金亀苑 金治直美ブログ

児童書を追いかける日々

文字によって失うものもある

  1. 2017/09/10(日) 15:39:45_
  2. 読み語りは楽しいな
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もらっちゃった。かわいいお手紙。
小学二年生の女の子から。

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わたしの本「逢魔が刻のにおい」(学研)がおもしろかったって!うれしいなー。
でも、この本、中学年向きでわりと長いんだけど・・・
と思ったら、「まい日ねるまえにお母さんがよんでくれる」んだって!
いいなあ。素敵な母娘さんにこの本を選んでもらえて、幸せだなあ。

大人はついつい、小学生なら、いや、幼稚園児であっても、
早く自分で読んでほしいと思いがち。
でも、ゆっくりでいい。
耳から入る文章を頭のなかで映像化するおもしろさを、まず感じてほしい。
だって、人類の進化の道すじは、そうだもの。
ことばがあり、絵や図形や造形があり、それから文字だもの。

文字を持たない民族は世界中にたくさんある。
記憶力がすごくいいらしい。
アイヌの人々もそうだった。
三日もかかる長大な英雄叙事詩をよどみなく語ることができた。
ケルトの民には、吟遊詩人というロマンに満ちた職業があった。
アイヌと同じく、膨大な詩物語をそらんじていたのだろう。
数年前に訪れたモンゴルも、その昔は文字を使っていなかった。
たまたまかもしれないが、ツアーのガイド嬢は記憶力抜群で、
電話番号のメモなど不必要、すぐに覚えてしまうから、とのこと。「みんなそうですよ」だって。
モンゴルの力士たちがみな驚くほど日本語の習熟が巧みなのも、
無関係ではないかも。

人類が文字を持つことによって、失うものもあるに違いない。
記憶力や音声からのイメージ力やら。

図書館へ絵本の読み語りボランティアに向かうと、
絵本を一心に「読んでいる」小さい子がいる。
小さな声で、たどたどしく文字を読んじゃっているのだ。
「おばちゃんが読んであげようか」というと、
ママから「自分で読めるからいいです」なんてやんわりと断られるときもある。
あらら、残念。でも無理強いは禁物だ。

なかには、「読んで」と差し出してくれる子もいる。
ゆっくり読み語ると、おお、目線はちゃんと絵に注がれていて、満面の笑顔。
そう、絵本の場合、字を読んでしまうと、
絵のおもしろさをつかみ取る力が弱まるのですわ。
大人も同じ。ほかに人に読んでもらうと、絵本は2倍おもしろいですよ。
絵の魅力、細部にこめられた画家さんのこだわりや遊び心が見えてくる。

できたら一対一か一対二くらいの少人数で、
ゆっくり絵を楽しめるスピードがいいな。

もし、図書館などで絵本の読み語りをしているところに行き会ったら、
どうぞ子どもたちにまぎれこんで、
絵と、耳から受けとる情景を楽しんでみてくださいな。

わたしの好きな、細部も楽しめる絵本 

『かいじゅうじまのなつやすみ』 風木 一人 作 早川 純子 絵 ポプラ社

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『ちょろりんのすてきなセーター』 降矢なな 作・絵 福音館

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『ちゃんがら町』 山本孝 作・絵 岩崎書店

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『魔女ひとり』 ローラ・ ルーク S.D. 作 シンドラー 絵 小峰書店

無題

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衿を正されます

  1. 2016/11/27(日) 18:01:08_
  2. 読み語りは楽しいな
  3. _ tb:0
  4. _ comment:0
このところ、気になっている絵本があります。
『だれがいちばんはやいかな』マイケル・グレイニエツ作 絵本館

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遠目の効くダイナミックな絵とシンプルなストーリー、
いとうひろしさんの訳も絶妙で、
読み語りボランティアでよく使うのですが・・・。

うまやうさぎ、ねこ、にわとりといっしょにかけっこをすることになった、
かたつむり。定石どおり、ほかのどうぶつたちは油断して道草をくい、
かたつむりが一番に。

「こんなのおかしいよ。かたつむりが いちばんのはずないよ」
納得いかないどうぶつだちは、もう一回勝負しよう、といいだします。
今度は、自分の家に一番先に着いたものが勝ち、というルールです。

「かたつむりは、どこにもいかないで よかったんです。
 ぬるっと からにはいれば、そこはもう じぶんのいえ。
 こんども かたつむりがいちばんでした。」

ああ、よかった! となるはずなのですが――。
このラストで子どもたちから、
「かたつむり、ずるーい!」という声が出ることがあるのです。
子どもたちの目線が、かたつむりになっていないんですね。
読み手のせいなのか、子どもたちの年齢と環境に合っていないのか・・・。

そういうときは、「そうお?」と流すだけにとどめるべきなのですが、
あるとき、2,3人の男の子の「ずるーい!」の合唱があんまり大きかったので、
ついうっかり「でも一度目だって、ちゃんと勝ってるんだよ? 
ずるいのは、ほかのどうぶつたちじゃない?」などと反論してしまいました。
ああ~、大失敗。

先週の市内の全校おはなし会でも、二年生の教室でこの本を使いました。
今日はどうかな、とどきどきしながら。

「こんども かたつむりがいちばんでした。」

一人の男の子のうれしそうな声。「そういうことか!」
みんな、とっても胸に落ちた、いい笑顔でした。
よっしゃ! こんな瞬間が、ボランティアのエネルギー源です。

同じく二年生に、「いがぐり星人グリたろう」を読みました。
大島妙子 作・絵 あかね書房
  
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地球に不時着した宇宙船には、クリみたいな小さな宇宙人が。
いっしょに暮らすうちに、その「グリたろう」は大切な家族の一員に。
でも、ある日空からグリたろうの家族が迎えに来て・・・。
別れを告げるグリたろうを、両手に包み込んだ「ぼく」。

ぼくは、この手を ギュッと とじたまま はなせない。
だって、はなしたら さいご。グリたろうが かえっちゃう。

何度読んでも胸がつまります。
この短いフレーズに、なんとたくさんの思いが詰まっていることか。
女の子が涙ぐんでくれたことも。

物語っていいなあ。絵本っていいなあ。
読むたびに襟を正されます。


希望と願いの輝き

  1. 2016/03/28(月) 11:13:09_
  2. 読み語りは楽しいな
  3. _ tb:0
  4. _ comment:0
埼玉の女子中学生が、二年ぶりに保護された。
誘拐され、二年間監禁されたすえ、
自力で脱出、保護を求めたという。

この娘さんの家は同じ県内であり、近所の公共施設に
安否情報を求めるポスターが貼られていたので、
目にするたびにご両親の苦しみを思い、無事を願っていた。

ああ、助かってほんとうによかった。
二年間の監禁のあいだに、希望を失わず、
「家に帰るんだ」という意志を保っていくことは、
想像以上に強い精神の力が必要だったことだろう。

こんな絶対に許せない事件を引き合いにして絵本を紹介することを、
お許しいただきたい。
かたや凶悪犯罪の被害者、絵本のストーリーはどちらかというと、偶発的な事故だ。
けれども、ためらいながらも書くことにしよう。
幼児向けの絵本であっても、人生の悲哀と希望を語ることにおいては、
一般文学となんら変りはないのだから。

古典名作絵本、「ロバのシルベスターとまほうの小石」
ウィリアム・スタイグ 文・絵 評論社

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ロバのシルベスターは、山の中で魔法の小石を見つけ、
その力でうっかり岩になってしまう。
家に帰れず、元の自分に戻る望みもないまま月日が過ぎて・・・
翌年の春、両親が、シルベスターと知らずに岩のところにやってくる。
シルベスターは願う。
「ああ、もとのぼくになりたい。ああ、ほんとのぼくに もどりたい!」
そして、願いが通じ、大団円。

シルベスターの悲痛な思い、両親の嘆き、その両方が心にずしずし迫ってきて、
何回子どもたちの前で読み語っても、涙が出そうになる。

埼玉のこの娘さんも、強く願ったのだろう。
「ほんとうのわたし、両親の元で学校に通う、
中学生のわたしに戻りたい!」と。

希望。願い。ありきたりのことばであるが、
失わずに保つことの大きさと輝きを感じさせてくれた。

この娘さんの心の傷ができるだけ癒えますように。

シルベスターのぬいぐるみ、持ってます。手にしているのが、まほうの小石。

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岩になった姿。ロバのおなかにファスナーがあり、
しまってある布を引っ張り出してかぶせると、岩に。

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素敵なクリスマス絵本

  1. 2015/12/24(木) 18:15:03_
  2. 読み語りは楽しいな
  3. _ tb:0
  4. _ comment:0
さて、金亀が毒づく時期です。
「どうしてこう、どこもかしこもクリスマス一色なんだー!
早く正月飾りを出せー!」
 ハイ、クリスマスの飾りよりお正月のお飾りや門松が好きです。

この時期、ボランティアの絵本の読み語りに、実は悩みます。
選ぶ絵本にはできるだけ季節感を取り入れたいので、
12月はやっぱりクリスマス絵本になりますが、
読み語りに向く絵本が意外と多くはないのです。
いい絵本がない、という意味ではありませんよ。
あくまでも一期一会の大人数の読み語りにはしっくりこない、という感じ。

日本はキリスト教国ではないので、
イエスさま生誕の物語は
ちょっと空気が合わない感じがします。
それよりも、クリスマスという文化の一側面を
クローズアップさせた物語のほうが、子どもたちの胸に落ちるようです。

わたしが好きなクリスマス絵本です。

「ペチューニアのクリスマス」 ロジャー・デュポワザン作・絵
 佑学社・復刊ドットコムから復刊

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 ご存知、古典名作、ガチョウのペチューニアのシリーズ。
ペチューニアが一目ぼれしたガチョウが、クリスマスにお料理される運命に! 
ペチューニアは彼の救出作戦を練りますが・・・。
 
「ハモのクリスマス」 たかお ゆうこ 作・絵 福音館
               無題

 ハムスターのハモは、家のすみで小さな女の子の人形を見つけます。
 女の子は、以前は高い木の上で、たくさんの仲間といっしょにいたといいます。
ハモはその場所を探し歩きますが、そこは・・・。絵も美しく温もりいっぱい。かわいいでしょー!

「ひゃくおくまんのサンタクロース」 
 もたいひろこ 作・マリカ・マイヤラ 絵  アノニマ・スタジオ

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たった一人でがんばっていたサンタクロース。でもあまりに忙しくなったので、
神様が二つに分けて二人のサンタクロースに。やがて四人に、八人に。そして・・・
「サンタさんってほんとうにいるの?」という永遠のクエスチョンに答えてくれ、
大人も納得。サンタさん、ホントにいるんですよ!

さて、今年はあと一週間。
よいお年をお迎えください。



子どもたちによる読み語り、いいね!

  1. 2015/11/01(日) 17:33:06_
  2. 読み語りは楽しいな
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今日は、ちょいとおもしろいイベントがあった。
地元図書館での「小・中学生による読み聞かせ」だ。
小・中学生が絵本や紙芝居の読み方を練習し、
図書館の来館者の前で発表するというもの。
演者となる子どもたちは、事前の募集により集まってくる。
今年で10回目くらいになるらしい。

読み方の指南役は、市内の読み語りボランティアサークルの会員だ。
わたしも、そういったサークルの一員なので、
図書館司書さんの呼びかけにより、参上した。

練習は一週間前。マンツーマンで、絵本の持ち方から
ページのめくり方、声の出し方、読むスピード、感情の込め方などを、
先輩ヅラしてレクチャーしてきた。

今日がその発表の日だ。
集まったギャラリーは三十人ほど(読み手である子どもたちのパパママもたくさん)
わたしが担当したのは、中学一年生のお嬢さん。
よく通るきれいな声で、お客さんたちにしっかり目線を向けながら、
上手に読んでくれました!
どのお子さんも例外なく、下を向かない、声がよく出る、そして噛まない。
子どもって、つっかえるのが当たり前だろうにね。たいしたもんです。
本が好きなんでしょうね。

演者は、全部で9人。
読むものは、自分で選んで持参する。
「ぐりとぐら」「ペレのあたらしいふく」「おまたせクッキー」
「めっきらもっきらどおんどん」「どんくまさん」「そらいろのたね」など、
どれも、読みつがれている名作絵本だ。
子どもたち、小さいころに読んでもらった絵本を選んだのだろう。
絵本は、二代、三代と受け継がれていく。いいなあ。
何十年も愛されるものを産みだしていく絵本作家さんって、
なんて素敵なお仕事だろう。

しかしながら、危機感がひしひしと。
指南役のボランティアたち、
高齢化が著しいのだ(もちろんわたしも含めて)。
後継者がいないぞ。10年後がコワイ。
若い人たちは、仕事でいっぱいいっぱいなのだろう。
ママもパパも子育てと仕事を両立し、
さらにこういった地域活動にほんのちょっとでも
加われるような、ゆとりのある社会になったらいいのになあ。


「おまたせクッキー」パット・ハッチンス作・絵 偕成社
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 これ、実は、もんのすごくスリリングで、ドキドキするおはなしなんですよ! ホント。

「ペレのあたらしいふく」エルサ・ベスコフ作・絵 福音館
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自分の力で、なにかを得ること。今の子どもたちにはとっても新鮮でしょうね。
でもって、得るのはモノだけじゃないんだってわかります。


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プロフィール

金G亀美

Author:金G亀美
かなじ・なおみ 児童書作家 埼玉県在住。
主な著書に『さらば、猫の手』(岩崎書店)『マタギに育てられたクマ』(佼成出版社)『ミクロ家出の夜に』(国土社)『花粉症のない未来のために』『子リスのカリンとキッコ』(佼成出版社)『知里幸恵物語』(PHP研究所)『私が今日も、泳ぐ理由 パラスイマー一ノ瀬メイ』(学研プラス)など。
日本児童文芸家協会会員 
童話サークル「かざぐるま」会員
よみうりカルチャー・大宮教室
「童話を書いて楽しもう」講師
イラスト:なかむらしんいちろう

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