ちょっと入りづらいのです。
でもこの本ならだいじょうぶ! 
クマの神さまに導かれ、
万物に神が宿るというアイヌの世界に
無理なく入ることができます。
この不思議なタイトルも、最後に意味がわかるしくみです。
躍動感ある、愛らしくもりりしい絵が魅力的。何度見てもうっとりです。

今年も残すところあと一週間。
来年もどうぞよろしくお願いいたします。



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プロフィール

金G亀美

Author:金G亀美
かなじ・なおみ 児童書作家 埼玉県在住。
主な著書に『さらば、猫の手』(岩崎書店)『マタギに育てられたクマ』(佼成出版社)『ミクロ家出の夜に』(国土社)『花粉症のない未来のために』『子リスのカリンとキッコ』(佼成出版社)『知里幸恵物語』(PHP研究所)『私が今日も、泳ぐ理由 パラスイマー一ノ瀬メイ』(学研プラス)など。
日本児童文芸家協会会員 
童話サークル「かざぐるま」会員
よみうりカルチャー・大宮教室
「童話を書いて楽しもう」講師
イラスト:なかむらしんいちろう

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