金亀苑 金治直美ブログ

児童書を追いかける日々

知ってしまったら、元には戻れない

  1. 2018/06/03(日) 16:50:56_
  2. あんな本、こんな本、どんな本?
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『さよなら、田中さん』鈴木るりか・作 西原理恵子・絵 小学館
を読んだ。
田中さん

6年生の花ちゃんのうちは、シングルマザー。そして、いわゆる貧困家庭だ。
それでも、建設現場で働く母は、ガハハと明るくビンボー暮らしを笑い飛ばし、
花だっていつも元気。友達にも信頼されている。

物語には、「今」がいっぱい。
友達の前に、離婚して去ったその友達の父が突然現れたり、
お母さんが再婚を考えたり、
ヒッキーになってしまった大家さんの息子やら、
クラスのなかで痴漢よばわりされてしまった男の子やら、登場する。
そのなかにあって、花ちゃんはいろいろ考え悩むが、
それがものすごく自然体だ。

こういう物語って、ひと昔前だと「ケナゲ感」満載だったり、
ちょっと前だと「ヒリヒリ感」が出てたりするけれど、
どっちも違う。
みずみずしく笑える(「カラッと笑える」のとは、ビミョーに違う)。
泣けてきちゃうのに、「泣かされた」感がない。
 
この物語はかなりの話題作だから、知っている方も多いだろう。
作者は、2003年生まれだ。今、中学二年生。
執筆したときは小学生だった。
うーーむ、舌を巻きすぎて、ぐるぐる三重巻きになってしまった。
世界の作り方、表現の押さえ方、人物の描き方、どれも見事。
最後の章の語り手は、クラスの男子になっている。
これにより、花ちゃん母子のイメージがさらにくっきりしたし、
物語に重みと余韻を与えている。この構成にもびっくり。

「中学生作家」ということを知り、読んだのだが、後悔した。
中学生ということを知らずに、読みたかった。
違う感想になったのだろうか? 
それでも、やっぱり舌はぐるぐる巻いただろうか?
たぶん、巻いただろうな。

こちらも、小学生ちゃんの絵本。
『一日だけうさぎ』原知子・作 こばようこ・絵 くもん出版
 
     うさぎ

 「おはなしエンジェル子ども創作コンクール」の最優秀作品が絵本化されたものだ。
その町には、一年に一度だけ住民全員がうさぎになってしまう日がある。
学校でもみんな、うさぎの姿。
学校のうさぎ小屋のうさぎたちと話ができて、「待遇改善」を求められたり、
授業は体育ばかりだったり、人間目線とは違う一日を過ごす。
物語の終わりは、こんな文章。
「まいとし、うさぎの日がおわると、町がまえよりずっといい町になっている。
わたしはこの町がだいすき!」
なんて素敵、こんな町に住みたいなあ。
うさぎになりたいよ~~~!

作者の原知子さん、これを書いたのは小学校三年生のとき。
かわいくてほろっとさせるこのセンス、すごいねえ。
これも、小学生ということを知らずに読みたかったなあ。

藤井聡太くんだけじゃない。天才は育っている。

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障がいを克服するって? 

  1. 2018/05/27(日) 17:44:38_
  2. あんな本、こんな本、どんな本?
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5月24日(木)は、一年で一番忙しい日。
日本児童文芸家協会の総会、協会賞・新人賞・功労賞の贈呈式・懇親会が
都内で開かれた。
今年の新人賞は、「僕は上手にしゃべれない」椎野直弥・著 ポプラ社。

ぼくは

吃音に悩む中一の悠太、その葛藤と成長を描く物語だ。
悠太が吃音を克服すべく選んだ部活は、なんと放送部。
そこで出会う新入女子部員や先輩、姉たちに助けられ・・・。
悠太の、うまくしゃべれないもどかしさと悔しさ、嘆きが
ぐいぐい胸のうちに迫ってくる。
それでいて、リズム感のある文章のおかげか、決して暗くはない。

ただ、腹が立ってくるのだ、この物語は。
悠太クンは、周囲の無理解やら嘲笑やらという、
出口のない闇を歩いている、いや歩かされている。
それってもちろん、本人が悪いわけではない、100%周囲の問題。
ならば、「成長」すべきは、本人ではなく、学校であり、社会じゃん?
なのに、なんでこんな苦労を、彼自身が背負わなくてはならないの?
ただでさえ、うまく回らない口と舌をどう動かすかに疲労困憊しているのに?
と、ムカついてしまう。
そう思わせることが、作者の狙いなのかな?

わたしは、「障がいを乗り越えて」という表現が嫌いだ。
(吃音は障がいと認められていないそうだが)
乗り越えて成長すべきは、本人ではないもの。
わたし自身、パラアスリートの物語を二冊、オムニバスでも一作書かせてもらったが、
そういう視点では描かなかった。

『ワンダー』R.J.パラシオ・著 ほるぷ出版

ワンダー


この物語は、全世界で300万部売れたという感動作だ。
映画化されて、まもなく封切りになる。
オーガストは生まれつき顔に障がいがあり、10歳ではじめて学校に通うことに。
生徒たちはオーガストの顔に驚き、悲鳴をあげるが・・・。
しかし、オーガストをめぐる男子たちのなかで起こったあるいじめをきっかけに、
生徒たちは変わっていく。
そう、これは「障がいを克服する」物語ではなく、
回りが偏見を克服する物語だ。

方向は違うけれど、どちらも素晴らしい物語。
「僕は・・・」も、あっというまに版を重ね、すでに6刷りだそうだ。
これらの物語が多くの人に受け入れられているって、素敵だね。





がんばって、農家さん!

  1. 2018/04/29(日) 18:18:02_
  2. あんな本、こんな本、どんな本?
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田植えの季節がやってくる.。

わたしは、とにかく飯っ食い。
ご飯が大好きで、朝晩は必ずご飯。
昼はお餅や米粉の麺であるフォー、オヤツに餅菓子やおせんべいという日も多い。
米尽くしだ。
パンやお蕎麦以外の麺類はできるだけ食べないようにしている。
というのは、小麦粉に軽いアレルギーがあるからね。
米が大好きでよかったあ!

心配はある。お米が不作だったり外国産に押されたり、
米政策がややこしくなって米農家さんが離農しちゃったりすることだ。

農家さん、がんばってください! おいしいお米を作ってください!
わたし、死ぬまで毎日ご飯を食べますからっ!

で、こんな本のご紹介。これを読んで、
農業ラブの子どもたちが、増えてくれたらいいな。
お米やおいしい野菜をたくさん食べてほしいなあ。
そして、日本の食料自給率が上がったらいいなあ。

『えっちゃん ええやん』北川チハル 著 国松エリカ 絵 文研出版

     えっちゃん

 「四月 ええやん しあわせや」で始まる文章の、リズムのいいこと!
 元気いっぱい、「ええやんええやん」と、
一年生ライフを楽しむえっちゃんと、内気なこじろうくん。
そのこじろうくんは、自分だけのマイ田んぼをもっていて・・・。
田んぼには、友情も実るんやね! 
作者のチハルちゃんは、お米作りや野菜作りをしている作家さんです。
 
『あぐり☆サイエンスクラブ 春』 
『あぐり☆サイエンスクラブ 夏』
『あぐり☆サイエンスクラブ 秋と冬 その先に』
堀米薫 著 黒須高嶺 絵 新日本出版社

  あぐり 春

                      あぐり夏
                                        あぐり
                                  
 「サイエンスクラブ」の募集チラシに誘われ参加してみたら、まさかの農業体験!
びっくりどっきりへっぴり腰の子どもたち、
でも農業やおいしいご飯の魅力にどんどんとりつかれていき・・・。
 お米の匂い、青田風、稲の子であるイナゴ、田んぼのなかの青空・・・
五感をフル回転させてくれます。そう、農業は愛ある科学なんですね! 
作者の堀米さんは、がっつり大規模な農家さん。いったい、いつ作品書いているんだあ~~~?

『わたしたちのたねまき たねをめぐる いのちたちのおなはし』
キャスリン・0・ガルブレイス 作  ウエンディ・アンダスン・ハルパリン 絵 のら書店

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 この地球という庭に、風が、太陽が、川が、鳥が動物が、そして人間が、
あらゆる植物の種をまき、育ち、緑の地球を創っていく――。
うっとりするような、美しい絵本。
セコセコした暮らしに疲れてしまった大人にもいいかも。
訳は、梨木果歩さん。

『GREEN ~農家のヨメになりたい~』①~④ 二ノ宮知子 作・絵 講談社

             グリーン

 ワコが一目惚れした相手は、農家の青年で王子様然としたマコト。
恋をかなえるべく、農業修行にがんばるワコだが、
しだいに農業そのものにどっぷりはまっていき――。
 ラブコメですが、農村の魅力がたっぷり。埼玉は秩父が舞台です。 


一人でいられないのか?

  1. 2018/01/28(日) 17:53:38_
  2. あんな本、こんな本、どんな本?
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「ぼっち」という略語が生まれて、どのくらいたつのかな。
友達のいないサムいやつ、というイメージではあるが
今はちょっと風向きが変わり、
「ぼっち飯」も、若い人のあいだでマイナス印象ばかりではなくなったかもしれない。

オトナに近づいたら、ゴハンくらい一人で食べられなくちゃあね。
実際、一人で食事すると、よーく味わえる。
『孤独のグルメ』の五郎さんのように、『ワカコ酒』のワカコのように、
一人でじっくり料理やお酒と語らい、味わうのって、いいな。

『孤独のグルメ』久住昌之・原作 谷口ジロー・作画 扶桑社
(谷口ジローさん、お亡くなりになって本当に残念です・・・)

グルメ

『ワカコ酒』新久千映・作 徳間書店
ワカコ

飲めないから、お酒中心のお店はいかないけれど、
一人で食事するのは、わりと好き。
でも、となりのテーブルでグループがワイワイやっていたりすると、
ちょっとひるむことも。
そういうときに、思い出すフレーズがある。
「おまえは一人でいられないのか?」

古典名作『バンビ』のなかの一節だ。
 母親の姿が見えなくなり(繁殖期らしい)、泣き泣き探すバンビに、
立派な牡鹿が近づいてきて、こういうのだ。
「おまえは一人でいられないのか?」

『バンビ』は、小学生のころの愛読書だった。
好きすぎて、感想文が書けなかった。
何十年も昔の読書が、思わずところで役に立つなあ。

わたしがかつて読んだのは、高橋健二訳のものでしたが、

             バンビ1
2010年に上田真而子氏の新訳で出版されています。
『バンビ――森の、ある一生の物語 』ザルテン ・作 岩波少年文庫

           
バンビ2

読みやすく、みずみずしい文章で、「読む森林浴」が楽しめます。

どちらも、ディズニーアニメの「バンビ」とは、一味二味違います。




通りすがりのアニマル・セラピー

  1. 2017/05/14(日) 13:18:49_
  2. あんな本、こんな本、どんな本?
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連休が明けたこの季節になると、思い出す風景がある。
速足で歩く数頭のサラブレッドの、上下する頭部だ。
数十年前の記憶である。

わたしは社会人一年目。
満員電車に押し込められ、会社で必死に仕事をおぼえ、
一か月たってようやく連休となり、たっぷり遊び、無情にも休みが終わった。
「学生時代に戻りたいよ~」、一番精神的に辛い時期だったかもしれない。

当時わたしは、高田馬場に配属されていた。
一刻も早く山手線のラッシュから解放されたくて、
一つ手前の目白で降りてみた。
学習院大学のキャンパス沿いの道は、文句なしに気持ちよかった。
そして――馬術部があるのだろう、
へいの向こうに、お馬さんの頭が見えた。
美しい大きな生き物は、崇高だった。
つやつや光る横顔が、
緊張し疲れていたわたしをほぐし、新鮮な空気を注いでくれた。
通りすがりの、きわめて優秀なセラピーアニマルだったのだ。

だから、あかりちゃんの気持ちはよーくわかる。
『あかりちゃんのつうがくろ』
うるしばらともよし・文 よしだるみ・絵 垣内出版 刊

あかり


小学校に入学するのは、不安がいっぱい。
でも、羽村市のあかりちゃんの学校の通学路は、素敵です。
動物園のなかを通りぬけて学校へいっていいのです。
あかりちゃんは、どうぶつたちにあいさつしながら、
元気に学校に通うようになります。
いいなあ! こんな通学路、わたしも歩きたいなあ。

動物園にまつわる物語をご紹介。
『おりの中の秘密』シーン・ウィリス 著 あすなろ書房 刊 2005年

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トムは、耳は聞こえる、頭もちゃんと働く。でも、話せない。
ことばを話さないものたちといっしょにいたくて、トムは動物園に通います。
ゴリラのザンジと心通わせるうちに、ザンジの危機を知ったトムは、
思い切った行動に出ます。それは、あまりにも危険な賭け――。
これは、ファンタジーかメルヘン?
それとも、現実? 
不思議なリアルさが、脳をおかしな具合に刺激してきます。

『グリーン・ノウのお客さま』ルーシー・ボストン 著  評論社 刊

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古典名作、『グリーン・ノウ』シリーズの4作目。
このシリーズは、グリーン・ノウというお屋敷にまつわるファンタジーですが、
この巻は異色。
故郷の密林を夢見て動物園から脱出してきたゴリラと、
この屋敷に滞在する難民の少年との魂のふれあいを描き、
深い感動を呼びます。

ゴリラ×2になってしまった。
ハイ、わたしゴリラ大好きなんです。




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プロフィール

金G亀美

Author:金G亀美
かなじ・なおみ 児童書作家 埼玉県在住。
主な著書に『さらば、猫の手』(岩崎書店)『マタギに育てられたクマ』(佼成出版社)『ミクロ家出の夜に』(国土社)『花粉症のない未来のために』『子リスのカリンとキッコ』(佼成出版社)『知里幸恵物語』(PHP研究所)『私が今日も、泳ぐ理由 パラスイマー一ノ瀬メイ』(学研プラス)『となりの猫又ジュリ』(国土社)など。
日本児童文芸家協会会員 
童話サークル「かざぐるま」会員
よみうりカルチャー・大宮教室
「童話を書いて楽しもう」講師
イラスト:なかむらしんいちろう

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