金亀苑 金治直美ブログ

児童書を追いかける日々

小指の思い出

  1. 2017/01/15(日) 16:03:05_
  2. 金亀のひとりごと
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小指が痛い。じんじんする。
右手の小指の先だ。
見ると、爪の内側の右はじ、皮膚との境目に、わずかに一すじ、血の色。
どこかで、尖ったものを刺したらしい。
しかし、いつどこでやったものか、さっぱりわからん。
今これだけ痛むってことは、
「ぎゃっ」というくらいの衝撃はあったはずなのに。
傷バンを貼って様子を見たけれど、その晩はかなり痛んだ。

こういうことっていっぱいある。
知らないうちに足に青あざができていたり、
指に包丁あととおぼしき小さな切り傷があったり。
あまりに生傷が多いので、いちいち覚えてられないのだ。
つまり、不器用でトロくさて鈍い。

指の痛みは、4日たってもおさまらなかった。
もう一度よーく見ると、血のあとではないようだ。
赤茶色の細いトゲ?
トゲ抜きでは爪の中に届かず、縫い針でひっかけてみた。
出ました~! 4ミリもある立派なトゲだった。
ほんとうに、トゲを刺したときになぜ気がつかない?
鈍いにもほどがある。殺されても気がつかないんじゃないだろか。

いや、気がついていたと思う。
「あいたっ!」とかいって、手をぶんぶん振ったような気もする。
おそらく、お正月の生花を活け直すときに、
松の枝に指をひっかけたのだ。
爪と皮膚との境目にうまく入り込んだようで、激痛というほどではなかったこともあり、
トゲが入ったとは思わずにスルーしちゃったんだ。
たいしたことではない、と。

正常性バイアスとでもいうのかな。
だいじょうぶだろうと決めつける心理だ。
幸い今回のトゲ痕は、化膿することなくすぐにおさまったが、
年を重ね、こういうことが増えてきた気がする。
子どものころみたいに、痛い痛いと泣きわめくことができない。

昨年の正月そうそうに母を亡くした。
病院で、浅い呼吸の母の枕元に詰めていたとき、
トイレに立つたびに、スマホでメールの確認をしたり、
Facebookを開いてみたりしていた。
そんなことをしている場合じゃないことは、わかっていた。
急ぎの用事があるわけでもない。
なんたる親不孝。
でも、Facebookでいつもの友人たちの
明るい日常のヒトコマを眺めて、ほっとしたのは確かだ。
「だいじょうぶ、日常は続いている」と。
非日常の緊迫した時間のなかにあり、
日常に片足を置いていたかったのだろう。

大人って、姑息だなあ。でも、それも生きる知恵だなあ。
小指の先のトゲから、ふとそんなことを思い出した。
あ、怪我や病気は大げさなくらいに対処したほうが、治りは速いですが。

画像は、文とは関係ないけれど、
わたしのコレクションから。火鉢とお餅。焼き網のサイズ、2センチ角

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焼き網の下では、ちゃんと炭が燃えています。

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クラーナハの妖しい眼力

  1. 2017/01/08(日) 16:42:49_
  2. 金亀のひとりごと
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上野の国立西洋美術館で、「クラーナハ展」を観てきました。

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実はわたし、美術館よりもだんぜん博物館派で、
この美術館は超メジャーなのに初めてです。
ハイ、どっちかというと美術オンチです。

ではなぜ、クラーナハを観に行く気になったのかというと、
描かれた女性たちの体形に親近感があったから・・・ですな。
胸がちっちゃくて、その割にお尻が大きくて、
おなかがつるりんとビミョーに出ているという、
どちらかというと東洋人体形です。
 
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  おみやげで買った栞です。これは『ヴィーナス』

このクラーナハの女性像には、
ボンボンボーン!とした西洋人女性の裸体画にはない、
独特のエロティシズムがある、とされています。
う~~む、たしかに。
ボンボンボーン!のニクニクしい裸体画に感じるある種のグロさはなく、
妖しい美しさは、神秘的ともいえます。

わたしがドキッとしたのは、眼。
な、なんて冷静。どの眼も笑っていません。
でも、無表情なのではなく、
ものすごくなにかを語りかけてきます。
いろいろな思いを、激情のままに吹きださせるのではなく、
理性の力で統括しているような・・・。

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『ホロフェルネスの首を持つユディト』(これもミュージアムショップで買った栞)
『正義と寓意」(上から二番目の写真)などなど。
この眼力、クセになりそう!

クラーナハは、女性の魅力を、
たおやかさに秘めた鋭敏で冷静な理性、という感じでとらえていたのかな?
まったくの素人目ではありますが。
500年前の画家さんなのに、すごく新鮮です。

この眼、だれかに似ているな。
そうそう、『バナナフィッシュ』(吉田秋生作・小学館)のアッッシュ。

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そして、『日出処の天子』の厩戸の皇子。
(あれ、どっちも少年だ。そして、二人とも天才的頭脳と感性)

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どちらも後世に残る名作です。
そういえば、美術オンチのわたしがクラーナハのことを知ったのは、
「エロイカより愛をこめて」(青池保子作・秋田書店)からでしたわ。
マンガネタ、多し(えへ)。

展示室前には、「ホロフェルネスの首を持つユディト」の顔ハメが!

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外国人女性に頼まれて、シャッター押してあげました。
顔ハメも日本の名物かもね。
しかし、生首を持つ絵の顔ハメって・・・。



変わったものとお馴染みのもの

  1. 2017/01/01(日) 15:36:56_
  2. 金亀のひとりごと
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明けました(我が家が喪中なので、こんなご挨拶で失礼します)
今年も、「金亀苑」をよろしくお引き立てくださいませ。

昨日の大晦日は、「投じ蕎麦」を食べた。
お蕎麦のしゃぶしゃぶのような鍋で、
信州の友人に教えてもらった郷土料理だ。
野菜や鶏肉の寄せ鍋に、茹でた蕎麦を「投じ」て、
さっと取り出し、鍋のお汁といっしょに食べる。
うどんすきなら、コシの強いうどんを鍋に入れてぐつぐつ煮てもOKだが、
さすがにお蕎麦は無理、そこで、こんな道具の登場だ。
信州には、専用の小さな竹製のものがあるようだが、
手に入らないので100均にあった「味噌漉し」で代用した。

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一口分のそばをこれに入れ、鍋に沈めて温める。
お肉は、今回は蕎麦に合いそうな鴨にしてみた。
薄味でも、鴨のダシでしっかりがっちりした深い味になった。

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これまで大晦日は普通にお蕎麦にして天ぷらを揚げたり、
(お節を造りながらの揚げ物は辛い・・・)
頂き物の蟹を寄せ鍋にしてシメにうどんを入れたりしていたが、
この投じ蕎麦、新しい我が家の味となりつつある。

明けて元日、新しい台所グッズを試した。
カセットガスを熱源とするロースターだ。

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焼き鳥や焼き肉もできるが、もっぱらお餅用になりそう。
コタツでテレビを見ているヤツをとっつかまえて、焼いてもらえるから便利!

できあがったお雑煮は、30余年変わらない味。

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三つ葉や小松菜ではなく、水菜を入れるのが我が家流だ。
今年も無事にこのお雑煮を食べられたことに感謝(喪中なんですけどね)。

変わったものとお馴染みのもの。
新しい味といつもの味。

どっちも楽しめるっていいね。


クリスマス&年末に読み返したくなって

  1. 2016/12/24(土) 17:29:07_
  2. あんな本、こんな本、どんな本?
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クリスマスで心ウキウキというタイプではありません(ハイ、ひねくれもんです)
でも,どことなく厳かな気分となり、
フォーレのレクイエムやグレゴリオ聖歌を聞きながら、
いい物語に浸りたくなります。

今年読んだ本のなかから、この時期にしっくりくるものを
選んでみました。内容はリスマスとは関係ないですがね。 

『4年2組がやってきた』2016年
 野村一秋・作 ささきみお・絵 くもん出版

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五年生のマーくんは、脳性まひ。
しゃべれず、歩けず、手もうまく動かせません。
学校では、ただ一人の「にじ組」です。
その「にじ組」に、4年2組が「交流」しにくることになり・・・。

物語は、マーくんの一人称の語りで進みます。
読むうちに、マーくんが見聞きし感じている世界が、
すごく広く深いことに驚かされます。
しゃべれないから、動けないから、なにもできず
なにも考えていない? いえいえ、とんでもない!
そう、彼の頭のなかはいつもいろいろな思いでいっぱい。
それを表現できないだけ。

だいぶ前のこと。知り合いの視覚障がい者の方が、
道ばたで立ち止まって、なにか困っているようすでした。
聞けば、本屋さんに行く途中なのですが、場所がわからなくなったとのこと。
「あ、通り過ぎています。引き返しましょう」
すぐ近くの本屋さんに案内して、わたしは大失態。
レジの人に「こちらの方をご案内しましたので、よろしくお願いします」と
声をかけてしまったのです。
そんな余計なこと、いわなくてよかったのです。
必要なことは、ご本人がちゃんとお店の方に伝えるでしょうから。
なんだか、「保護者」のような気になっていたのでしょうね。
その自分の浅はかさを、この本を読んで、ちくりと思い出しました。

『ナゲキバト』2006年
ラリー・バークダル・作 片岡しのぶ・訳 あすなろ書房

       無題

この本は、すでに古典かもしれません。
9歳のとき両親を亡くし、祖父にひきとられたハニバル。
ある日、ナゲキバトを遊び心で撃ってしまい・・・。
祖父との生活により、ハニバルは静かに深く、
生きる意味を感じとっていきます。

背景と思っていた逸話が、
実は物語の背骨であったという構造に驚かされます。
善とは? 悪とは? 悪に染まってしまった人生を、
昇華させるには?
それらが、やさしくしみじみとした文章に、
美しい紋様のように織り込まれています。

『ひまなこなべ』2016年 萱野茂・文 どいかや・絵 あすなろ書房

       無題1

アイヌの昔話です。
アイヌには神さまが主人公の物語がたくさんありますが、
伝え方が難しいように思います。
神さまの一人称で語られているので、
初めてふれる人は、ちょっと入りづらいのです。
でもこの本ならだいじょうぶ! 
クマの神さまに導かれ、
万物に神が宿るというアイヌの世界に
無理なく入ることができます。
この不思議なタイトルも、最後に意味がわかるしくみです。
躍動感ある、愛らしくもりりしい絵が魅力的。何度見てもうっとりです。

今年も残すところあと一週間。
来年もどうぞよろしくお願いいたします。


濁りのない寄せ鍋

  1. 2016/12/18(日) 13:18:54_
  2. 金亀のひとりごと
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このあいだ、「光会」の忘年会があった。
「光会」は、わたしが会社員だったころの上司や先輩、同僚の同窓会だ。
(なぜ光会というかは、ナイショです)
年に1,2回、当時の課長サンの呼びかけで、5,6人が集まってくる。
この日は、元課長サンの行きつけの、練馬駅近くの和食店「甲州」に
50代から70代の5人が集った。

店名は「甲州」だけど、お魚料理の店だ。
前菜のあん肝、鮟鱇の煮凝り、ハヤトウリと海老のゆず酢

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うまい!
刺し盛りの量と鮮度には、おったまげた! これで5人前。

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鮪や鯛などのほか、キビナゴや鰆のたたきなど、10種類ほどもあったろうか。
(反対側から写真撮ったので、頭が右になってしまった)
鮭の西京焼きに鮟鱇のから揚げ。
お魚が胃袋から脳まで、回遊した。

話は、近況や昔話や家族のこと、実にたわいのないものばかり。
しかし、考えてみたらすごいことだ。
このメンバーで働いていたのは、なんと35年ほども前のこと。
歳月を経て、こうして集っておいしいものを食べていることが、
奇跡のようにうれしい。

最後に運ばれてきたのは、寄せ鍋だった。
「火は通ってますので、温まったらすぐ召し上がれます」と、女将。
湯気が立ったのでふたを開けてみたら、
鱈、鮭、海老、帆立、鶏肉、野菜、豆腐などの定番の寄せ鍋、
これがやけにうまい。
アクや生臭みのまったく出ていない、澄んだ出汁の味。
しっとりとした魚介たちは、一かけらも煮崩れていない。
鶏肉を口にして、合点がいった。香ばしい。あらかじめ炭火で焼いてあるのだ。
焼かれて適度に水分が抜けたところに、出汁がしみこんでいる。
魚類も、丁寧に下処理したあと、それぞれをたぶん酒蒸ししたのだろう。
うまみをしっかりとかかえている。

生の具材を、いっしょにぐつぐつ煮るのもいいだろう。
しかし、それだとうまみといっしょにアクや臭みも出てしまう。
火を通した具材が出汁と出会い、温められてうまみがふくらみ、
まろやかで洗練されたおいしさとなっていた。

なんや、今日のわたしたちのようだな~。
それぞれ懸命に働いて、家庭を持ち親を看取り、楽しんだり悲しんだりしてきた。
若くして連れ合いをなくした人もいる。
いろいろなことを乗り越えて、今がある。

若いうちは、いっしょに過ごすうちにアクや臭みを飛ばしあうこともあるだろう。
今、人生の後半を過ぎ、地に足をつけて生きてきた歳月を経て、
それぞれが‟火の通った”うまみとなり、酒席という鍋をおいしくしてくれている・・・。

な~んて、ちょっとかっこいいことを考えてしまった。

年を重ねるって、悪くない、悪くない。




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プロフィール

金G亀美

Author:金G亀美
かなじ・なおみ 児童書作家 埼玉県在住。
主な著書に『さらば、猫の手』(岩崎書店)『マタギに育てられたクマ』(佼成出版社)『ミクロ家出の夜に』(国土社)『花粉症のない未来のために』『子リスのカリンとキッコ』(佼成出版社)『知里幸恵物語』(PHP研究所)『私が今日も、泳ぐ理由 パラスイマー一ノ瀬メイ』(学研プラス)など。
日本児童文芸家協会会員 
童話サークル「かざぐるま」会員
よみうりカルチャー・大宮教室
「童話を書いて楽しもう」講師
イラスト:なかむらしんいちろう

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