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金亀苑 金治直美ブログ

児童書を追いかける日々

75年前を振り返る10日間

  1. 2020/08/09(日) 12:58:49_
  2. あんな本、こんな本、どんな本?
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ここで何度も書いているが、わたしがこの世で一番怖いのは、戦争だ。
戦争には、人間が考えつくすべての悪が詰まっている。

今年も、「ヒロシマ」・「ナガサキ」の日がやってきた。
週末は終戦記念日がやってくる。
今の日本、コロナ禍に水害、そして猛暑と、ヒトは痛めつけられっぱなしだけれど、
75年前を振り返ることは必要だろう。

このツイートがものすごくリアル。見た方も多いだろう。
1945「ひろしまタイムライン」https://www.nhk.or.jp/hiroshima/hibaku75/timeline/index.html
もし75年前にSNSがあったら? ということで、
中学一年生のシュン、26歳の主婦で妊娠中のヤスコ、新聞記者のイチローが、
それぞれの言葉で戦争のこと暮らしのこと、
そして「ヒロシマ」の惨状をTwitterで発信していく、という企画だ。
原爆投下直後の広島のようすなど、現代の日付と時刻に合わせてツイートされるので、
その臨場感に、過呼吸を起こしそうなほど。
やはり、13歳のシュンくんのツイートに一番、生の声を感じたなあ。
この企画を思いつき始められたNHK広島放送局さん、
ありがとうございます! 

こちらは、コミック。
『ペリリュー ─楽園のゲルニカ─』武田一義・平塚柾緒(太平洋戦争研究会) 著 白泉社

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昭和19年、夏。太平洋の楽園、パラオのペリリュー島は、
日米合わせて5万人の兵士が殺し合う戦場と化していた。
漫画家志望の兵士、田丸が見た戦争の狂気とは――。
リアルな戦場の光景と一兵士の心情が丁寧に綴られ、
いわゆる性の処理なども隠すことなく描かれ、むしろ涙をさそう。
人物がギャグタッチなのが救いだ。写実的な絵柄だったら、読み続けるのが辛くなってしまうかも。

こちらは、絵本。
『キンコンカンせんそう』ジャンニ・ロダーリ 著 ペフ 絵 アーサー・ビナード 訳 講談社 

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小学校高学年のクラスで読み語りをするときに、何回か使わせていただいた。
二つの国の間で長く続く戦争。どちらの国の将軍も、
教会の鐘まで取り上げて、兵器にしてしまう。
戦場に運び込まれた大砲は、驚いたことに・・・。

日本でも、太平洋戦争で金属の「供出」があったなあ。
鐘は戦争には似合わない。鐘自身も苦しかっただろうね。

だれでも、戦争はNOだと思っているのに、
なのになのに、自衛隊の敵基地攻撃能力について取沙汰されているなんて。
戦争の導火線に火をつける役目を、日本が負うべきというのか。
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がんばれ、醤油やさん!

  1. 2020/08/02(日) 14:58:19_
  2. あんな本、こんな本、どんな本?
  3. _ tb:0
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コロナ禍が再び迫ってきました。
もう五か月も籠っているのに、まだまだお籠り生活が続くのかな。
せめて、近場の人があんまりいないところで、
ちょっとおもしろそうなところに行ってみよう、ということで出かけたのは、
車で15分くらいの「金笛しょうゆパーク」。
「笛木醤油」という寛政元年創業の醤油蔵さんです。

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なんと創業230年! 
江戸から離れたこの地で、舟で江戸へ出荷していたのでしょうね。

レストランや売店があり、醤油工場の見学もできます。
始めて見る仕込み蔵、超でっかい木桶がずらり。といっても、
木桶を床に置くのではなく、木桶の上部に床を張っています。

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昔は木桶の間に板を渡して歩いたそうですが、転落事故があるので、
この形にしたそうです。
こちらは、ミニチュアの仕込み蔵。へー、こんなふうになっているのね。

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木桶の中には、ドブドブの濃―い液体。ほとんど沼です。
このなかに、麹金、酵母菌、乳酸菌など、
何億という菌ちゃんたちが生きて呼吸をしています。
職人さんたちは、定期的にこの桶の中を長い竿でかきまぜ、
菌ちゃんたちに空気を送っているそう。
つまり、現在でも伝統的な手作業ということ。

左右の桶で、発酵の度合いが違うのがわかります。

DSC_1483 小

左のほうがどろっとしている、
つまり発酵が進んで濃い「もろみ」となっているのでしょう。
こうして一年から二年かけて発酵・熟成させ、
「絞り」の行程に入ります。
繊維質などの固形成分を絞って、醤油の原液を集めるのです。
それもゆっくりゆっくり、三日かかりだそう。
大手の醤油メーカーの製造法だと、3か月くらいで製品になるとのこと。
味に差が出て当たりまえですなあ。

蔵の外に、発酵臭のある物体が積まれていました。

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これ、醤油の搾りかすをさらに圧縮したものですって。
大豆と小麦が主成分なので、家畜のエサ用にとってあるのですが、
塩分が強く残っているため、エサに混ぜるのはほんのちょっとだけですって。

そして、伝統的な醤油作りを支えているのは、杉材の木桶。

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今や、杉があっても桶職人が全国にほんの数人しかいないという時代。
なんとか、木桶作りの匠、醤油作りの匠が途絶えませんように!

レストランでは、うどんや天丼などの醤油を生かした料理がありました。
うどん、うまい! 
なぜか、バウムクーヘンを製造していて、
醤油入りの「醤油バウム」なんていうのがありました。うまい!

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醤油ソフトもありますよ。うまい!

ほぼ毎日お世話になる醤油だもの、
製造しているところを見ておくのって、いいよね。

わたしは発酵食品が好きなもんで、
たくさんの麹菌に囲まれると、コロナに勝てそうな気がしちゃいます。
それってあながち間違いではないかも。
有用な菌を取り込んで腸内の菌のバランスを保てば、
免疫力もアップしそう!

こちらは、ご存知『もやしもん』石川雅之・著 講談社

小

発酵の世界を描いたコミックです。
こちらは、『もやしもん』のわたしのコレクションの菌たち。
キャラのデザイン力、すごい!

DSC_1500.jpg
 
まんなかの黄色いのが、A・オリゼー(麹菌)。

こちらは一般書、
『奇跡の醤(きせきのひしお)  
   陸前高田の老舗醤油蔵 八木澤商店再生の物語』 竹内早希子・著 祥伝社

 小

東日本大震災の津波で、一八〇七年から続く老舗醤油蔵八木澤商店は、
土蔵や杉桶、そして醤油屋の命ともいえる「もろみ」を津波で失いますが……。
再生に欠ける思いに胸が熱くなります。
この作品、取材がほんとうに緻密で、何度も何度も現地に通い、
この会社の方々と心を通わせていったことが、よーく伝わってきます。
醤油と同じで、地味ながら滋味あふれるノンフィクションです。



ふつうって、なに?

  1. 2020/07/26(日) 15:21:38_
  2. 新しいインクの匂い
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二つの作品をご紹介します。

『赤毛証明』 光丘真理 著 くもん出版

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これが表紙なんです。インパクトすごいでしょ。
このブックカバーをはずすと、さらにおもしろいものが現れるの。ぜひ手に取ってみて。

メグは中学一年生。髪の色が生まれつき明るい。
メグはその「赤毛」が地毛あることを学校に証明する『赤毛証明』を
生徒手帳に刻印され、毎朝校門で、先生にそれを見せなくてはならない。
「自分はふつうじゃないの?」メグの思いは広がっていき――。

こんな校則、まだまだあるよね。
自分にとっての「当たり前」が異質なものとされ、
いちいち正当性を証明しなくてはならないなんて、理不尽そのもの。
わたしは、こんな校則を堂々と掲げる学校との
戦いの物語かと思って読み始めました。
でも、そうじゃなかった。戦うのではなく、考える。語る。
車いすバスケットで活躍する幼なじみや、母子家庭に育つ親友、先生、親たち、
それぞれの生き方から自分の思いを掘り下げていく。
そんな物語でした。
さわやかで暖かい「光丘真理」の世界です。

『区立あたまのてっぺん小学校』間部 香代 著 田中 六大 絵

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ナンセンスっぽいファンタジーだな、と思って読み始め、
うん、ナンセンスっぽいファンタジーなんだけど、
こちらも偶然ながら、「ふつう」について思いをめぐらせる物語でした。

二年生の「ぼく」の頭の上に、小さな学校ができていた。
そこではキミドリ色の生き物が、べんきょうしている! 
友だちといっしょに相談に行った先は、区役所。
(そうか、区立小学校だもんね。ここで爆笑)
いつしか、頭の上に小学校があることが、
ぼくやまわりの人たちにとっての「ふつう」になっていく。

日本は民族が二つしかないせいか(そして片方は極端に人口が少ない)、
同調圧力が強く、常に「普通でいなければ」と緊張を強いられています。
特に子どもたちは息がつまるでしょうね。
この二作の「ふつう」をめぐる物語は、やわらかく心をほぐしてくれますよ。



おはなし会に持っていきたい絵本

  1. 2020/07/19(日) 15:41:19_
  2. 新しいインクの匂い
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コロナ禍がまたもや、「ジョーズ」のテーマ曲のように、迫ってきている感じです。
政府の対応は、最初から今までずっと、オール・トンチキなもので、腹が立つことばかり。

朝、登校時間に外を歩くと、小学生がきちんと間を開けて、マスクをつけて、
黙々と歩いています。
体育は、距離を開けてできる陸上競技が多いとか。
給食もだまって食べ、昼休みも静かに過ごしているんでしょうね。
友だちときゃーきゃーわいわい騒げないなら、
学校行く楽しみって、なくなっちゃうんじゃない?

ごめんね、ごめんね。
笑いあって、くっついて遊びたい盛りの子どもたちに、
こんな「苦行」を強いてしまって。
うちの孫のえむちゃんも、再開した児童館で、
進んでマスクをつけているとか。二歳児なのに(涙)
「夜の街」やら、会食で増えた感染者数を、
子どもたちにどう説明したらいいんやろね。

そんなときに、こんな本で笑わせてもらいました。
『おむすびころりん はっけよい!』森くま堂 作 ひろかわさえこ 絵 偕成社

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 さんかくおむすびにくにと まんまるおむすびのくに。
ふたつのくには、いがみあっています。ついに、ふたつのくには、たたかいに。
とのさまどうしのおすもうで、しょうぶをつけることなり・・・。
 いや~、ストーリー、語り口、ダシャレ、絵、どれも理屈抜きにおもしろい!
 おむずびがおいしそうで、これは「飯テロ」絵本でもあります。
  
おむすびたちが世話をする「畑」の作物にびっくら!
そうそう、こうやってえいやっと余計な理屈を抜いちゃの、
幼年童話や絵本ならではの世界です。 
 
そしてわたしが胸アツだったのは、両国が戦いになったとき、
 おすもう勝負に力自慢の家来が命令されるのかと思ったら、
とのさま自らが土俵に! いいなあ! 
そうですよ、家来に重責を負わしちゃいけませんぜ。

うずうずしてきました。子どもたちに読み語りしたいなあ。
小学校や図書館での「おはなし会」も、3月から休止したままなんです。
再開したら、いの一番にこの絵本を持っていきましょう!


文章修行はマンガでも

  1. 2020/07/12(日) 15:17:09_
  2. 金亀のひとりごと
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わたしは、ほぼ毎日、何かしらのマンガを読みます。
といっても次々に雑誌や単行本を買っているわけではありません。
何度も読んだ単行本を書棚から引っ張り出し、
絵を楽しんだり、セリフや地の文をじっくり味わったりするのです。
マンガには文学性の高いもの、また児童書に通じるものがたくさんあるのですよ。

文学性の高さでは、これが好き。
ご存知、『三月のライオン』羽海野チカ 作 白泉社

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例えば、15巻目の終わり。
主人公の高校生桐山零は両親と妹を事故で失くし、
しかしプロ棋士の地位を手にし、
偶然知り合った家庭の暖かさを得て、こうつぶやきます。

僕が失くしたもの
手に入れたもの
僕がこれから失くすもの
――そして
失くしたくないもの
――その全部を乗せて 
大きな河は
ただ
流れていくのだ
月を映して

これはもう、詩ですね。
羽海野さんの作品は、絵もものすごく上手で見あきません。

マンガには、コマのなかにオノマトペがたーくさん書かれています。
そのおもしろさといえば、
子猫のチーの毎日を描いた『チーズスイートホーム』こなみかなた 作 講談社

 小

そりそりそり 
(チーが自分の毛づくろいをするとき。
猫の舌はざらざらしているから、ぺろぺろ、ではないのよね)
てってってっ てこてこてこ (歩くとき)
だらららー (走るとき)
くりっ(ふりむくとき)
作者のこなみさん、きっともんのすごく子猫を観察し、考え、
オノマトペをつかみ出しているのでしょう。学ばなくては!
だって、児童書では大人の本以上にオノマトペは大切ですから。
二行も三行も使って説明するより、たった一語のオノマトペで、
状況や心情を語ることができるからね。

『ワカコ酒』新久千映 作 コアミックス

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夜な夜な、酒場で一人酒を楽しむワカコ。
お酒とツマミを楽しみながらつぶやくモノローグがすごくいいんです。
シンプルな文に、出汁やお肉やお刺身や青物の芳香がにじみ出るよう。
例えば9巻目、「菜の花のお浸し」。

それは 不意に現れて
もうこんな季節かと 毎年気づかされる
菜の花のお浸し
「黄緑」でも「黄色」でもない 菜の花だけの色
まだ若い花がいっぱい集まっている
これから花咲く 自然の力強さをもらう

ね、おいしそうでしょう?

さあ、マンガ読んで、文章修行!



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プロフィール

金G亀美

Author:金G亀美
イラスト:大塩七華
かなじ・なおみ 児童書作家 埼玉県在住。
主な著書に『さらば、猫の手』(岩崎書店)『マタギに育てられたクマ』(佼成出版社)『ミクロ家出の夜に』(国土社)『花粉症のない未来のために』『子リスのカリンとキッコ』(佼成出版社)『知里幸恵物語』(PHP研究所)『私が今日も、泳ぐ理由 パラスイマー一ノ瀬メイ』(学研プラス)『となりの猫又ジュリ』(国土社)『クレオパトラ』『マイヤ・プリセツカヤ』(学研プラス)『読む喜びをすべての人に 日本点字図書館を創った本間一夫』(佼成出版社)など。
日本児童文芸家協会会員 
童話サークル「かざぐるま」会員
よみうりカルチャー・大宮教室
「童話を書いて楽しもう」講師

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