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金亀苑 金治直美ブログ

児童書を追いかける日々

「73年目」に寄せて

  1. 2018/08/12(日) 14:21:08_
  2. あんな本、こんな本、どんな本?
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今年も、終戦の日が近づいてきた。
何度でも書くが、わたしが一番怖いもの、それは戦争だ。

『火のカッパ』うるしばらともよし・作 やまなかももこ・絵 国土社 2018

   カッパ

戦時下の東京下町。
「東京大空襲」で火に追われにげまどうゲンタは、
炎のなかで、「むこうににげろ!」という声を聞く。
その声の持ち主は、もしや・・・
著者は、子ども時代に「悪さをするとカッパが来て隅田川に連れていかれるぞ!」
と祖母からおどかされ、カッパの存在を信じていたそうだ。
そう、カッパはほんとうにいる。この絵本を読むと、信じられる。
そして、カッパも平和を願っている。間違いなく。

その東京大空襲とは? 事実を丁寧に掘り起こし、
戦争を知らない世代にわかるように書き記したノンフィクションが、
『東京大空襲を忘れない 』瀧井 宏臣 ・著 講談社 2015

     空襲

空襲の体験者の証言は、あまりに悲惨で胸がつまる。
けれども、筆者の文章は暖かく、平和への祈りにあふれている。
数字の力がすごい。米軍により落とされた焼夷弾は32万発、
なくなった人はおよそ10万人。
「ヒロシマ」の死亡者数が12万人、「ナガサキ」が7万人だから、
その被害の大きさがわかる。
その焼夷弾とは? 「木と紙でできている日本の家屋」を効率的に燃やすために、
特別に開発されたものだそうだ。
だからこの空襲は「無差別攻撃」ではなかった。
禁止されているはずの民間人虐殺であり、「住民標的爆撃」だった、という。
これは、「無差別」よりも、数段ひどいんじゃないか?

そもそも、太平洋戦争て、どんなの?
そんな小中学生の疑問に答えてくれる物語が、
『ガラスの梨 ちいやんの戦争』
越水 利江子・著 牧野 千穂 ・イラスト ポプラ社 2018

        梨
 
戦時下、大阪の小学生だった「ちいやん」が体験した戦争。
かけがえのない日常が、少しずつ戦争という巨大な狂気、狂鬼にむしばまれていく。
兄の出征。動物園の動物たちの末路。愛犬にも恐ろしい運命が待ち受ける。
疎開、大阪大空襲。飢え。
どんなむごい環境でも、人は優しさを忘れない。希望を捨てない。
一日一日を、せいいっぱい生き延びる。
筆者のお母様の体験をもとに描かれた、渾身の物語だ。
「ちいやん」の辛さ、恐ろしさ、兄への思慕、「キラ」を守り抜いた思いが、
すんすん胸に迫ってくる。
戦争児童文学の決定版となるだろう。
それにしても、澄恵美姉やん、かっこええ!

「ちいやん」のおかあさんは、泣きじゃくる娘に語る。

「泣きな。泣いても怒っても、もうあてらには、どうしようもない。
これが戦争なんや・・・!」

ああ。
こんなことばを、
世界中の人が二度と口にしなくてすむ未来になるといいなあ。

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ちぢむのは悲しいけれど・・・

  1. 2018/08/05(日) 17:38:41_
  2. あんな本、こんな本、どんな本?
  3. _ tb:0
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10年前の服が着られない。サイズが合わないのだ。
・・・というと服がちぢんで入らない(太ったともいう)と思われるでしょうが、
逆だ。ぶかぶかなの。
といっても、やせたわけではない。体重計が示すとおりだ。
服全体が大きくなった、つまり、体がちぢんだ。
健康診断では、身長は確実に低くなっている。
ショックでガーンと頭に音が響くほど。
ま、老化なんやけど~。

ここは楽しい空想して、心をなぐさめよう。
なに、ちぢんでもいいことあるさ! 

体がちぢむといえば、ご存知、『不思議の国のアリス』。

アリス
作・ルイス・キャロル  絵・テニエル  ほか  角川書店 ほか 

薬を飲んで小さくなったり、ケーキを食べて大きくなったり。
ちなみに、「ちぢみ薬」は「ピッシュサルヴァー」、「
体が大きくなるケーキ」は「アッペルスヘンケーキ」というそうです。
チェシャ猫に会えるなら、この国に迷い込んでみたいなあ。

古典名作『小さなスプーンおばさん』もあったな。

  スプーン
作・アルフ・プリョイセン 絵・ビョールン・ベルイ 学研プラス

いたってふつうのおばさんが、
何の前触れもなく急に体がティスプーンくらいに小さくなってしまいます。
それでも、おばさんはへっちゃら。
持ち前の元気と機転でなんでもこなし、冒険を楽しんできます。
小さいって、楽しいわー。

最近読み返して、ううう、とうなったのは、『ちいさなちいさな王様』。

   王様
作・アクセル・ハッケ 絵・ミヒャエル・ゾーヴァ 講談社 

小さな小さな王様は、生まれたとたんに大人になっていて、
年をとるにつれて小さくなり、ある日だれにも見えないくらいになるんだって。
心身ともに子どもに帰っていくので、
人生の晩年に楽しい楽しい子ども時代が待っているそう。
この物語を最初に読んだ20年ほど前は、
その「小さくなって楽しんでおしまい」という部分に、
あまり「へー」と思わなかったのに、
今読むとすごくうらやましい。
むじゃきに遊んで笑って、そしてふっと世の中から消えられるって、いいなー。

これは、ちぢむといってもちょっと悲しい物語。
『千年万年りんごの木』(1~3)

 りんご
 作・田中相 講談社

雪深い昭和のりんごの郷で、ある新婚夫婦が村の禁忌をうっかり破ったため、
妻の「朝日」は小さく小さくちぢんでいき、
この世の者から遠い存在になって――。
朝日が愛らしく、また凛と美しく描かれています。
う~ん、淋しく切ないけれど、こんな「ちぢみ方」もいいかも。

な~んて、うらやましがるのもいいけれど、
現し身のワタシはこれ以上ちぢまないように、
たんぱく質にカルシウム、ビタミンDをいっぱいとらなくちゃ!



物語の吸引力って

  1. 2018/07/29(日) 17:01:17_
  2. あんな本、こんな本、どんな本?
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  4. _ comment:0
埼玉県立近代美術館で、「浦沢直樹展」見てきました。

浦沢

わたしは、めちゃコアなファンというほどではありませんが、
この作家さんの画力と物語の大きさ、濃さには、リスペクトするしかない。

わたしが初めて読んだ浦沢作品は、『MASTERキートン』(長崎 尚志・原作 小学館)で、
その内容の広がりと密度、絵の魅力に圧倒されました。

       キートン

絵については、この方の描く人物は、どれも魅力的ですが、
注目しちゃうのは、主役でもわき役でもない「その他大勢」。
たとえ一回きりの登場でも、なんだか背負っている人生が感じられるの。
ああ、この作家さんは自分が生み出すキャラを愛していて、
そしてご本人は間違いなくマンガの神様から愛されているんだなあ。

展覧会は、原画やスケッチ、少年時代のマンガノートなどがいっぱい、宝の山。

 浦

                浦2
 (画像は、『20世紀少年』(小学館)のパネルと立体像。撮影可)

原画を見ていると、あっという間に作品世界に引きずり込まれます。
この吸引力がすごい!
作家という 「創造主」のエネルギーですね。
           

さて、児童書界で吸引力ハンパないな~と感じたのは、
戸森しるこさん。
デビュー作の『ぼくたちのリアル』(絵・佐藤真紀子 講談社)が
昨年の児童文芸新人賞はじめ、読書感想文全国コンクールの課題図書になったり、
またたくまに大活躍。

      リアル

ひらたくいえば、三人の少年の友情物語で、
とくにぶっといストーリーがあるわけではないのに、
主人公の思いに引っ張られ、あっというまに物語の世界へ。

海外の作品では、『スピニー通りの秘密の絵』 ( ローラ・マークス フィッツジェラルド・著 千葉 茂樹・訳 あるなろ書房)
引っぱられましたあ!

 スピニー

ニューヨークを舞台にした、美術ミステリーというのかな。
主人公の女の子が、経済的な事情から、ある美術上の謎を解くことになり、
たまたま出会ったセレブ女子と協力して・・・。
ミステリーだから、吸引力強くて当たり前っちゃ当たり前なんだけど、
謎解きしていく過程で出会う人たちがユニークだったり、
セレブ女子との会話がおかしかったり、辛く重たい時代を旅させてくれたり、
極上の読書タイムをもたらしてくれました。

ああ、吸引力。どうやって身に着けるのかなあ。
いや、天性のものなんやろうね。
な~んて、ひとごとのように書くなって! 



アイヌ文化がちょっとしたブームって、知ってた?

  1. 2018/06/24(日) 17:49:08_
  2. あんな本、こんな本、どんな本?
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  4. _ comment:0
朝日新聞の6月18日の「天声人語」はうれしかった。
アイヌ語による車内放送を、北海道日高地方を走る道南バスで始めたというのだ。
記事によれば、
「チウレンカレㇷ゚ ウイナヤン」整理券をお取りください
「イヤイライケレ」ありがとうございました
などのメッセージがあるそうだ。いいなあ!

『ゴールデンカムイ』(野田サトル著。「週刊ヤングジャンプ」集英社にて連載中)
が快調だ。

カムイ (1)

画像の表紙イラストは、アイヌの少女アシㇼパちゃん。
かっこよくてかわいい! となりは、エゾオオカミのレタㇻ。
2018年「手塚治虫文化賞 マンガ大賞」を受賞している。
テレビアニメにもなり、現在放送中だ。
明治時代末期の北海道を舞台にした冒険活劇(けっこうスプラッタ)なのだが、
特筆すべきは、アイヌの少女が副主人公で、アイヌの人々の暮らしぶりや言葉が
ていねいに正確に描かれていること。
それもそのはず、千葉大学教授の中川裕先生(言語学者、アイヌ語研究者)が監修している。
アイヌ語のセリフが、字幕付きで流れてくるアニメって、
日本初じゃないかな。

アイヌは日本の先住民族なのに、文化も言語も
知らなさすぎるよねえ。もちろん、わたしを含めて、だ。
それについては,昨年10月のこのブログにも書いた。

そこでも書いたけれど、アイルランドの第一公用語は、「ゲール語」。
第二公用語が、英語。
ゲール語はケルト民族の言語だが、この言語で会話できる人は、
今では人口の1%も満たないという。
それでも、民族のルーツとしての言語を、一番に持ってくるこの誇り。

うん、日本人だって誇っていい。
ヤマト民族とは違う成り立ちと文化を持つ民族が、
日本の国土にいることを。

第一とはいわないけれど、アイヌ語が第二公用語になったら・・・
日本を見直しちゃう。

アイヌ語や文化に興味のある方、
わたしの『知里幸恵物語』(PHP研究所)の監修協力をしてくださった、
成田英敏先生のマンガ「アコㇿコタン」を見てね。   

   カムイ (2)


Webコミックアクションで、連載中! 
美しい人物デザインと涼やかな自然描写、楽しそうな暮らしぶりが魅力です。


知ってしまったら、元には戻れない

  1. 2018/06/03(日) 16:50:56_
  2. あんな本、こんな本、どんな本?
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『さよなら、田中さん』鈴木るりか・作 西原理恵子・絵 小学館
を読んだ。
田中さん

6年生の花ちゃんのうちは、シングルマザー。そして、いわゆる貧困家庭だ。
それでも、建設現場で働く母は、ガハハと明るくビンボー暮らしを笑い飛ばし、
花だっていつも元気。友達にも信頼されている。

物語には、「今」がいっぱい。
友達の前に、離婚して去ったその友達の父が突然現れたり、
お母さんが再婚を考えたり、
ヒッキーになってしまった大家さんの息子やら、
クラスのなかで痴漢よばわりされてしまった男の子やら、登場する。
そのなかにあって、花ちゃんはいろいろ考え悩むが、
それがものすごく自然体だ。

こういう物語って、ひと昔前だと「ケナゲ感」満載だったり、
ちょっと前だと「ヒリヒリ感」が出てたりするけれど、
どっちも違う。
みずみずしく笑える(「カラッと笑える」のとは、ビミョーに違う)。
泣けてきちゃうのに、「泣かされた」感がない。
 
この物語はかなりの話題作だから、知っている方も多いだろう。
作者は、2003年生まれだ。今、中学二年生。
執筆したときは小学生だった。
うーーむ、舌を巻きすぎて、ぐるぐる三重巻きになってしまった。
世界の作り方、表現の押さえ方、人物の描き方、どれも見事。
最後の章の語り手は、クラスの男子になっている。
これにより、花ちゃん母子のイメージがさらにくっきりしたし、
物語に重みと余韻を与えている。この構成にもびっくり。

「中学生作家」ということを知り、読んだのだが、後悔した。
中学生ということを知らずに、読みたかった。
違う感想になったのだろうか? 
それでも、やっぱり舌はぐるぐる巻いただろうか?
たぶん、巻いただろうな。

こちらも、小学生ちゃんの絵本。
『一日だけうさぎ』原知子・作 こばようこ・絵 くもん出版
 
     うさぎ

 「おはなしエンジェル子ども創作コンクール」の最優秀作品が絵本化されたものだ。
その町には、一年に一度だけ住民全員がうさぎになってしまう日がある。
学校でもみんな、うさぎの姿。
学校のうさぎ小屋のうさぎたちと話ができて、「待遇改善」を求められたり、
授業は体育ばかりだったり、人間目線とは違う一日を過ごす。
物語の終わりは、こんな文章。
「まいとし、うさぎの日がおわると、町がまえよりずっといい町になっている。
わたしはこの町がだいすき!」
なんて素敵、こんな町に住みたいなあ。
うさぎになりたいよ~~~!

作者の原知子さん、これを書いたのは小学校三年生のとき。
かわいくてほろっとさせるこのセンス、すごいねえ。
これも、小学生ということを知らずに読みたかったなあ。

藤井聡太くんだけじゃない。天才は育っている。



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プロフィール

金G亀美

Author:金G亀美
かなじ・なおみ 児童書作家 埼玉県在住。
主な著書に『さらば、猫の手』(岩崎書店)『マタギに育てられたクマ』(佼成出版社)『ミクロ家出の夜に』(国土社)『花粉症のない未来のために』『子リスのカリンとキッコ』(佼成出版社)『知里幸恵物語』(PHP研究所)『私が今日も、泳ぐ理由 パラスイマー一ノ瀬メイ』(学研プラス)『となりの猫又ジュリ』(国土社)『クレオパトラ』(学研プラス)など。
日本児童文芸家協会会員 
童話サークル「かざぐるま」会員
よみうりカルチャー・大宮教室
「童話を書いて楽しもう」講師
イラスト:大塩七華

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