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金亀苑 金治直美ブログ

児童書を追いかける日々

ファンタジー欠乏症の処方薬

  1. 2019/07/07(日) 15:43:06_
  2. あんな本、こんな本、どんな本?
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 わたしはときどき、欠乏症にかかる。
 それは、「ファンタジー欠乏症」。
 
 子どもの時から、童話、物語といったら、ファンタジーと思いこんでいた。
といっても、小学生の頃はまだ本格的なファンタジーは広まっていなくて、
「長くつ下のピッピ」や「バンビ」をファンタジー世界のようにとらえて
(海外の児童書は、わたしにとってはファンタジーなのだ)、
空想に浸っていた。
たま~に日本のリアリズムの児童書を読むと、
むしろあまりに現実離れした子どもの世界に、???マークを飛ばしていたっけ。

今、次から次へと読まなければならない本があり、
ふと気が付くと、「ああ、このところファンタジー読んでない!」
飢餓感に襲われてしまう。

そんな日々に、たっぷりファンタジー世界に浸らせてくれたのが、この二冊。
『カッコーの歌』フランシス・ハーディング 著 東京創元社

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 池に落ちて、一時的に記憶が混乱した11歳のトリス。
その耳元に、「あと七日」とささやく声。おそいかかるハサミ。異常な食欲。
妹は、「あれは偽のトリスだよ!」と叫ぶ。
わたしは、本当はだれ? なにが起きているの?
 舞台は、1920年の第一次世界大戦が終わって間もないイギリスのエルチェスター。
街の名士であるトリスの一家の礎となった後ろ暗い謎が、
トリスと妹、そして目には見えない不思議な人達の存在によって、動き出す――。
 
 脳内ぐるぐる、胸いっぱいおなかいっぱい。
これぞめくるめくファンタジー、100%堪能しました! 
結末は、予想を90度裏切られた。これもありか? うん、ありだわ。
 
『おじいちゃんとおかしな家 』西 美音  著・石川 えりこ 絵 フレーベル館

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くるみは小学4年生。くるみのおじいちゃんは元大工で、
木でいろいろなものを作るのだが、作るものはみんなへんてこなものばかり、
へんてこな「事件」が起きてしまう。
くるみと親友のマナちゃんは、その事件に遭うたびに大笑い。
おじいちゃんにもゼンさんという親友がいるのだけど、
その人にも大きな秘密があって、大騒動に。

カラっとしてのびのびと愉快で、
こういう作品って、なかなか書けないのではないかな。
くるみとマナちゃん、おじいちゃんとゼンさんとの友情もアツくて清々しい。

『カッコーの歌』が、「脳内ひっかきまわされるファンタジー」としたら、
こちらは「アタマと心がほどけるファンタジー」。

こういうのを読むと、数か月は元気でいられます。
そんな作品を、わたしも書きたいなあ。

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『しあわせの牛乳』を生み出した牛オタクさん

  1. 2019/05/26(日) 16:07:54_
  2. あんな本、こんな本、どんな本?
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23日は、日本児童文芸家協会の総会・各賞贈呈式・懇親会の日でした。
この日は、「サークル交流会」「秋木真講演会」も開催されたので、「一年で一番長い日」。
詳しくは、こちらから

今年、受賞されたのは、この方々です。
受賞者

左から、篠崎三朗様(児童文化功労賞)、国松俊英様(児童文芸ノンフィクション文学賞特別賞)、
井上こみち様(児童文化功労賞)、湯山 昭様(児童文化功労賞)、
佐藤慧様(児童文芸ノンフィクション文学賞)、森川成美様(日本児童文芸家協会賞)、
森埜こみち様(児童文芸新人賞)。
おめでとうございます!

受賞作品はどれもおもしろいものばかり。
そのなかから、佐藤慧さんの『しあわせの牛乳』をご紹介します。(写真・安田菜津紀 ポプラ社)

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           なんてかわいい牛さん! 牛への愛が伝わってくるなあ。 

主人公の中洞正さんは、酪農家です。子どものころから牛が大好き。
だから、牛の健康を損ない寿命を縮める「近代酪農」をしたくはなかった。
やがて、「山地(やまち)酪農」という、山の斜面で牛を飼育する酪農法に出合い――。

この山地酪農という方法、わたしは初めて知りました。
牛を山の斜面に放牧するのです。
牛たちは、自分でエサとなる植物を探しだして食べ、
そのフンは土に還り豊かな土壌を生み出します。
北海道のような広大な牧場がなくても十分。
どこも山だらけの日本の風土にあった酪農かもしれません。
これなら、毎日のエサやりも何十キロにもなるフンの片づけに追われることなく、
人間も健康、牛も健康! しぼった牛乳は、当然、自然のおいしさいっぱいです。

ページをめくるたびに、丁寧な取材と優しい目線の文章、
四季折々の牛たちの写真にひきつけられます。
牛をいじめるような「近代酪農」への怒りも、
じわじわとこめられています。

なにより、中洞さんの「牛オタク」ぶりにぐぐっときました。
世界はこんな素敵なオタクによって、より良く変わっていくのですね。

それにしても、われわれはもっと、
食べるものがどうやって作られているのか、知るべきだなあ。
動くこともできない狭い牛舎に閉じ込められ、
草食なのに穀物などの濃厚なエサを食べさせられ太らされ、
子牛を産ませられ乳をしぼられ、
乳の出が悪くなったら肉牛として売られていく牝牛たち。
同じ「女性」として、うわー、「近代酪農」の牛には、なりたくはない、
と胸がズキズキ痛みました。

でも、自分が牛でなくてよかった、と安心してしまったら、何も変わらないですね。

作者の佐藤慧さんと、ちょっとお話しすることができました。
「佐藤さんも、牛がお好きなんでしょう?」とわたし。
「はい、好きです~」と、佐藤さんは牛みたいにおだやかな黒い瞳で、にっこり。
(でも体型は牛とは似ても似つかぬ、長身でシュッとした方です)

佐藤慧さんは、世界の紛争地帯の取材で知られるフォトジャーナリストさんです。
なのに、なんでこんなに児童向けの文章が上手なの~~? 


戦争がコワイので、こんな本を読んだ

  1. 2019/01/13(日) 17:43:33_
  2. あんな本、こんな本、どんな本?
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ほんとうに何回も書くけれど、わたしが世の中で一番怖いものは、戦争だ。
戦争は、考えつく限りの絶対悪の集合体だ。
昨年も、何冊かの戦争にまつわる児童書を読んだ。

何度も小学校で読み語っているのが、この絵本。
『キンコンカンせんそう』
ジャンニ・ロダーリ 作 ペフ 絵 アーサー・ビナード 訳 講談社

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 戦争を続ける二つの国。大砲を作るために、教会の鐘まで供出させるが、
その大砲をぶっ放すと・・・。ロダーリのユーモアたっぷりのトゲトゲが小気味よい絵本。
キン! コン! カン! が読者の耳に鳴り響くこと間違いなし。

こちらは、昨秋の読書会で取りあげた、高学年から中学生向きの本。
『ファニー 13歳の指揮官』
ファニー・ベン=アミ 著 石川えりこ 絵  伏見 操 訳 岩波書店 

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フランスで暮らすユダヤ人の少女、ファニーの戦争体験の実話。
ユダヤ人迫害の手が迫るなか、子どもたちは集団でスイスへ逃がしてもらえることになり、
危険な旅が始まる。しかし引率の青年が逃走、
13歳のファニーが、急きょ子どもたちのリーダーに。子どもたちだけの逃避行が待つものは――。
『少女ファニーと運命の旅 』という映画にもなった作品。
「しっかりしなくちゃ」と、恐怖と涙をこらえて、子どもたちを率いるファニーの姿が凛々しい。

『ある晴れた夏の朝 』小手鞠 るい 作 タムラ フキコ 絵 偕成社

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 主人公はアメリカの高校生たち。
ヒロシマ・ナガサキに落とされた原子爆弾は、
かの戦争の終結を早めたという肯定派と、まったく人道に反するという否定派にわかれ、
ディベートをくりひろげる。
真珠湾攻撃、日中戦争、ナチズム、人種差別など、
多方面から繰り出す高校生たちの弁の真摯さ、見事さ。
原爆という人類最大の負の側面を学ぶ決定版といえるだろう。
それにしても、広島の慰霊碑に刻まれた「過ちは繰返しませぬから」を、
英語圏ではそんなふうに解釈される危険性があるとは! びっくりだった。
 
『マレスケの虹』 森川成美 作 Re゜絵 小峰書店

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第二次世界大戦期のアメリカ・ハワイで、日系二世の少年マレスケに戦争の影がのしかかってくる。
アメリカ国籍を持つマレスケと兄、あくまでも日本人として生きようとする祖父。
マレスケたち日系人二つの国のあいだで揺れ、波にたたきつけられていき・・・。
ずしりと重い内容ではあるが、筆者の端正で行き届いた文章により、
読後感は透明で、心強く未来を感じさせてくれる。

最後に、絵本作家さん61人によるメッセージ画集を。
『戦争なんか大きらい! 絵描きたちのメッセージ』子どもの本・九条の会 著 大月書店

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 画家さんたちの平和への思いの詰まった絵が見開きの片側に、
もう片側には日本国憲法の条文を掲載。
画家さんには、和歌山静子さんや田畑精一さん、故かこさとしさんはじめ、
日本を代表する絵本作家さんがずらり。
その顔ぶれだけでも、唸ってしまう。
内容の一例をあげれば、ささめやゆきさんの銃をかまえる兵士の絵には、
「その銃の先にはほんとうに敵国はあるのか」という問いかけが。
大人と子ども、いっしょにページをめくって、話をしながらながめてほしい一冊だ。



埼玉で地獄を見た!

  1. 2018/12/30(日) 15:46:49_
  2. あんな本、こんな本、どんな本?
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地獄を見てきた。

近所の文学館で「古典文学講読講座 埼玉地獄案内
~古典作品からみる人々の生活と思想」(全四回)を受講していたのだ。
古代、中世、近世の「地獄と閻魔」が、
当時の日本人にどんな影響を及ぼしていたのか、という講座だった。
講師は、明治大学の先生、田村正彦氏。
『古事記』『日本書記』から『日本霊異記』『往生要集』、
『太平記』『大日本国法華経験記』などなど、
ふだん目にすることのない、た~くさんの文献を集めて、解説してくださった。

地獄って、おもしろい。
古代は死後の世界は「黄泉の国」であったのが、
仏教の広まりとともに地獄思想が定着した。
お坊さんの読み解く地獄絵図が、民衆をビビらせ、
臨死体験して三途の川を渡って地獄を見、生還した人の「地獄めぐり」の話が
リアリティたっぷりに語られていた。
時代が新しくなるにつれて
「嘘つくと地獄で鬼に舌を抜かれるよ」的なしつけや脅しの効果は薄れ、
地獄めぐりのパロティの笑い話が登場、
地獄の沙汰も金次第、という文言も出てくる。
だんだん、地獄の権威が薄れていくわけだ。

これは、タイで葬儀の時にお棺に入れるお札。田村先生からのプレゼントだ。

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あの世で、係官に渡すためのものらしい。
中央に閻魔様の絵。「冥都銀行 拾億圓」だって! 
どこの国も、地獄の沙汰も金次第なのね~。

地獄は女性に酷い。女なら100%地獄行き、と定められていたそうだ。
ひどすぎ~。
逆に、オトコの地獄で笑えるものもある。
刀葉林(とうようりん)という地獄だ。
木の上に、艶やかに美女が微笑んでいる。
鼻の下をのばし、うへうへと登っていくと、葉は鋭い刃物になっていて、
血がダラダラ・・・。マッタク男って。

興味を惹かれたのは「奪衣婆」。
三途の川で、死者の衣をはぎ取るお婆様だ。
衣の重さで、現世での罪の重さが計れるのだそうだ。
奪衣婆の像は、全国にいくつもあるらしい。

田村先生所蔵の奪衣婆と地獄絵図

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地獄を、日本人はいつまで信じていたのだろう。
大・水木しげる翁は子どものころ、近所に住む「のんのんばあ」に連れられ、
お寺の地獄絵図を見に通っていたそうだが。
わたしが子どものころは、「地獄で閻魔さんに」的な脅され方をした覚えはないし、
そんな話をしたこともない。
でも、地獄はあると信じるも自由だ。
特に、物語の世界ではね。

三途の川、奪衣婆、といえば、これがおもしろかった。
『三途の川で落としもの』西條奈加 幻冬舎 絵 Nao

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橋から落ち、意識を失って三途の川にやってきた六年生の叶人。
出会ったのが、「ダツ・エ・ヴァ」だ。
ゲームのキャラのような派手なローブ姿、黄緑色の瞳に金髪で登場する。
このいでたちは、叶人が「ダツエバ」という音だけで頭に浮かんだイメージが
具象化した、ということらしい。
叶人は三途の川の“渡し守”を命じられ、死者の未練を叶えてあげるはめに――。

地獄めぐりの絵本といえば、これ。
『じごくのそうべえ』たじまゆきひこ著 童心社

           そうべえ

上方落語『地獄八景亡者戯』を元にしたロングセラー絵本。
綱わたりの最中に、綱から落ちてしまった軽業師のそうべえ、
山伏や歯ぬき師、医者といっしょに地獄へ。
軽妙な大阪弁で語られる地獄めぐりの物語だ。
さて、そうべえは生き返るのかな? 

地獄をすみっこまでたっぷり楽しみたいなら、
『鬼灯の冷徹』1~ 江口夏実 講談社 

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広大な地獄でハードワークに励む獄卒(鬼)であり、
閻魔大王第一補佐官である鬼灯の物語。
いろいろな地獄や現世との関わりがブラックに楽しく味わえる。

2018年最後のブログが地獄の話というのも、意味があるようなないような。
ともあれ、2019年も金亀苑を開いていただけましたら、幸甚に存じまする。


昭和の「クリスマスの思い出」

  1. 2018/12/23(日) 17:35:08_
  2. あんな本、こんな本、どんな本?
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昨日は、今年最後の読書会だった。
テキストは、『クリスマスの思い出』トルーマン・カポーティ。
 (村上春樹訳、山本容子銅版画、文藝春秋)

   クリスマス

7歳の少年と60代の従妹、そして犬のクィニーが、「友だち」として一緒に暮らし、
クリスマスを迎える。
なけなしのお金をはたいてフルーツケーキを焼き、
秘密の森からモミノキを伐り出し、プレゼントは手作りの凧。
少年は、子どものままの年をとったような従妹と、
かけがえのないクリスマスを過ごす。
暖炉の薪の香りや、冬の草はらの匂い。
読み返すたびに、しんと胸に染み渡る物語だ。

子どものころ、ケーキを食べると気持ちが悪くなった。
うなずく人も多いだろう。
昭和30年代から40年代に売られていた、
安物のマーガリンを使ったバタークリームのケーキだ。
だからだろうか、ある年のクリスマスに、
小さなデコレーションケーキ型のアイスクリームを買ってもらえた。
小学校一年生のときだ。

父は、クリスマスシーズンからお正月にかけて、毎年帰宅が遅かった。
なんのことはない、郵便局勤務だったから。
父のいないクリスマスイブに、母と姉と三人で、アイスクリームをどっさり食べた。
寒い季節だし、残念ながらたいしておいしくはなかった。
ド庶民であったので、クリスマスプレゼントも、わーい、と喜ぶようなものではなかったと思う。
なんとなく盛り下がっている姉とわたしを見かねてか、
母がその年に流行った「幸せなら手をたたこう」を歌おうといいだし、
わたしたちは、ちょっと照れながら、ぼそぼそと歌った。
三人だけで、しかも伴奏もなしに歌う歌は、かえって物寂しさを連れてきた。
――おとうさんがいたらよかったなあ。
わたしは実のところ、生まれて初めて、そう思った。
無口で愛情を表すことがなく、遊んでくれたこともない父は、
気ぶっせいな存在であり、いつもはいなくてもまるでへっちゃらだったのだ。
でも、このときのクリスマスは、
やっぱり家族そろっていたほうが楽しいかも・・・と思わせるものだった。
――そうか、おとうさんがいないのは、働いているからだった。今、この時間も。

「おとうさんありがとう」とまでは、考えはしなかった。
けれども、そのときに胸にひとすじ、ほんのひとすじ差し込んだのは、
たしかに敬虔ともいえる思いだった。
そう、クリスマスにふさわしいような。




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プロフィール

金G亀美

Author:金G亀美
イラスト:大塩七華
かなじ・なおみ 児童書作家 埼玉県在住。
主な著書に『さらば、猫の手』(岩崎書店)『マタギに育てられたクマ』(佼成出版社)『ミクロ家出の夜に』(国土社)『花粉症のない未来のために』『子リスのカリンとキッコ』(佼成出版社)『知里幸恵物語』(PHP研究所)『私が今日も、泳ぐ理由 パラスイマー一ノ瀬メイ』(学研プラス)『となりの猫又ジュリ』(国土社)『クレオパトラ』『マイヤ・プリセツカヤ』(学研プラス)など。
日本児童文芸家協会会員 
童話サークル「かざぐるま」会員
よみうりカルチャー・大宮教室
「童話を書いて楽しもう」講師

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