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金亀苑 金治直美ブログ

児童書を追いかける日々

オンライン、子どもたちは

  1. 2021/05/22(土) 11:06:54_
  2. 新しいインクの匂い
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5月21日、わたしが所属する
日本児童文芸家協会の総会が
開催されました。
コロナ禍の緊急事態宣言下ということで、
当協会初のオンラインによる総会となりました。
無事に終わってよかった~~~! 

久しぶりにお顔を見る方もいらして、
対面だったら「わー、元気でした~~?」などと
キャッキャするところですが、
それが叶わないのが辛いところ。

けれども、地方の方にも
時間や交通費の負担をおかけすることなく
集まれるというメリットは、すんごく大きいですね。
それに、「空気を読む」「以心伝心」
「飲みニケーション」の文化が根深く、
同調圧力もめちゃ強い日本においては、
このリモートの波によって
風通しがよくなるかも。
オンライン会議で意思疎通を図るには、
読み取るのは空気ではなく、明快な言葉ですもんね。

とはいえ、子どもの世界ではちょっと違ってきます。
思いをちゃんと言葉として伝えられないのは、
小さい子には当たり前。
どんな気持ちでいるか、
その子の全身から察してあげることは、
とっても重要でしょう。
逆に、子どもたちは、
大人の表情や言葉のニュアンスを、
想像以上に感じ取っているのでしょうね。

そんなことを考えたのは、
『しんぱいせんせい』北川チハル・作 大野八生・絵
を読んだから。

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一年生のたつやは、新任の担任の先生と話ができません。
しゃべろうとすると、声が「ひゅ~、どろん」と消えてしまうの。
心配性の先生は、「だいじょうぶかいなあ」が口癖で、
たつやはそれも苦手。
だれかに心配され、常に確認され続けるのは、
実は大人だって息苦しいはす。
たつやは、先生と目があったときに
先生の「まゆげのおしりがおちていく」のもきらい。
先生の表情の裏にあるものを、
感じ取ってしまうのでしょうね。
ほんまは先生と仲良くなりたいのに・・・。

こういう物語を読むと、
やっぱし学校は対面でなくちゃ! と思います。
オンラインでは乗り越えられないことが、
子どもの世界では大人の100倍1000倍はあるんじゃないかな。

コロナ禍の今はやむを得ないときもあるし、
オンラインでむしろ救われる子もいるかもしれない。
でも、会社員のリモートワークじゃないんだから、
定着はしてほしくないなあ。

給食の「鼻から牛乳」の世界は遠く遠くなりました。
早く、マスクなして授業を受けられて、
転げまわって遊べますように。
牛乳は吹かなくていいけどね。



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中学生の「居場所」

  1. 2020/10/04(日) 14:32:32_
  2. 新しいインクの匂い
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中学生のころ、世界は学校と家、この二箇所しか存在していなかった。
そこしか居場所がなかった。
しかしそこも、けっして居心地のいいものではなく、
わたしはいつもトゲトゲギスギスしていたっけ。
それでも、「居場所」と思えるだけいいのかもしれない。
今、どこにも居場所がないように感じる子たちも多いだろう。
思春期という嵐だけでも持て余すのに、同調圧力というでかい魔物が巣食うこの国で、
中学生は満身創痍の日々を送っているのだろうか。

そんな中学生に、ストレートに響く物語、二つ。
『保健室経由かねやま本館。』松素めぐり 著 おとないちあき 画 講談社


 転校生のサーマは、これまでどおり人気者として、
うまくクラスになじめ、仲良しグループの一員になれた、と思っていた。
なのに、ある日そのグループからハブられ、
保健室に逃げ込むと、隣の【第二保健室】を案内される。
そこは中学生専門の湯治場への入り口だったーー。

そう、もっとも温泉が必要なのは、中学生かもしれない。
温まって心と体をほぐし、出会った人たちと語う、そんな居場所。
自分自身を見つめ直し、再び嵐のなかへ歩み出す勇気を取り戻せる場所。

作者は、この作品で第60回 講談社児童文学新人賞を受賞し、デビューした方。
なんと、この作品は三部作として、一年間に三冊とも出版になるという、
ミラクルな大型新人だ。
設定のおもしろさもさることながら、ぐいぐいするすると先へ読ませる文章、
キャラクターたちのくっきりした存在感も光る。

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二巻目もまたいい。一巻目とまるで違うキャラクター、ストーリーで、「おおっ!」
三巻目は、この秋に出版になるそうだ。
ひゃーっ、ほんとうに新人さんなの? 

「居場所」をめぐる物語、こちらはリアリズムの一冊。そのリアルさがすごい。
『サード・プレイス』ささきあり著  酒井 以 画  フレーベル館

無題

 四編の連作だ。それぞれの主人公である中学生が、
それぞれの重たさを抱え、「第三の居場所」として訪れたのは、
「サプリガーデン」。        」。
ここは公共の施設であり、中高生ならだれでも立ち寄っていい場所。
やってきた中学生たちは、それぞれの自由に時間の過ごし方を見つけ、
楽しめることを探し、それを共にできる仲間やスタッフと出会い、
心をほぐし広げ、立て直していく。

登場人物はどこにでもいそうな中学生。
深刻ないじめや毒親が出てくるわけではない。
だからこそ、リアル。
読み手の心にすんなり入ってくる、
頑なでありながら揺れ動く中学生の思いが、切なくいとおしい。

自分が嫌でたまらなかったくせに、へんなプライドにしばられていた「あの頃」。
こんな物語に出会いたかったなあ。



ふつうって、なに?

  1. 2020/07/26(日) 15:21:38_
  2. 新しいインクの匂い
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二つの作品をご紹介します。

『赤毛証明』 光丘真理 著 くもん出版

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これが表紙なんです。インパクトすごいでしょ。
このブックカバーをはずすと、さらにおもしろいものが現れるの。ぜひ手に取ってみて。

メグは中学一年生。髪の色が生まれつき明るい。
メグはその「赤毛」が地毛あることを学校に証明する『赤毛証明』を
生徒手帳に刻印され、毎朝校門で、先生にそれを見せなくてはならない。
「自分はふつうじゃないの?」メグの思いは広がっていき――。

こんな校則、まだまだあるよね。
自分にとっての「当たり前」が異質なものとされ、
いちいち正当性を証明しなくてはならないなんて、理不尽そのもの。
わたしは、こんな校則を堂々と掲げる学校との
戦いの物語かと思って読み始めました。
でも、そうじゃなかった。戦うのではなく、考える。語る。
車いすバスケットで活躍する幼なじみや、母子家庭に育つ親友、先生、親たち、
それぞれの生き方から自分の思いを掘り下げていく。
そんな物語でした。
さわやかで暖かい「光丘真理」の世界です。

『区立あたまのてっぺん小学校』間部 香代 著 田中 六大 絵

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ナンセンスっぽいファンタジーだな、と思って読み始め、
うん、ナンセンスっぽいファンタジーなんだけど、
こちらも偶然ながら、「ふつう」について思いをめぐらせる物語でした。

二年生の「ぼく」の頭の上に、小さな学校ができていた。
そこではキミドリ色の生き物が、べんきょうしている! 
友だちといっしょに相談に行った先は、区役所。
(そうか、区立小学校だもんね。ここで爆笑)
いつしか、頭の上に小学校があることが、
ぼくやまわりの人たちにとっての「ふつう」になっていく。

日本は民族が二つしかないせいか(そして片方は極端に人口が少ない)、
同調圧力が強く、常に「普通でいなければ」と緊張を強いられています。
特に子どもたちは息がつまるでしょうね。
この二作の「ふつう」をめぐる物語は、やわらかく心をほぐしてくれますよ。



おはなし会に持っていきたい絵本

  1. 2020/07/19(日) 15:41:19_
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コロナ禍がまたもや、「ジョーズ」のテーマ曲のように、迫ってきている感じです。
政府の対応は、最初から今までずっと、オール・トンチキなもので、腹が立つことばかり。

朝、登校時間に外を歩くと、小学生がきちんと間を開けて、マスクをつけて、
黙々と歩いています。
体育は、距離を開けてできる陸上競技が多いとか。
給食もだまって食べ、昼休みも静かに過ごしているんでしょうね。
友だちときゃーきゃーわいわい騒げないなら、
学校行く楽しみって、なくなっちゃうんじゃない?

ごめんね、ごめんね。
笑いあって、くっついて遊びたい盛りの子どもたちに、
こんな「苦行」を強いてしまって。
うちの孫のえむちゃんも、再開した児童館で、
進んでマスクをつけているとか。二歳児なのに(涙)
「夜の街」やら、会食で増えた感染者数を、
子どもたちにどう説明したらいいんやろね。

そんなときに、こんな本で笑わせてもらいました。
『おむすびころりん はっけよい!』森くま堂 作 ひろかわさえこ 絵 偕成社

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 さんかくおむすびにくにと まんまるおむすびのくに。
ふたつのくには、いがみあっています。ついに、ふたつのくには、たたかいに。
とのさまどうしのおすもうで、しょうぶをつけることなり・・・。
 いや~、ストーリー、語り口、ダシャレ、絵、どれも理屈抜きにおもしろい!
 おむずびがおいしそうで、これは「飯テロ」絵本でもあります。
  
おむすびたちが世話をする「畑」の作物にびっくら!
そうそう、こうやってえいやっと余計な理屈を抜いちゃの、
幼年童話や絵本ならではの世界です。 
 
そしてわたしが胸アツだったのは、両国が戦いになったとき、
 おすもう勝負に力自慢の家来が命令されるのかと思ったら、
とのさま自らが土俵に! いいなあ! 
そうですよ、家来に重責を負わしちゃいけませんぜ。

うずうずしてきました。子どもたちに読み語りしたいなあ。
小学校や図書館での「おはなし会」も、3月から休止したままなんです。
再開したら、いの一番にこの絵本を持っていきましょう!


アイヌの村の暮らし、心地よいなあ。

  1. 2019/10/20(日) 14:35:41_
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出ました! 『アココタン』双葉社刊。コミックです。
ピリカ!(いいね!) はい、すごくいい本です。
作者は、成田英敏先生。アイヌ語講師でもあります。

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「アココタン」はアイヌ語で「ふるさと」という意味。
この作品は、アイヌの村の日常を淡々と、丁寧に丁寧に描いています。
熊を狩って「神さま」としてお迎えする日。
ひいおばあちゃんの昔話に聞き入るきょうだい。
妹が生まれる日。山菜採り。遊びと手仕事。
風俗や習慣はシサム(和人)と多少違っていても、
流れる家族愛や日々の暮らしを愛しむ思いは、同じ。
ああ、いいなあ、こんな村で暮らしたいなあ。
会話にたくさんのアイヌ語が出てくるのも魅力。
また、少年少女が物語の中心なので、とても読みやすく、
小学校高学年なら読めるでしょう。
こんな本、これまでなかったなあ。

絵もすごく魅力的、キレイですねえ。

    DSC_0483.jpg

アイヌの文化歴史には身分の上下がありません。
だから、「王」がいない、したがって搾取されることがない、
私有財産がとても少ないので、取り合いして戦争が起こることもない、
そんな文化をうらやましく思います。
飢えや自然災害や病気に泣くことはたくさんあったでしょうけれど、
なに、そんなの現代だって山ほどあるじゃないですか!
なにより、こんなふうに自然の一部として暮らしていくなら、
核の恐怖や地球温暖化などとは、無縁なのは間違いありません。

一番怖いのは、人間です。
アイヌ民族は、あまりに小さな村単位の平和な暮らしであっため、
時代が下るにつれてどんどん和人から搾取、迫害されていきました。
その差別は現代でも消えていません。
この作品では、プロローグとエピローグに現代の少年少女を登場させ、
迫害の歴史や今も続く差別について理解し
考えることができる構成になっています。

成田先生は、わたし受講したアイヌ文化を学ぶ講座の講師でした。
「PARC自由学校」という、小さな市民学校でした。
そこで、アイヌ語の文法や単語はもちろん、アイヌ料理の調理実習や
ムックリの演奏実習、アイヌ文様の刺繍実習など、
楽しいことをたくさん教えてもらいました。
(でも、アイヌ語はさっぱり身につかなかった! 先生、ゴメンナサイ)

 ムックリと、
ぶきっちょなわたしがひいひいいいながら縫ってアイヌ文様の刺繍した、ムックリの袋
   
     DSC_0472.jpg

わたしはそのころ、アイヌの女性・知里幸恵の伝記を書きたくて、
でも出版のあてがなくて、悶々としていました。
今は、アイヌ文化を吸収するべき時期なのかも、と気持ちを切り替えて、
この教室へ通うことにしたのです。
その後、運よくPHP研究所から出版されることになり、
監修協力を迷わず成田先生にお願いしました。
もうお一方の監修協力者、知里幸恵さんの姪御さんにあたる知里(横山)むつみさんと共に、
成田先生はわたしの危なっかしいアイヌ文化の理解を助けてくださいました。

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その恩ある成田先生の著書を、こうして拝読できて幸せです。

とまあ、わたしの個人的な事情はさておき、
この本はアイヌの暮らしを味わう決定版かと思います。
ぜひご一読を。

巻末の参考文献・資料一覧にもびっくり! 延々4ページにわたってびっしり書名が。
成田センセー、すごいっす。

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プロフィール

金G亀美

Author:金G亀美
イラスト:大塩七華
かなじ・なおみ 児童書作家 埼玉県在住。
主な著書に『さらば、猫の手』(岩崎書店)
『マタギに育てられたクマ』(佼成出版社)
『ミクロ家出の夜に』(国土社)
『花粉症のない未来のために』
『子リスのカリンとキッコ』(佼成出版社)
『知里幸恵物語』(PHP研究所)
『私が今日も、泳ぐ理由 パラスイマー一ノ瀬メイ』
(学研プラス)
『となりの猫又ジュリ』(国土社)
『クレオパトラ』『マイヤ・プリセツカヤ』(学研プラス)
『読む喜びをすべての人に 
日本点字図書館を創った本間一夫』
(佼成出版社)など。
日本児童文芸家協会会員 
童話サークル「かざぐるま」会員

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