金亀苑 金治直美ブログ

児童書を追いかける日々

衿を正されます

  1. 2016/11/27(日) 18:01:08_
  2. 読み語りは楽しいな
  3. _ tb:0
  4. _ comment:0
このところ、気になっている絵本があります。
『だれがいちばんはやいかな』マイケル・グレイニエツ作 絵本館

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遠目の効くダイナミックな絵とシンプルなストーリー、
いとうひろしさんの訳も絶妙で、
読み語りボランティアでよく使うのですが・・・。

うまやうさぎ、ねこ、にわとりといっしょにかけっこをすることになった、
かたつむり。定石どおり、ほかのどうぶつたちは油断して道草をくい、
かたつむりが一番に。

「こんなのおかしいよ。かたつむりが いちばんのはずないよ」
納得いかないどうぶつだちは、もう一回勝負しよう、といいだします。
今度は、自分の家に一番先に着いたものが勝ち、というルールです。

「かたつむりは、どこにもいかないで よかったんです。
 ぬるっと からにはいれば、そこはもう じぶんのいえ。
 こんども かたつむりがいちばんでした。」

ああ、よかった! となるはずなのですが――。
このラストで子どもたちから、
「かたつむり、ずるーい!」という声が出ることがあるのです。
子どもたちの目線が、かたつむりになっていないんですね。
読み手のせいなのか、子どもたちの年齢と環境に合っていないのか・・・。

そういうときは、「そうお?」と流すだけにとどめるべきなのですが、
あるとき、2,3人の男の子の「ずるーい!」の合唱があんまり大きかったので、
ついうっかり「でも一度目だって、ちゃんと勝ってるんだよ? 
ずるいのは、ほかのどうぶつたちじゃない?」などと反論してしまいました。
ああ~、大失敗。

先週の市内の全校おはなし会でも、二年生の教室でこの本を使いました。
今日はどうかな、とどきどきしながら。

「こんども かたつむりがいちばんでした。」

一人の男の子のうれしそうな声。「そういうことか!」
みんな、とっても胸に落ちた、いい笑顔でした。
よっしゃ! こんな瞬間が、ボランティアのエネルギー源です。

同じく二年生に、「いがぐり星人グリたろう」を読みました。
大島妙子 作・絵 あかね書房
  
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地球に不時着した宇宙船には、クリみたいな小さな宇宙人が。
いっしょに暮らすうちに、その「グリたろう」は大切な家族の一員に。
でも、ある日空からグリたろうの家族が迎えに来て・・・。
別れを告げるグリたろうを、両手に包み込んだ「ぼく」。

ぼくは、この手を ギュッと とじたまま はなせない。
だって、はなしたら さいご。グリたろうが かえっちゃう。

何度読んでも胸がつまります。
この短いフレーズに、なんとたくさんの思いが詰まっていることか。
女の子が涙ぐんでくれたことも。

物語っていいなあ。絵本っていいなあ。
読むたびに襟を正されます。

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希望と願いの輝き

  1. 2016/03/28(月) 11:13:09_
  2. 読み語りは楽しいな
  3. _ tb:0
  4. _ comment:0
埼玉の女子中学生が、二年ぶりに保護された。
誘拐され、二年間監禁されたすえ、
自力で脱出、保護を求めたという。

この娘さんの家は同じ県内であり、近所の公共施設に
安否情報を求めるポスターが貼られていたので、
目にするたびにご両親の苦しみを思い、無事を願っていた。

ああ、助かってほんとうによかった。
二年間の監禁のあいだに、希望を失わず、
「家に帰るんだ」という意志を保っていくことは、
想像以上に強い精神の力が必要だったことだろう。

こんな絶対に許せない事件を引き合いにして絵本を紹介することを、
お許しいただきたい。
かたや凶悪犯罪の被害者、絵本のストーリーはどちらかというと、偶発的な事故だ。
けれども、ためらいながらも書くことにしよう。
幼児向けの絵本であっても、人生の悲哀と希望を語ることにおいては、
一般文学となんら変りはないのだから。

古典名作絵本、「ロバのシルベスターとまほうの小石」
ウィリアム・スタイグ 文・絵 評論社

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ロバのシルベスターは、山の中で魔法の小石を見つけ、
その力でうっかり岩になってしまう。
家に帰れず、元の自分に戻る望みもないまま月日が過ぎて・・・
翌年の春、両親が、シルベスターと知らずに岩のところにやってくる。
シルベスターは願う。
「ああ、もとのぼくになりたい。ああ、ほんとのぼくに もどりたい!」
そして、願いが通じ、大団円。

シルベスターの悲痛な思い、両親の嘆き、その両方が心にずしずし迫ってきて、
何回子どもたちの前で読み語っても、涙が出そうになる。

埼玉のこの娘さんも、強く願ったのだろう。
「ほんとうのわたし、両親の元で学校に通う、
中学生のわたしに戻りたい!」と。

希望。願い。ありきたりのことばであるが、
失わずに保つことの大きさと輝きを感じさせてくれた。

この娘さんの心の傷ができるだけ癒えますように。

シルベスターのぬいぐるみ、持ってます。手にしているのが、まほうの小石。

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岩になった姿。ロバのおなかにファスナーがあり、
しまってある布を引っ張り出してかぶせると、岩に。

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素敵なクリスマス絵本

  1. 2015/12/24(木) 18:15:03_
  2. 読み語りは楽しいな
  3. _ tb:0
  4. _ comment:0
さて、金亀が毒づく時期です。
「どうしてこう、どこもかしこもクリスマス一色なんだー!
早く正月飾りを出せー!」
 ハイ、クリスマスの飾りよりお正月のお飾りや門松が好きです。

この時期、ボランティアの絵本の読み語りに、実は悩みます。
選ぶ絵本にはできるだけ季節感を取り入れたいので、
12月はやっぱりクリスマス絵本になりますが、
読み語りに向く絵本が意外と多くはないのです。
いい絵本がない、という意味ではありませんよ。
あくまでも一期一会の大人数の読み語りにはしっくりこない、という感じ。

日本はキリスト教国ではないので、
イエスさま生誕の物語は
ちょっと空気が合わない感じがします。
それよりも、クリスマスという文化の一側面を
クローズアップさせた物語のほうが、子どもたちの胸に落ちるようです。

わたしが好きなクリスマス絵本です。

「ペチューニアのクリスマス」 ロジャー・デュポワザン作・絵
 佑学社・復刊ドットコムから復刊

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 ご存知、古典名作、ガチョウのペチューニアのシリーズ。
ペチューニアが一目ぼれしたガチョウが、クリスマスにお料理される運命に! 
ペチューニアは彼の救出作戦を練りますが・・・。
 
「ハモのクリスマス」 たかお ゆうこ 作・絵 福音館
               無題

 ハムスターのハモは、家のすみで小さな女の子の人形を見つけます。
 女の子は、以前は高い木の上で、たくさんの仲間といっしょにいたといいます。
ハモはその場所を探し歩きますが、そこは・・・。絵も美しく温もりいっぱい。かわいいでしょー!

「ひゃくおくまんのサンタクロース」 
 もたいひろこ 作・マリカ・マイヤラ 絵  アノニマ・スタジオ

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たった一人でがんばっていたサンタクロース。でもあまりに忙しくなったので、
神様が二つに分けて二人のサンタクロースに。やがて四人に、八人に。そして・・・
「サンタさんってほんとうにいるの?」という永遠のクエスチョンに答えてくれ、
大人も納得。サンタさん、ホントにいるんですよ!

さて、今年はあと一週間。
よいお年をお迎えください。



子どもたちによる読み語り、いいね!

  1. 2015/11/01(日) 17:33:06_
  2. 読み語りは楽しいな
  3. _ tb:0
  4. _ comment:0
今日は、ちょいとおもしろいイベントがあった。
地元図書館での「小・中学生による読み聞かせ」だ。
小・中学生が絵本や紙芝居の読み方を練習し、
図書館の来館者の前で発表するというもの。
演者となる子どもたちは、事前の募集により集まってくる。
今年で10回目くらいになるらしい。

読み方の指南役は、市内の読み語りボランティアサークルの会員だ。
わたしも、そういったサークルの一員なので、
図書館司書さんの呼びかけにより、参上した。

練習は一週間前。マンツーマンで、絵本の持ち方から
ページのめくり方、声の出し方、読むスピード、感情の込め方などを、
先輩ヅラしてレクチャーしてきた。

今日がその発表の日だ。
集まったギャラリーは三十人ほど(読み手である子どもたちのパパママもたくさん)
わたしが担当したのは、中学一年生のお嬢さん。
よく通るきれいな声で、お客さんたちにしっかり目線を向けながら、
上手に読んでくれました!
どのお子さんも例外なく、下を向かない、声がよく出る、そして噛まない。
子どもって、つっかえるのが当たり前だろうにね。たいしたもんです。
本が好きなんでしょうね。

演者は、全部で9人。
読むものは、自分で選んで持参する。
「ぐりとぐら」「ペレのあたらしいふく」「おまたせクッキー」
「めっきらもっきらどおんどん」「どんくまさん」「そらいろのたね」など、
どれも、読みつがれている名作絵本だ。
子どもたち、小さいころに読んでもらった絵本を選んだのだろう。
絵本は、二代、三代と受け継がれていく。いいなあ。
何十年も愛されるものを産みだしていく絵本作家さんって、
なんて素敵なお仕事だろう。

しかしながら、危機感がひしひしと。
指南役のボランティアたち、
高齢化が著しいのだ(もちろんわたしも含めて)。
後継者がいないぞ。10年後がコワイ。
若い人たちは、仕事でいっぱいいっぱいなのだろう。
ママもパパも子育てと仕事を両立し、
さらにこういった地域活動にほんのちょっとでも
加われるような、ゆとりのある社会になったらいいのになあ。


「おまたせクッキー」パット・ハッチンス作・絵 偕成社
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 これ、実は、もんのすごくスリリングで、ドキドキするおはなしなんですよ! ホント。

「ペレのあたらしいふく」エルサ・ベスコフ作・絵 福音館
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自分の力で、なにかを得ること。今の子どもたちにはとっても新鮮でしょうね。
でもって、得るのはモノだけじゃないんだってわかります。

いっしょに楽しんでね、大人諸君!

  1. 2014/11/20(木) 19:30:05_
  2. 読み語りは楽しいな
  3. _ tb:0
  4. _ comment:0
昨日は、地元の小学校の、年に一度の全校おはなし会でした。
授業を,わたしが所属する読み語りボランティアグループに
委ねてくださるのです。
二時間目は低学年、三時間目は高学年、
すべてのクラスに、各クラス二名ずつボランティアおばさんが入り、
素話(読まずに、すべて覚えて語る)と絵本の読み語りを、がっつりやります。

わたしは二年生と四年生を一クラスずつ担当し、
相方の素話が三つ、それにわたしが絵本を3冊ずつ、という構成でした。 
わたしは素話はやらない(できない!)のですわ。
  
絵本は、《鉄板》、必ず子どもたちが喜ぶものからチョイスしました。
一年生では「がまんのケーキ」や「ざぼんじいさんのかきのき」を。

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四年生では、「なにをたべたかわかる?」や「ケチルさんのぼうけん」を。

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子どもたちは、素話も絵本も、よーく楽しんでくれて、
笑顔とキラキラ目に、おばさんたちの心はほかほか。エネルギーをもらえます。

 実は、おはなし会には、盲点があります。
それは、大人の動向。
子どもたちと同じ空間にいる大人、
学校の場合は先生、放課後児童クラブなら指導員、
図書館でならいっしょに来たパパママなど。
これらの「大人組」のようすが、意外なことに重要なのです。
「大人組」が、子どもたちと共に楽しんで、くつろいで笑っていると、
子どもたちの笑顔が二倍になります。
リラックスできるのでしょう、
おはなしの世界への入り方がぐっと深まるようです。
ちょっとコワ目の先生や、口うるさいママが、
ドジな男の子の話で笑ったり、
魔物に食べられかけた女の子の話にドキドキしたり。
そういう姿が、子どもたちにはうれしいんですよ。
大人が、自分たちといっしょに楽しんでいる――
それは、いっしょに遊んでいる、という感覚なのでしょう。

お友達作家の野村一秋さんの低学年向きの物語、
「しょうぶだ しょうぶ!」を思い出しました。

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ネタばれしちゃうので、詳しくは書けませんが、
先生と勝負することになったイサムくんが、
先生に突きつけたある願いに、大納得でした。
子どもたちは、同じ土俵に上がってきてくれた大人が
大好きなんだなあと思います。 

《子どもたちがボランティアおばさんに絵本を読んでもらっている間に、
他の用事を片付けちゃおう》
その気持ちは大人として、よーくわかりますがね。
あえて言おう、「いっしょにおはなしを、絵本を楽しんで!」
損はさせませんぜ。
(画像は『絵本ナビ』さんからお借りしました)


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プロフィール

金G亀美

Author:金G亀美
かなじ・なおみ 児童書作家 埼玉県在住。
主な著書に『さらば、猫の手』(岩崎書店)『マタギに育てられたクマ』(佼成出版社)『ミクロ家出の夜に』(国土社)『花粉症のない未来のために』『子リスのカリンとキッコ』(佼成出版社)『知里幸恵物語』(PHP研究所)『私が今日も、泳ぐ理由 パラスイマー一ノ瀬メイ』(学研プラス)など。
日本児童文芸家協会会員 
童話サークル「かざぐるま」会員
よみうりカルチャー・大宮教室
「童話を書いて楽しもう」講師
イラスト:なかむらしんいちろう

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