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金亀苑 金治直美ブログ

児童書を追いかける日々

デビューおめでとうございます!

  1. 2016/07/10(日) 10:49:08_
  2. 新しいインクの匂い
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おめでとうございます! デビュー作の二冊をご紹介。

こりゃまた、ユニークな絵物語が登場したもんだ!
この世界の広がりと空気感、タダモノではないぞ。
『せなかのともだち』作・萩原弓佳 絵・洞野志保 PHP研究所

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な~んて、初めて読んだようなことを書きましたが、
実は児童文芸家協会主催の、
2014年「創作コンクールつばさ賞」童話部門の優秀賞受賞作。
同年の雑誌「児童文芸」10、11月号に発表されています。
いやー、おもろい物語が受賞したなあ、さすが「つばさ賞」。
出版化されたらいいなあと願っていたのですが、
ついに出ました! 

うっかりヒツジの背中に転落したハリネズミ、
わが身のハリとヒツジのフワフワの毛がからまって、
どうしても離れられなくなります。けれどもこの二匹、実は性格が悪くて・・・。

ね、すごい設定でしょ。
絵も日本風の愛らしさではないちょっとふしぎなリアルさ、
スロバキア在住の画家さんだそう、なるほどなるほど。
主人公二ひきの目つきといったら、なんてカワイクナイこと。
でも、物語の世界にぴったりはまっています。

『モツ焼きウォーズ ~立花屋の逆襲~』
作・ささきかつお 絵・イシヤマアズサ ポプラ社

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「さすがやなあ、この安定感があり、
かつテンポのいいおもしろさは!」とうなってしまいました。
作者のささきかつおさんは、編集者を経て、ライター、書評家をされている方。
しかも、「第五回ポプラズッコケ文学新人賞受賞作」ですから、
おもしろくないわけがありません。
商店街の存続をかけて、モツ焼き屋の立花屋が
再開発推進派に戦いを挑みます。
タケルはその立花屋の四代目。物語は、立花家のルーツにまで遡り・・・

商店街って、いいよね!
たとえ巨大ショッピングモールがあったとしても、
商店街のない街とは、なんと寂しいものでしょう。
おっちゃんおばちゃんの威勢のいい掛け声は、日本のお宝。
 登下校の見守り役をさりげなくこなし、街の治安にも貢献してくれます。

がんばれ、タケル! さて、商店街は、立花屋の運命は? 
この戦いに勝ち目はあるのか? 

ジャンルも作風もまるで違う二冊のデビュー作、
どっちもたっぷり堪能させていただきました。
萩原さん、ささきさん、おめでとうございます!
ちなみに、ささきさんのお連れ合いは児童書作家のささきありさん。
めおと作家の誕生です。


今年の児童文芸家協会の賞です

  1. 2016/05/22(日) 15:22:48_
  2. 新しいインクの匂い
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一年で一番長い日が近づいてまいりました!
5月26日の日本児童文芸家協会の、総会・贈呈式・懇親会です。
総会の前には、「サークル交流会」を開催、
さらにその前にもややこしい会議があるので、
5つのイベントがぎっしりです。
体力を温存しとかないと!

贈呈式は、児童文芸家協会賞、児童文芸新人賞、児童文芸幼年文学賞、
そして児童文化功労賞の4賞を贈呈します。

今年の児童文芸家協会賞は、「ひかりあつめて」
杉本深由起・著 いわさきちひろ・装画 小学館

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これは、詩集です。そして、物語でもあります。
「ことばのチカラでいじめを超える!」とあります。
転校してきた学校には、いじめにあっている女の子がいて、
やがてそのターゲットは主人公に移り――。
柔らかく、まっすぐに芯を突くことばでつづられた詩の数々。
絶望のなかに見出す、小さな希望のひかりが、
ほっかりと胸に染みわたっていきます。
詩集はなかなか商業出版にならない時代に、
この本の存在自体に拍手したくなります。
いじめをめぐる長い物語では重すぎて開けないという人にこそ、
読んで味わっていただきたい作品です。

そして、今年誕生したのが、児童文芸幼年文学賞。
隔年で、優れた幼年童話・絵本に与えられます。
第一回目の受賞作が、「ミルクが、にゅういんしたって?!」
野村一秋・著 ももろ・絵 くもん出版

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ハムスターの死を「入院」といつわる先生。
そう、先生だって、嘘をつく。
この設定、元小学校の教師である作者ならではかもしれません。
それぞれの胸に、いっぱいいっぱいの秘密や心配をかかえる先生と子どもたち。
そこからにじんでくる優しさ。子どもたち、そして先生の心の成長。
質の高い幼年童話とはこういうものなんやなあ・・・。

新人賞はこの2作。
「いくたのこえよみ」堀田けい・著 理論社
「しゅるしゅるぱん」おおぎやなぎちか・著 福音館

この2作、まるでちがう味わいで、どちらもびっくりのおもしろさです。

26日、これらの作品の作者さんが勢ぞろいします。忙しくも楽しみな一日です。 
受賞されたみなさま、おめでとうございます!


にじみ出るもの

  1. 2016/05/02(月) 15:37:45_
  2. 新しいインクの匂い
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 作家さんのお人柄は、どのくらい作品ににじみ出るものなのだろう。
この二冊の新刊、どちらもすごくおもしろくて、
どちらも作者さんのお人柄を感じた作品だ。

『ま~だだよ』 間部香代・作 ひろかわさえこ・絵 すずき出版

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 幼児向け絵本の王道を行くような作品だ。
絵とも素晴らしくよく合っている。
 おかあさんとかくれんぼをしているこぶたくん、
 もぐらくんやかえるさんやりすくんと出会い、
「かくれんぼしよう」とさそうけれど、
「もうすこしねてからね」とか「デザートまでたべおわったらね」。
まずやんわりと待たされるのだ。
すぐに「わーい、やろうやろう」という展開にはならない。
それぞれ、カエルさんにはカエルさんの、
りすさんにはりすさんの生活スタイルがあるのだ。
そこがいいな~。
作者の香代さんは、オシャレ感薫るハイセンスな個性の持ち主。
この愛らしい作品にも、それぞれの「生活スタイルを尊重する」というあたりに、
香代さんの個性、お人柄がにじみでているのはないかな。《けれびあ~ん!》

『めざせスペシャルオリンピックス・世界大会! がんばれ、自閉症の類くん』
   沢田俊子・著 文研出版

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こちらも、王道を行くノンフィクション作品だ。
 自閉症と診断された類くんは、
「大人になっても、知能の社会性も小学校低学年のまま」といわれていたが、
大好きなお友だちとの関わりのなかでどんどん成長し、
とても無理と思われた普通高校への進学をはたす。
そして、乗馬を始め、スペシャルオリンピックス(知的障がい者のためのスポーツ大会)の
世界大会をめざすようになる――といういわば「奇跡の物語」だ。
物語は、たくさんのエピソードが連なっている。
胸が熱くなり涙腺決壊したこと数回、
壮絶ないじめシーンですうっと血の気が引くこと数回。
取材時、類くんやご家族がよくここまで話してくれたもの、と思う。
作者の沢田さんは、きっとたくさんのたくさんの愛をこめて、
類くんやお母さんに会いにいったのだろう。
沢田さんのお人柄が、これだけの取材内容を引き寄せたのは
間違いないだろう。

さて、明日の5月3日から5日まで、
上野で「上野の森 親子フェスト2016」が開催されます。
児童書の出版社70社が出展する、子どもの本のお祭です。
五万冊もの児童書を謝恩価格で販売、講演会や読み聞かせもありますよ。
わたしの所属する日本児童文芸家協会も、
5月4日に出展しまーす! 遊びに来てくださいね!




作家さんてすごいなあ

  1. 2016/04/03(日) 15:18:22_
  2. 新しいインクの匂い
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「書く」エネルギーについて、襟を正してくれた新刊書をご紹介する。

「ガラスの壁のむこうがわ」せいのあつこ著、北澤平祐絵、国土社

           9784337187597[1]
           
この本がデビュー第一作。
由香は友だちができず、休み時間には一人で本を読む。
先生や母親が発する「友だちをつくろうね」ということばが、
ガラスの豆となって、ぱしぱしとぶつかってきて、痛い。
「普通の子になりたい」と悩む由香。

この本を読んだたくさんの女の子が、
「わたしのことだ」と思ったことだろう。
「暗くて何考えているのかわからない」といわれている子だけじゃなくて、
「明るくて活発」と思われている子も。
そういう子って、そのイメージをキープするのに、
実はものすごくエネルギーを使い、疲れ果てているのかもしれないもの。

こういう物語を書くには、パワーがいるのだろうな、と思う。
やっぱり、明るくて楽しい話は、書いていても楽しい。
反対に、心の底に深く深く降りていくような物語は、
ひたひた深い湖のような静かな精神力が必要だろう。
ガラスの壁やガラスの豆、その透明で繊細な感覚を保つのに、
作者はどれだけのパワーを維持したことか。
「自分はどうよ? こんな精神力を持っているかい?」
自分につきつけてみた。

「天国にとどけ! ホームラン」
3・11を乗りこえて、バッティングセンターを作った父子の物語」
漆原智良・作 羽尻利門・絵 小学館

                09289747[1]

大ベテラン、大先輩作家の先生が描くノンフィクション。
震災で家族を失い、二人だけ残された父子の実話だ。
野球少年の息子と元高校球児の父が、悲しみと喪失感から立ち直り、
バッティングセンター設立のために動き出す。

まず、父親が体験した津波のシーンがすごい。
読むうちにこっちの足が冷たくなってしまった。
この父子の失くしたものの大きさに、愕然となる。
妻(母)、二人の娘(妹)、妻の両親(祖父母)や親戚など、
なんと一度に7人もの大切な人を失くされているのだ。
前を向いて歩き出すまでに、
どれだけの涙があったことだろう。

辛い話を取材するのは、辛い。
漆原先生は、どれほど心を痛めながら取材されたことだろう。
けれども作品は、その辛さに埋没することはない。
前面に描かれているのは、希望の光と人間の力強さだ。

新人さんと大ベテラン先生、その精神力と筆力に、
「作家さんてすごいなあ」と、
同業者のはしくれであることを忘れ、つぶやいた春。



何度でも語ろう

  1. 2015/07/19(日) 18:09:40_
  2. 新しいインクの匂い
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何回も書いているが、わたしが一番恐いものは、戦争だ。
今回の安保法案を国会で審議している期間、
わたしは雑誌の仕事で、太平洋戦争末期、
レイテ島の戦いから生きて戻った兵士の方から話を伺い、
小学生向きの物語にまとめていた。
自分にできることをせいいっぱいやろうと思った。

書きながら、腹がたってしかたがなかった。
太平洋戦争では、食糧や武器の補給がないがしろにされていたことは、
テレビの特集番組などから知っていた。
けれども、これほどだとは。
武器を支給されないままフィリピンに輸送され、
現地で渡されたのはアメリカ軍からの分捕り品の、
持ち運びがたいへんな迫撃砲(小型の大砲のようなもの)だったそうだ。
しかも、弾薬は二発。
これでどうやって戦えというのだ?

勝てるわけがない、愚かしい戦争だった。

いや、待て。では、勝てる戦争ならやっていいのか?
だめだろ!
愚かではない、賢い戦争ってあるのか?
ないだろ!
その思いに何度でも立ち返り
何度でも戦争を語ろう。

大ベテラン作家・詩人のこやま峰子さんの新しい絵本
「いのりの石」(絵・塚本やすし)フレーベル館
石
(この本だけ、大きい画像が見つからず、申し訳ない)

1945年8月6日、ヒロシマ。
人類史上もっとも恐ろしい「あのとき」を語るのは、
広島市内の路面電車の「敷石」だ。
敷石たちはその後、観音様の像を刻まれて、
平和のメッセンジャーとなり、世界中へ送り出される――。

文字通りコツコツと、平和への祈りを刻みつけること。
その思いを世界の人々と共有すること。
それこそが「抑止力」と思うのだが。

さて、隠し方などが戦争とよく似た構造といわれる原発問題。
まだなにひとつ解決してはいないのに、
意図的に忘れ去りたい人がいそうな気配。
これでは悲劇が何度でもくりかえされてしまうじゃないか。

「あきらめないことにしたの」堀米薫・著 新日本出版社

                  あきらめない

 原発事故で故郷を追われた、福島県飯舘村の人々。
 畑から切り離され、取り組んできた新しいじゃがいもやかぼちゃの栽培を
中断しなくてはならない。
でも、福島のかーちゃんたちは、前を向く。

「あきらめないことにした」という言葉に、
「あきらめない」よりも、
原発事故後の終わりのない苦しみと逡巡の末の決意を感じた。


語り継がなくてはならないこと、もう一つ。
「ど根性ひまわりのき~ぼうちゃん」
漆原智良・著 さくらせかい・絵 第三文明社

    きーぼう


被災地の瓦礫のなかから芽を出し、花をつけ被災地の人々を
励ました一本のひまわり。
この種が、学校で職場で植えられ、花が咲く。
種は日本中へ広がり、やがて世界へ。
それにしても、人間はほんとうに忘れっぽい。
日本中が「がんばろう」と絆を強めたあの三月は
どこへ行った?
き~ぼうの根性と太陽に向かう姿が、
それを思いださせてくれる。

語りつぐ物語、ぞくぞく誕生だ。




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プロフィール

金G亀美

Author:金G亀美
イラスト:大塩七華
かなじ・なおみ 児童書作家 埼玉県在住。
主な著書に『さらば、猫の手』(岩崎書店)『マタギに育てられたクマ』(佼成出版社)『ミクロ家出の夜に』(国土社)『花粉症のない未来のために』『子リスのカリンとキッコ』(佼成出版社)『知里幸恵物語』(PHP研究所)『私が今日も、泳ぐ理由 パラスイマー一ノ瀬メイ』(学研プラス)『となりの猫又ジュリ』(国土社)『クレオパトラ』『マイヤ・プリセツカヤ』(学研プラス)『読む喜びをすべての人に 日本点字図書館を創った本間一夫』(佼成出版社)など。
日本児童文芸家協会会員 
童話サークル「かざぐるま」会員
よみうりカルチャー・大宮教室
「童話を書いて楽しもう」講師

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